第16話 クソポルノじゃねーか(マサヒロ視点)
とりあえず、レオンを嵌める女を誰がやるか問題は解決したな。俺が女装するってんなら、ミレイの負担も小さくなるし、ネタバラシした時のインパクトは爆増だ。
最高じゃねーかっ! 面白くなってきたぜ。
女装のクオリティに関してはまぁ、フミタカ兄貴もミレイもいけるってんだから、問題ねーだろ。
美人のお母様に感謝しねえといけねーな。
となると、今日決めとかなきゃいけねーのは、作戦だな。北條雅子を軸に、そっこーで作戦を練り直すぞっ!
「それなら、根本から練り直そうぜ。多分呼び出しの時点で警戒心を生み出しちまうよな」
「そだね。さすがに私は前回のアレで怒ったのはバレてるし、いきなり女を紹介したいっていう流れも不自然ではあるね」
「となると、偶然の出会いを演出するしかないか……いや、待てよ。これなら、いけるんじゃねーか……」
「お?」
「見てくれ。俺が『嘘告』について研究する時、参考にした動画なんだが……」
『嘘告をバズらせるための5ステップ 〜 テンプレートの強みを活かした動画の伸ばし方』
「何これ?」
「最近流行りのネタを研究しているチャンネルで、登録数の割に質が良くてな、結構参考にしていたんだが……、このIDをよく見てくれ」
『@Re.Sound.T-horizons』
「れ、おと、てぃ、ほらいずん……地平線……まさかっ!」
「あぁ。レオン、普段使っているチャットと同じIDで動画チャンネルを運営してやがった」
「でかしたぞ! さすがガリ勉だ!」
「あぁ。あのバカ、無駄に凝った動画編集をしてやがると思ったら、このクオリティで毎日何かしらアップしているところをみると、割と本気で動画配信してるみてーだ」
「ならば、それをうまく利用すれば……」
「あぁ。そもそも例の『嘘告』動画も、何を思ってあんなことをしたのかってのも、これで説明つくんじゃねえか?」
「ああああ、バカのノイズが酷すぎて全く理解できなかったけど、そういうことか!」
「あぁ。動画が伸びずに悩んでいたバカが、撮れ高マックスのネタを拾って舞い上がっちまったんだろうな。だったらよぉ、今度は俺たちが最高のネタを作り上げてやろうじゃねえか。そんで、あいつにその動画をプレゼントすりゃぁ……」
「ミッションコンプリートってわけだね。すごいよマサハル。バカ×バカの二次方程式を解ける奴がこの世にいたなんて……」
「これがガリ勉の力だ」
「ねえ。私もなれるかな? ガリ勉に」
「ああ。まずは授業中、起きているところから始めようぜ」
「茨の道だね……」
「ミレイ」
「ん?」
「手を離せ」
「ちっ」
なんで人の手の上に手を重ねてバカみたいなことを言ってるんだこの女は。油断も隙もあったもんじゃねえ。
仮にも姫の名を冠する女子が気軽に野郎に触れるなってんだ。もっと慎ましく生きやがれ。
とにもかくにもあとはレオンをどう呼び出すか、決めるだけだ。そうだな。動画……バズりネタか……。
嘘告について調べるのに動画を漁ったりもしたが、いかんせん俺は普段から動画サイトなんか、調べごとする時くらいしか見ねーから、よくわかんねーんだよな。
あの、ショート動画だっけか? いわゆるドーパミンを出させて一生回遊させるっていう悪魔の手下みてーなやつ。何がおもしれーんだかさっぱりだ。
「なあミレイ」
「ん?」
「動画のネタとして、『嘘告』以外に盛り上がるやつは何があるんだ?」
「別に『嘘告』って動画としてはメジャージャンルではないと思うんだけど……あれはドッキリという大ジャンルに内包される小ジャンルであって、ニッチな世界の住人が楽しんでるやつだよ」
「わかってんじゃねーかミレイ。お前のその眠たそーな頭をドーパミンでぐちゃぐちゃにしてやがる動画はなんだって聞いてんだよ」
「んー。そうだな。基本的に女の子が踊ってるやつとか、歌ってるやつは流れてくるよ。ほれ」
ミレイが差し出してきたスマホの画面には、バカみてーな露出をした女が、十秒で覚えられそうな同じ振り付けを繰り返している動画が流れていた。
スライドすると、違う女が同じ動きをしている。もう一度スライドしてみると、今度はさらに露出の高い女が同じ動きをしている。
「なぁ。これエロサイトなんじゃねーか?」
「違うよ。今流行ってんの」
「クソポルノじゃねーか」
「マサハルってさ」
「あ?」
「ピュアだね」
「うるせーよ。ガリ勉に何を求めていやがる」
とにかく、その後もひたすらスライドをしまくって、垂れ流される動画をひたすら分析した。
出演者の人数、男女、踊ってんのか、歌ってんのか、料理してんのか、ピアノを弾いてんのか、漫画の考察してんのか、モノマネしてんのか、とにかくありとあらゆる動画が流れてくるが、比率ってもんがある。
少なくとも、男よりも女が出ている方が伸びやすい傾向があり、尚且つ露出度は高めが吉だ。
そして、歌ったりピアノを弾いたりってのは、何かしら技術が必要そうだが、踊りに関しては、専門性が感じられねーもんも混ざってる。
とにかく、ある程度ビジュアルのいい女が乳を揺らしてりゃー勝ちだ。そんな世界でレオンのバカは孤独に編集技術を磨いてんのか。バカなりに大したもんだ。
まあいい。ヤツをハメるのは変わんねえ。
くくく、俺も趣味が悪くなってきたじゃねーか。あの動画をアップした時のレオンはこんな気持ちだったのかもしれねーな。
まぁ、俺たちはドッキリで終わりだ。動画を悪用したりはしねえ。面白がっちゃいるが、あくまで目的はリベンジだ。一線は越えちゃなんねえ。
「ミレイ、こんなのはどうだ?」
「お、妙案?」
「あぁ。まず、俺が女装をして、いくつか踊る系の動画を撮ってみる。まぁ、露出がたけえつっても、野郎の裸だ。究極ポロリしたって、減るもんじゃねえ。とにかく、マッドサイエンティストミレイ様の作り上げたこの作品なら、ビジュアル課題は解決だ」
「もっと褒めてくれてもいいんだよ」
「あぁ、よくやった。とりあえずチャンネル開設から5本程度動画を用意するぞ、ミレイ。適当に服を着替えて踊って、スマホのアプリで雑にフィルターかけりゃぁ完成だ」
「マサハル、動画を舐めてるね」
「何言ってやがる。とりあえずこっちにゃぁ、なんだか変なことに詳しそうなフミタカ兄貴がいるじゃねえか。挨拶しようとして部屋にお邪魔した時、ちらっと見えたが、ありゃぁゲーミングPCと配信機材だろ? こんなわけわかんねーパーティグッズまで持ってるとくりゃぁ、動画配信くらいできるって期待しちまうなあ?」
「すげーなガリ勉って……とにかく踊ってみる系で簡単なやつだな? それならショートムービーをいくつか撮影して、フィルターかけて、MIXは俺の方でできるから、あとはチャンネルか。アルゴリズムの関係で新しいチャンネルの動画がすぐに再生されまくるってのは難しいから……。俺の持ってるチャンネルの一つにあげてみるか」
おお!? フミタカ兄貴は想像していたよりもガチガチじゃねーか!?
ワンチャンゲーム実況でもしててくれりゃあ御の字だと思ってカマかけてみたけど、ここまで世話してくれるんならありがてえ。
「やっぱりできるじゃねーっすかフミタカ兄貴。チャンネルまで使わせてもらえるとはありがてえ。レオンが近くにいる時、ミレイがワザと音量を上げて動画を見る。そこに食いついてくりゃぁ簡単だ。まずはそれをファーストステップにするか。向こうから食いついてきてくれりゃー最高だが、とにかくこの女に興味を持たせりゃいい」
「あー、それだったらわざわざインターネットに動画を流さなくても、このサービスの表記に合わせたフォーマットでスライドを何回かできるようにして……そうだな、15個くらいの動画をエンドレスでスライドできる形にして、そのローカルデータの中で、まるで期待の新星みたいな再生数を仮に表示させるってのが簡単かもな」
「でもお兄ちゃん、その後にレオンが自分のスマホで検索かけて探したりしたらどうすんの?」
「そうだなあ。まぁ、別にどうとでもなるだろう。女の子が踊ってる動画撮るわけだろ? 『恥ずかしくなって消しちゃったー! キャピ★』みたいな感じでもいいし、なんか運営にBANされたみたいな話でもいい。とにかく、動画を削除する言い訳なんて無限にあるし、昨日見た動画が消えてるなんてのは日常のことさ」
「おいおいミレイ! お前の兄貴くそ優秀じゃねーか! マジで血ぃ繋がってんのか?」
「むむむ。無礼だよマサハル。わたしだってやればできるさ」
——ポカポカ
ミレイが頬を膨らませつつ、小さな両手で俺の肩をポカポカ叩いてきやがる。それを見てフミタカ兄貴は……目に涙を浮かべて、大声で笑っている。
「ガハハハ!」
「ははは! 冗談だ! まず、ミレイがいなきゃ兄貴とも繋がってねえんだ。それだけじゃねえ。そもそもこのアイディアの根幹を吐き出したのも、この女を作り出したのもお前だろ。めちゃくちゃ活躍してんじゃねーか」
「わかっているなら、いい」
「あぁ。そしたらあとは俺が踊るだけだな。あとは……名前か。こういうのは、あまりにも普段の呼ばれ方から離れすぎると、反応が不自然になるって聞いたことがある。となるとマサ……マサ……」
「マサコ」
「いいじゃねぇか、ちょっと古風だが、まあいい。マサコと言えば苗字はそうだな」
「北條だね」
「北條雅子か……悪くねえ。よし、雑に一本筋は通ったじゃねえか。とりあえずデートまで漕ぎ着けた後のことは、その時に考えるぞっ! 今は各々行動に移すのみだ。プロジェクトマサコ……始動っ! 準備はいいか? てめーらっ!」
「おっしゃー! 楽しくなってきたなっ!」
「いえっさー」
——かくして始動したプロジェクトマサコによって、レオンの性癖は歪められてしまうことを、三人は知らない。
◆ご挨拶
嘘告リベンジを読んでいただき、ありがとうございます。
皆様の応援、コメント、レビュー、いつも嬉しく思っています。
特にコメント欄でのコミュニケーションは私の日々の楽しみの一つとなっていますので、一言でもコメントもらえたら仕事終わりにすぐ返させてもらいます。
星は一つからでも大歓迎ですし、「読みやすかった」なんてレビューをもらえたら大喜びします。
引き続き、嘘告リベンジをよろしくお願いします。




