第32話「回収」
そこに現れたのは産浜高校のDS3。
『おい、昇也、様子がおかしい』
真紀が減速を促す奥でヤリスS2000が大破しているのが見えた。
「あれはまずい激突の仕方だ。すぐに救助するぞ」
『大丈夫なのか?このSSがキャンセルになる確証は?』
「考えてみろ、人命に関わるレベルのクラッシュだろ、あれはどう見ても。だったら助ける。」
産浜高校のDS3が止まり、2人が降りてくる。
「まずいじゃないか…ドアを開けるか」
そう言い、ドアノブに手をかける。
引っ張った時、すぐに開かないことを悟る。
「何か工具はないか!」
「昇也、これ使うぞ」
ドアに差し込み、開く。
ドアが開いた。
シートベルトを外し、昇也が奏汰を外に出す。
ヘルメットを外し、呼吸などを確認する。
その時、救急車のサイレンが聞こえてきた。
先生に電話すると、真紀が付き添えという指示を受けた。
奏汰がストレッチャーごと救急車に乗せられていく。
それに真紀も乗り込む。
2人が乗った救急車は近くの病院へと向かい始めた。
夕方。
日も暮れ始め、辺りは暗くなってきた。
〈本日のSS3は、安全上の理由から継続が困難と判断し、ステージキャンセルとなりました。本日のSS3の記録はすべて抹消となります。繰り返します…〉
アナウンスが流れ続けていた。
「…」
「…」
力なく座り込む琉、穂乃果。
その奥で工具をいじる幸介。
唯一、福原はマシンの回収、引き渡しについて話をしていた。
「車両の回収はこの後、7時からで、引き渡しは明日の早朝で…」
「ですね。わかりました。それでお願い…」
「マシンの回収が終わったらすぐに車両の引き渡しをしてくれませんか。あいつが、奏汰が戻ってこようと、戻ってこなくとも俺達は直します。」
福原とスタッフの会話に割り込む。
「いいんですか?今から修理、となると規定時間の大幅超過でタイム加算のペナルティとなりますが…」
「そんなの構わない。あの奏汰っていうドライバーならそんな5分のタイムペナルティなんてひっくり返すさ。」
この時、初めて幸介が奏汰に抱いていた思いが漏れる。
午後7時。
首都高の通行止めが伸ばされ、車両が回収される。
クレーンで車両が吊り上げられる。
荷台に載せられ、J地区に向かい始めた。
大破した車両が愛豊高校のテントの前に降ろされる。
周りはざわついていた。
「あれを直すのか?」「正気かよ」「どうせリタイアってオチだろ」
色々な声が飛び交っていた。
そして修理時間のタイマーがカウントダウンを開始する。
「よし、琉、まずは取れるボディパーツから外していくぞ!」
「了解!」
「穂乃果、ごめんだけど、スペアパーツがトランポの中にあるから、できる限り持ってきてほしい!スペアってテープに書いてあるから!」
「わ、わかった!」




