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五、

 勇樹からの話は衝撃的なものであった。しかし、耕介は勇樹が嘘をつくような人間ではないことを知っているし、何より、彼とシルフとのやりとりを見ていることもある。それだけで、勇樹の話を信じるに値するということが分かっている。

 「信じがたい話だってことはわかっている。けど、本当のことだと思う」

 実感が伴わないため、勇樹も実のところは半信半疑なのだ。だが、パートナーである桜が自分にそう言った嘘をついているとは思えないのだ。

 何より、シルフ本精霊(ほんにん)が、気になることがある、と言っていたのだ。何かが起きていると考えてもおかしくない。仮に、何も起こっていないとしても、備えておくにこしたことはない。

 「わかった。覚えてはおく」

 話を聞き終わると耕介はすぐさまそう返した。どうやら、勇樹の言葉を信じることにしたようだ。それは、リーネも同じであるようだ。

 その反応に、勇樹は驚愕を隠せなかった。

 正直なところ、勇樹はこうしてすぐに信じてもらえるとは思っていなかった。信じてくれるとしても、精霊と交流を持つことのできる召喚士か、精霊から力を借りうけることのできる術者のどちらかだけだと思っていたのだ。

 それなのに、一介の剣士と、どのような術を使うのかわからない少女はこうして勇樹の言葉を信じたのだ。驚きもするだろう。

 「……簡単に信じるんだな」

 「まぁな。裏切られるか裏切られないかって、人を信じてみて初めて感じるものだろ?だったら、信じて見た方が得じゃないか」

 耕介はにかっと笑いながら、勇樹の言葉に答えた。

 勇樹はその言葉にそっと、呆れに近いため息をつきはしたが、微笑んだ。


 耕介の言葉に、勇樹が呆れた微笑みを浮かべていたころ。数名の友人とブリーフィングから抜け出した桜は、職員室に足を運んでいた。

 周囲には桜に話しかけていた生徒たちもいる。彼らと共に歩きながら、桜は頭の中で先ほど聞いた言葉が今も響いていることを気にしていた。

 「何人かの生徒が、精霊が召喚できなくなった」

 桜自身、召喚速度が落ちていることには気づいていた。だが、それは一時的なもの、あるいは自身の力が衰えてきているためなのかもしれないと考えていた。まさか、自分だけでなく他の生徒も同じように召喚速度に遅れが生じていたとは思いもしなかった。

 何より桜に衝撃を与えたのは、精霊を召喚できなくなってしまった、という生徒がいたことだった。

 精霊は、言ってみれば命そのものだ。そのため、むろん、知性を得てからの時間にもよるが、どこまでも純粋で、無邪気だ。何にでも興味を示し、触れようとする。そのため、四大精霊のように神にも近い力を持つ精霊はともかく、人間の呼びかけに簡単に応じる精霊も少なくない。

 その精霊が、召喚できなくなった。つまり、術者の呼びかけに応えなくなってしまったのだ。

 これを異常事態以外の何であるというべきなのだろう。

 原因究明が行われているのかについてと、行われていたとして、現段階でどこまでわかっているのか。そして、ふたたび、以前のように精霊を召喚することができるのか。その不安を解消するため、桜も教官に話を聞きに行かないかと誘われたのだ。

 ――本当に、いったい何が起こっているの……

 桜は、胸の奥に重くのしかかる何かを感じながら、職員室の扉を開けた。

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