三、
陰陽師や巫女の家系ではない。
それは、「宮」からしてみれば、珍しい話ではない。
陰陽師や巫女、修験者、密教僧、仏教僧。それら歴史の陰に常に存在し続けた霊能者とは違い、「宮」が抱えている人材は、「異能」と呼ばれるものを操る人間たちだ。
それゆえ、時の権力者によって危険とされ、差別の対象となっていった。
もっとも、それは昔の話であって、今現在は改善され、普通の人間として生きていくことができる。
「月影って名字は、俺が自分でつけたものなんです……」
俺、孤児だから。
その言葉を聞くと、護はそうか、とつぶやいたあと、すまなかった、と非礼を詫びた。
勇樹は護のその態度に、逆に申し訳なさを感じ、こちらこそ、と言葉を返した。
「……さて、シルフからだいたいのことは聞いているが……改めて、君の口から、聞かせてくれないかな?」
君の友人が感じたと言う、異変を。
護のその頼みに、勇樹は一度だけうなずき、桜が話してくれたことをそのまま護に伝えた。ある程度の所まで話しを聞くと、護はなるほど、とつぶやいた。
「確かに、俺の分野のようだな……わかった、引き受けよう」
ただし、結果は教えるが、解決するのは君たちだ。
護の言葉に、勇樹はその意図を読み取りきれず、頭の中に疑問符を大量に浮かべていた。その様子を見て、護はくすくすと笑い、そうだな、と言って続けた。
「あくまで、俺は今、精霊たちに何が起こっているのかを君に伝えるだけだ。その原因が人間であっても、妖魔であったとしても、俺はその原因の排除には参加しない、ということだ」
つまり、これ以上助力を請うことはできない、ということだ。
勇樹は護が言わんとしていることを察し、なるほど、とつぶやいた。
「……君たちが「必ず」解決する、そしてこの一件に関してはこれ以上、俺を頼らない。それが占いをする「条件」、いや、対価だ」
「対価?」
唐突な護の言葉に、勇樹は思わず聞き返した。
護はそっとため息をつき、さも面倒臭そうに今の言葉を説明した。
「対価なしにやり取りできるものなんて、この世に一つもない。たとえ実態のないもののやり取りでも、ね」
君もそれは、理解しているはずだよ。
その一言に、勇樹は思いいたることがなかったと言えば嘘になる。
精霊とのやりとり。そこに付きまとうのは、霊力や魔力、そして生命力の消耗。つまり、彼らに呼び掛け、彼らの力を借りるための対価、ということになるのだろうか。
勇樹が自分の言葉を理解できたとみて、護は不敵な微笑みを見せ、立ち上がった。
「結果がわかったら、こちらからコンタクトする」
護の言葉が耳に入ると同時に、勇樹の意識は現実の世界に引き戻された。




