四、
護と名乗る陰陽師に出会った夢を見た後、勇樹は特に不思議な夢を見ることもなく、いつもと同じような日々を過ごしていた。
だが、桜をはじめとする召喚士は、精霊召喚の際の違和感がなおも続いていることに、いや、召喚速度がなおも遅くなり続けていることに不安を募らせていた。
「勇樹くん。あの後、シルフから何か聞けた?」
休み時間。机に突っ伏していた勇樹に、桜は声をかけてきた。どうやら、シルフから何を聞いたのかが気になっているらしい。
「聞けたことには聞けたが……あいつ自身も何が起きているのかわからないらしい。だから、事情がわかる人間を紹介された」
そう言って、勇樹はシルフの仲介を経て夢渡りをおこなったことと、そこで土御門護と名乗る陰陽師に出会ったこと、そして護に今何が起きているのかを占って欲しいと頼んだことを桜に話した。
桜はあまりに唐突と言えば唐突な話に目を丸くしたが、勇樹の眼は嘘を語っているとは思えず、半ば無理やりではあるが、自分を納得させたようだ。
「……信じるのか?このとんでも話を」
「正直、信じきれない。でも……」
相棒を信頼できないわけがないじゃない。
桜は微笑みながら、勇樹に言葉を返す。
「……そうか」
勇樹はその言葉に微笑んだ。勇樹の微笑みにつられ、桜も微笑んだ。傍から見れば、微笑ましい光景であったが、それを遮るかのように、この日の実習を始める合図である鐘が響き渡った。
この日の実習は深夜に行われることになっていた。そのため、この時間はそれに伴うブリーフィングとなっていた。なお、今回の実習で行動を共にするのは、桜と先日の実習で共に行動した耕介、そしてもう一人、リーネと名乗る金髪の少女だった。
ブリーフィングといっても、そこまで厳しいものではない。ある程度、自分たちの隊列と役割を決定した時点で会議は終了。あとは生徒同士の雑談の時間となっていった。
勇樹のいる班の話題は勇樹と桜の関係についてが中心となっていた。
自分たちのことが話題になっているせいもあって、勇樹と桜はそろって顔を紅くして、はやく終わってほしいと切に願っていた。
ふと、別の班から男子が一人、桜の方に駆け寄ってきた。いや、ひとりだけではない。他にも数名の女子が桜のもとに駆け寄ってきていた。彼らは桜に何やらひそひそと話すと、少し考え込むようなそぶりを見せてから、桜は立ち上がり、彼らについて行った。
「なぁ、勇樹。皇、かなりあわててなかったか?」
「あわててた、というよりは焦ってたって感じかしら?勇樹くんは、何か知ってる?」
机から離れていく桜の背中を見送り、耕介とリーネは勇樹に詰め寄った。
一度に聞かれても困るということと、はたして話しても大丈夫なのだろうかという疑問から、勇樹は答えに窮してしまった。
「……お前ら、本当に、確実に、絶対に、命をかけても他言無用にできると約束できるか?」
勇樹がかなりの念押しをして、二人に問いかけた。それを聞いた二人は互いに顔を見合わせ、うなずいた。リーネは今回が初対面だから、これがまじめな表情なのかどうかはわからないが、少なくとも、普段おちゃらけている耕介がいつになく真剣な顔をしているのがわかったため、勇樹は二人に桜から聞いたことを話した。




