第9話「兆候」
「さ、奏汰くん、もうすぐ始まるよ」
「了解です」
そしてイグニッションスイッチを押し込む。
エンジンが再び鼓動を始める。
ヘルメットを被り、臨戦態勢になる。
〈愛豊高校!スタートゲートに進んでください!〉
スタッフから呼ばれると真っ赤なヴィッツがゆっくりとスタートゲートにつく。
『奏汰くん、今1個目のSSを走ってタイムは2番手。前の菱三津高校とは2秒差。詰められない差じゃないよ』
「わかりました。」
奏汰はニュートラルから1速にギアを入れる。
そして回転数を合わせていく。
『GO!』
その言葉とほぼ同時に飛び出していく。
コーナーを異常とも言える精度で安定して駆け抜けていく。
そして最初のセクターを通過する。
タイムはトップ。
真紀はそのタイムを目の前に設置した小さいモニターで確認する。
「速すぎる…異次元だ…」
思わず息を呑む。
そしてフィニッシュラインを通過する。
結果、クラストップタイムを記録。
「奏汰くんすごいよ!クラストップだ!」
「…」
奏汰は答えない。
「奏汰くん?」
「…あ!す、すみません、考え事してました。なんて言いました?」
「奏汰くん、クラストップだよって。」
「あ、今1位なんですね」
「言わない方がよかった?」
「いや、僕そういうの言われても特に気にしないんで」
表情は固いまま。
サービスパークに向かった。
戻って来ると、テントの前で幸介たちが待っていた。
テント内にマシンが入り、奏汰が降りてくる。
「奏汰ぁ!やったなぁ!俺達初めての1位だ!」
「せ…先輩、苦しい…」
「あ、わりぃわりぃ」
「それに先輩、まだ1日目ですよ。まだ明日があります」
「おっ、そうだな。じゃあ、また明日お前が速く走れるように整備しといてやるよ」
「お願いします」




