第31話「大クラッシュ」
SS3、首都高の中でもレインボーブリッジなどを駆け抜けていく高速セクションが多いSS。
スタートゲートにつく。
奏汰の顔には少しばかりの不安があった。
『…ん、奏汰くん!』
「えぁあ、なんですか真紀先輩」
『どうしたの、さっきからなんか浮かない顔して』
「い、い、いや〜、な、なんでもないっすよ。」
言えない。ブレーキに異変があるなんて言えない。
言ったら絶対に止めてくる。
言わないでトラブルを起こしたらそれはそれで大問題になるけど…
簡単な話だ。僕がトラブルを起こさないように走ればいいんだ。
『さぁ、奏汰くん、行くよ!』
「はい」
スタートゲートにつく。
『5,4,3,2,1,GO』
弾かれたように飛び出していく。
1つ目のコーナー。
やっぱり効きが弱い。
若干のオーバースピードで進入する。
側壁にかすりながらコーナーを抜けていく。
「…やっぱりブレーキがだめだ…」
その不安を抱えたままレインボーブリッジのロングストレートに差し掛かる。
ここでこの車は時速200km/h近くまで加速する。
そして緩やかな右コーナーに差し掛かったその時だった。
フロントブレーキが抜けたような感覚がペダルから伝わってくる。
「…!?」
奏汰はとっさにギアを下げ、サイドブレーキを引き、減速行動をとる。
マシンはハーフスピン状態になり、右フロントから壁に激突する。
そして奏汰の真横も壁にぶつかる。
白煙を上げながら止まるヤリスS2000。
真紀も奏汰も気を失った。
その様子を見ていたサービスパークのメンバーたち。
「…」目の前の光景が信じられず、口を覆う穂乃果。
「奏汰…真紀…生きてるよな…?」
「何が起こったんだよ…」
全員が何が起きているか理解しきれていなかった。
「……ん…」
真紀が目を覚ます。
そしてすぐに状況を理解する。
「まずいッ!」
真紀はすぐにシートベルトを外し、マシンの外に出る。
トランクに積んである三角板と発炎筒を取り出す。
三角板を立て、その横に発炎筒を置く。
そしてすぐにマシンに戻り、奏汰の意識を確認する。
「奏汰くん!奏汰くん!」
反応がない。
「エンジンがまだ切れてない!」
とっさに真紀はエンジンを切る。
このダメージだとガソリンやオイルから出火を招く危険もある。
早く、気道が確保できるような姿勢にしないと…
そう思い、運転席側のドアを開けようとする。
しかし、先程の激突の際にドアが歪んでおり、開かなかった。
「どうしよう…」
その時、後続車のエンジン音が聞こえてきた。
「奏汰くん、ごめんね!」
真紀はまた三角板を立てた場所まで戻り始めた。
そして、後続の車両に減速を促そうとしていた。




