第25話 なんで裸で踊っているんだ
焼きそばパンを五個もったパシリは走って教室に戻った。いじめられっ子の名前がパシリだなんて驚いたな。
さて、あらかた話はわかったが、どうやら先生に言うのは悪手らしい。場合によっては物事が悪化するとかなんとか。
そういえば確かに、昔そんなことも……あったな。小学校の時、ヒナが仲良くしてくれなかったら、俺も今頃パシリだったのだろうか。
……。
さて、どうしたものか。
焼きそばパン五個……1,000円。
とりあえず回収しないとな。
パシリは確か、一年二組か。奇しくも去年の俺たちと同じ教室だな。
ふむ。
どうしたものかな。
◇
——キーンコーンカーンコーン
「じゃぁなーケイタ!」
「また明日ねっ!」
「おお、昨日はありがとなー」
ユウトとミヅキ、今日も一緒か……仲良くなったんだな。まぁ、昨日、俺たちは身も心も一つになったんだ。仲良くなっていてもおかしくはない。
実際、俺も二人との距離は縮まった気がするしな。
さて、一年の教室に行くとしよう。マサヒロは暇だったらついてきてくれるかな?
むむ、マサヒロはヒナとミレイと一緒か。
「マサヒロー」
「ん、おおっ! どうした?」
「今日はこの後予定ありか?」
「マサハルは私と遊ぶんだよ」
「そうなのか……ミレイ。仲良しなんだな」
「そう。仲良しなんだよ」
「それは、邪魔できないな」
「邪魔なんかさせないよ」
そうか、最近ミレイとマサヒロは仲良しだもんな。俺もだいぶマサヒロとは仲良くなったと思ったんだが、ガリ勉グループはこれで三人か。
派閥としては十分な大きさに昇格したかもしれないな。
「ってなわけだ! ケイタ! わりーな! 今日は俺がハーレムの日なんだ!」
「おお、ヒナもか。両手に花って奴だな」
「カッカッカ! 勉強もできてナリの良い女でサンドウィッチになってたら、野郎共の嫉妬の炎で魔女狩りにあっちまうかもなあ」
「ケイタごめんねっ! 今日はケイタのBDPの作戦会議なの!」
「おお、それなら俺は参加できないな。ヒナ、楽しそうでいいな」
「うんっ! ケイタ、楽しみにしててね」
「おう。期待してるぞ。みんなありがとな」
「ほんじゃななー!」
「バイバーイ」
「じゃあね、ケイタ! また明日ね!」
「おー、また明日」
ふむ。マサヒロたちは俺の誕生日パーティに関して、かなり念入りに準備をしているみたいだな。
楽しみだ。
ヒナも、マサヒロとミレイが一緒の時は楽しそうだ。よかった。昨日のことはあまり引きずっていないみたいだ。
ふふ。よかった。
ヒナが元気で、楽しそうで。
さて……昨日の話をちゃんと聞かないとなあ。
焼きそばパンの金も回収しないとなあ。
今日の俺は、ちょっとバイオレンスな気分かもしれない。
楽しそうなヒナの邪魔するやつは……。
邪魔するやつは……。
……。
◇
最近俺は複雑に物事を考えすぎていたのかもしれない。
ここは茨城だぞ? しかも、最北端。東京じゃないんだ。
進学校に来て、勉強ばかりだったし、クラスメイトはみんな良いやつばかりだったから、忘れていたな。
……。
中学校の時は簡単だった。
ヒナに悪さする奴がいたら、軽く腕を捻り上げてやれば、大体の話し合いは穏便に解決していたもんな。
やっぱり柔道はいい。殴ったり蹴ったりは、血が出るからな。
投げて締める分には、まぁ、怪我をさせたり大ごとになったりはせずに、場を納められる。
今は部活もやっていないし、出場停止なんかに怯える心配もない。
何よりこの行為には大義名分がある。
パシリへのいじめ、ヒナへのセクハラ、先輩への無礼……。
色々調べたが、ヒナの件もいじめとして立証が可能だろう。
大人を頼った瞬間に相手の立場が悪くなる。
よし、今日の俺はヒナの事を好きすぎて暴走するケイタじゃない。
後輩のパシリがいじめられているのを助けるケイタ先輩だ。
何も迷わずに行動できる。
「先生に言われたら困る」だなんて、パシリも良いことを言うな。
お前が困るんなら、俺が直接動くしかない。
『大義名分』とは良い言葉だ。さすがマサヒロ。俺の悩みなんか一言で解決してくれる。
ふむ。
『さ、さささ、佐伯先輩っ! ふ、ふふ、筆おろし、してもらえませんか?』
……。
ヒナにセクハラした無礼は許さんが……イジメられてたってなると、パシリを責めるわけにもいかんな……。
あいつがパシリなおかげで、俺は大義名分を得れるわけだし、。
……。
まあいい。
とにかく、有利な状況で交渉を進められそうだ。
武力、知力、大義名分……全てにおいてこちらに分がある。
後輩に圧をかけるリスクと、ヒナの問題を解決できる可能性というリターン……計算は終わった。
十年近く、ヒナのわがままなオーダーをこなしてきたんだ。このくらいできなきゃ、お姫様の幼馴染の席に座ってはいられないさ。年季が違う。
……。
まぁ、穏便に済むのが一番だ。
なあ。
後輩たちよ。
◇
——ガラッ
「あぁ、そこの君」
「は、はい!」
「パシリはいるか?」
「え、パシリ?」
「あぁ。このクラスのはずなんだが」
「あぁ、パシリですね。あそこに……」
「あぁ、あいつだな。……何やってんだあれ?」
「さ、さぁ、私は関わっていないので」
「そっか。ありがとな」
「は、はい! ではさようならっ! ケイタ先輩っ!」
「おお、ありがとな」
……?
なんか変わった子だったな。そもそも、名乗ったかな。
まぁいい。
……。
パシリよ。
なんでお前は裸で踊っているんだ?
——カシャ
一応証拠は押さえておくか。
よし。
「おーい、パシリー」
「あ、せ、せせ、先輩」
「あー、焼きそばパンの代金を回収しに来たんだが、なんでお前は服を着ていないんだ?」
「あ、あは、今日の、罰ゲームです」
「だらしない体だな」
「す、すいません」
パシリは放課後の教室で、上半身裸になって何やら踊っていた。鍛えていないのか、贅肉がだるだるだ。
ふむ。さっきの女の子の反応を見るに、クラスの子達もある程度この状況を把握しているみたいだ。
よし。イジメを止めようとする先輩の構図が成り立つな。
しかし、だらしない体だな。脱ぐならもう少し鍛えておいた方がいいんじゃないか?
「先輩、なんスか? 俺ら遊んでんスけど」
「あぁ、こいつに今日焼きそばパンを強奪されてなぁ。その代金を回収しに来たんだ」
「へぇー。おい、パシリ! 先輩に金払ってやれよ」
「あ、う、うん」
おいパシリ。そうやって簡単に言うことを聞くから舐められるんだぞ。ふぅ。仕方ない。
お前のことはどうでもいいんだが……お前がパシリなおかげで、ヒナの件に口を出せるわけだからな。
助けてやるか。大義名分は大事だからなあ。
「あー、こいつからはいい。パン、食ったやつから回収しようと思ってな」
「ははっそうなんすかー? 食ったの俺らっすけど、回収しますか?」
チャラい喋り方の雑魚が立ち上がったが……ふむ。そこそこでかいな。レオンより、ちょっとでかいくらいか。
185cm……70kg……くらいか。ガリガリだな。
まあ、脂肪でダルダルのパシリから見たら、ちょっとデカいだけのやつでも、ちょっと強そうに見えるのかもな。
「先輩に対する礼儀がなってないな? 名前は?」
「あー、田中っス」
「そうか。田中……なんか聞き覚えがあるな。まぁ、珍しい苗字でもないしなあ。とりあえず200円だ」
「うちの兄貴、三年のバスケ部なんすけど、いいんすか?」
「三年の田中……?」
あぁ……。
『頼めばすぐにヤラセてくれるみたいな、そんな話をしてる奴らが最近いるみたいで……』
バスケ部の田中……ヒナの前の……彼氏……そういうことか。
……。
クソだな。
◆ご挨拶
『嘘告リベンジ』をここまで読んでいただき、ありがとうございます。
「続きが気になる……」と思ってくださった方は、よかったら応援やレビューをいただけると、嬉しいです。
星は1つからでも大歓迎! そして、読者様とのコメント欄での交流を日々楽しみに生きています。
次回『第26話 グェ……オェ……オェェェ』の更新は11月04日になります。
引き続き『嘘告リベンジ』をよろしくお願いします!




