第30話 キレてる……やばい……(レオン視点)
クソッ……胸糞悪りぃ。
なんなんだこのクズ共は。ってか、ヒナのバカ、バカにも程があんだろ。なんでこんなカスと付き合ったりしてんだよ。
あー、まだもんじゃも食い終わってねーってのに……。
三対一かぁ……。喧嘩なんてもう、小学校以来だな。流石にボコられるかもしれんけど、とにかくこのカスだけは一発ぶん殴ってやる。
……。
いや、俺も運動神経には自信があるし、身長もまぁ、180を超えてるわけだからデカい方だ。
実際、最後に喧嘩したのがガキの頃とはいえ、戦績に傷はないんだが……。
このファック野郎はちょっとデカいな。俺よりデカいし、なんなら最近まで部活で鍛えていたやつだ。
三対一どころか、一対一でも厳しいかもしれん。
まぁいい。
勝つか負けるかを気にするんだったら、最初からこんなところに来ていない。
このカスだけは一発ぶん殴る。できれば二発。いや、三発だ。三発を目標にしよう。
しかし、この状況は動画に収めておきたかったな……。北野にカメラマンでも頼めば良かった。
題名はそうだな……。
『クラスメイトの性事情を言いふらす元カレくんをぶん殴ってみた』
とか、面白いかもしれん。まぁ、コンプラ課題をどうクリアするかだが……。暴力コンテンツは垢BANリスクもあるし、お蔵入りか。
「——おい。おい! クソガキ! 聞いてんのか!?」
「あ、あぁ。聞いてなかった」
「は? なめてんの?」
「……」
こいつ、背が高くてチャラチャラした髪型してるけど、よく見たらなかなかブサイクな顔してんなぁ。
ヒナはマジでなんでこんな不男に……もったいねえなあ。
——ボコッ
このバカ、いきなり殴ってきやがった。
◇
お好み焼き屋の裏手にある『常陸中央公園』は、ボール遊びなんかもできるスペース、ドッグランやサイクリングロードもある広大な公園だ。
昼間は賑わっているのだが、夜になると電灯も少なく、こんな公衆トイレの裏に通行人が来ることは滅多にない。
生意気なレオンの態度にイラついた田中は、返事を待たずにレオンを殴りつけた。
——ボコッ
(イッテェ……うわ、唇切れてんじゃん……参ったな)
不意に左の頬を打たれて倒れ込むレオン。
「クソがっ。雑魚のくせに調子に乗りやがって!」
——ボコッ ボコッ
倒れ込んだレオンのボディに蹴りを入れる田中と取り巻き……坂本と井ノ原。
背が高く、運動神経も良いので、なかなか鋭い蹴りを放つ田中たちだが、それでもやはり進学校の生徒。
喧嘩慣れしてはいないのか、リンチとはいえ倒れている相手の顔を蹴り上げるのには抵抗があるようだ。
(くそっ。いてぇ……)
急所を避けた攻撃とはいえ、三人に囲まれて蹴られて痛くないわけがない。頭をガードして丸まっているレオンだが、初めてのリンチ体験を楽しむ余裕はなさそうだ。
(いてぇ……こええ……どうすんだよこれ……)
「お前、ヒナの事好きなのか? あんなビッチに惚れるとかセンスねーな!」
——ドカッ ドカッ
「は? お前は……くぅっ……なんなんだよ」
「俺はただ遊んでやっただけだっつーの。誰があんなバカ女にマジになるかよ」
(クソが……こいつだけは許せねえ……)
——ドカッ……ドゴォズザザ——
「——なっ」
両手で頭をガードしていたレオンだが、蹴りのリズムが単調になってきたところで、田中の足を掴み、そのまま引きずり倒し、バックを取る。
——グッ……ググッ……
(よし……確か……こう……)
もみくちゃになりながら地面に転がる二人。レオンはすかさず左前腕を田中の首に回し、右腕でロックし、締め上げる。
両足も同様に田中の腰にまわし、完全におぶさっているような状態だ。
「——グッ……グェ……」
(チョークスリーパー、入った……)
格闘技未経験のレオンが何かの動画で得た知識を頼りに繰り出したチョークだが、突然の反撃に驚いた隙だらけの田中にはブッ刺さった。
同じく格闘技未経験の田中が、完璧に入った締め技から逃げられるわけもない。レオンの腕を引っ掻いて抵抗するのが関の山だ。
——キュッ
「く……くそ……離せ……くそ……」
「く……くたばれ……カスが……」
口のサイドから涎を垂らしながらレオンの腕を引き剥がそうとする田中だが、レオンは力を緩めない。
あと数秒締め続ければ、失神……そして失禁もありえるが——
——ドゴォっ!
「うがっ!」
何をしてもチョークを解こうとしないレオンに痺れを切らして、とうとう取り巻きの井ノ原はレオンの顔面を蹴り飛ばした。
流石に顔を蹴り飛ばすような危険行為に走ることはなさそうだと、油断していたレオンは思わず力を緩めてしまった。
「ごほっ……ごっごほぇ……」
涙と涎を垂れ流しながらうつ伏せで咳き込む田中。
「おいっ大丈夫か!?」
「ごほっごほっ、オエっ。ごの゛……ごほっ」
失神直前まで首を絞められた田中は咳が止まらず返事ができない。どうやらレオンは頸動脈ではなく、喉そのものを締めていたらしい。
物理的に潰された田中の喉は回復に時間がかかりそうだ。
「クソガァっ!」
——ドゴッ ドゴッ
(う……こいつら……もう、普通に顔面狙ってきやがる……)
田中がやられかけてからは、取り巻き達も気を引き締めたようだ。頭を抱えて丸まったレオンの顔面や頭部もお構いなしに蹴り始めた。
(やばい。こいつら、キレてる……やばい……)
田中はまだ戦線復帰できていないが、取り巻き二人はアドレナリンが出まくって、訳がわからなくなっている。
——ボゴォッ!
レオンを蹴ろうとする井ノ原の顔面を小さな拳が捉えた。
……マサヒロだ。
「おいおいっ! 三対一は卑怯だろうがっ!」
(マサヒロ!? なんでお前が……)
「立てぇボケレオン! やんぞ!」
「お、おお」
すかさず立ち上がるレオン。レオンを含む4人が身長180cmを超える中、162cmのマサヒロが戦力になるかはわからないが、とにかく状況は変わったようだ。
不意に顔を殴られて混乱している井ノ原の腹に蹴りを入れたマサヒロは、そのまま倒れ込む井ノ原にマウントポジションで鉄槌を入れる。
(こいつ、チビのくせにやたら喧嘩っ早いと思ってたら、普通に喧嘩慣れしてやがる!?)
25kgは体重差がありそうな井ノ原の上で、器用にバランスを取り、ポジションを譲らないマサヒロに驚くレオンと坂本。
「ま、待て、参った。参ったから……」
喧嘩などほとんどしたことが無く、ましてや顔を殴られた経験など皆無の井ノ原にとっては、体重45kgのチビの拳とはいえ、何度も何度も繰り返し振り下ろされれば怖いものだ。
先ほどまでみなぎっていたアドレナリンも虚しく、泣きながらマサヒロの両手を掴んで懇願する井ノ原。
マサヒロはその手を振り払って立ち上がると、即座に走り出し……座って様子を伺う田中の足に蹴りを入れた。
——ボガッッ
「いっ——」
「クソがよぉ。テメェがボス猿かぁっ!」
「ごほっ。ま、待て……」
「三対一でレオンをボコっといて『待て』ダァ? そうは問屋がオロさねェだろ」
両手を地面について項垂れる田中に目線を合わせるためにしゃがむマサヒロ。
「くそ……」
「おーおー、チビに見下ろされちまって可愛いもんだなぁ田中先輩よぉ」
「ごほっ。お前……覚えとけよ……俺は北見先輩知ってんだからな……」
「ぶほっ……おいおい! ま……まさか……この進学校に入って……そのセリフを聞くことになるタァ思わなかったぜっ!」
高校を卒業してからも地元の怖い先輩として知られる「なんちゃら先輩」の話など、中学時代に聞き慣れたマサヒロだが、まさか偏差値65を超える『自称進学校』でそのセリフを聞くとは思っていなかった。
堪えキレずに笑い出し、シリアスな雰囲気がぶち壊される。
すでにレオンと坂本はファイティングポーズを解き、田中とマサヒロのやり取りを見守ることにしていた。
「ごほっ。何笑ってやがる……オレァマジだぞ……ごほっ」
「先輩……。マジでもなんでもいいんすけど、先輩って多分、スポーツ推薦っすよね? 大学……」
「……」
「何が言いたいか、わかっちゃいました?」
「ゴホッ……テメェらも喧嘩なんか、学校にバレたら停学だろうが」
「喧嘩? なんの話っすか?」
「あ? そっちも手ェ出してんだろうが」
「オレァ、一般受験なんで、停学ごとき怖くねーんすわ。それに、こっちは、三対一でリンチにあってる友達を助けただけですよ?」
「は? 何言ってやが——」
「アニキー!」
——ガサガサ
マサヒロが大声をだすと、筋骨隆々……銀髪モヒカンで夜にも関わらず、サングラスをかけた大男が草むらから出てきた。
右手に持つスマートフォンの画面には、録画中を示す赤いマークが小さく点滅していた。
「おう。綺麗に撮れてるぞ」
(こいつら……またやりやがった!)
よってたかって、殴られて、蹴られて、ボコボコの顔でレオンが笑う。
◆ご挨拶
『嘘告リベンジ』をここまで読んでいただき、ありがとうございます。
「続きが気になる……」と思ってくださった方は、よかったら応援や☆レビューをいただけると、嬉しいです。
星は1つからでも大歓迎! そして、読者様とのコメント欄での交流を日々楽しみに生きています。
次回『第31話 生殺与奪権はこっちが握ってるんだわ』の更新は11月10日になります。
引き続き『嘘告リベンジ』をよろしくお願いします!
◆新作のお知らせ
『ゲームの中の悪役令嬢の兄になった俺は、追放されかけた妹を最強に育ててトゥルーエンドを実現する』
https://ncode.syosetu.com/n4271my/
こちら、新作です。可愛くてクールな最強の妹と一緒に生活する、ほんわかファンタジー。嘘告リベンジの次の話をお待ちの時間によかったら読んでみてください。




