第27話「お守り」
アップも終え、あとは初日のSSS1を待つのみ。
奏汰もさすがの初めてのカテゴリーの全国大会で落ち着きを失いかけていた。
ソワソワしている奏汰を見た琉が声をかける。
「奏汰、緊張してるのか?」
「う、うん」
「お前、小学生くらいからレースやってるんだろ?なんで緊張するんだよ」
「いや、乗ってるカテゴリー違うじゃん。カートはサーキットだったけど、こっちは市街地とか一般道じゃん」
「走る場所は違うけど、クルマ乗ってる時点で同じじゃん」
「それはそうだけどさ〜…」
「お前なら大丈夫だって。F1ドライバーだってWRC出てたろ。それが実現するんだから行けるって」
実際、キミ・ライコネンやロバート・クビサ、ヘイキ・コバライネンといったF1レーサーが実際にWRCや全日本ラリー選手権といった有名なラリー大会に出場している。
「だから、奏汰、お前大丈夫だって」
奏汰の肩を強く叩く。
「あ、ありがとう。頑張ってくる。」
「おう。お前ならできるぞ」
奏汰がヤリスに乗り込もうとする。
それを穂乃果が呼び止める。
「奏汰くん!」
「どうしたんすか、穂乃果先輩」
「これ」
そう言って出してきたのは1つの小袋。
「あざっす」
その中身を出してみる。
お守りが出てくる。
そこに鳥の絵が描かれていた。
「か、からす?」
「そう、ヤタガラス。導きの神様で交通安全とか必勝祈願のご利益があるの。今の奏汰くんにぴったりかなって思って。」
「ありがとうございます。さっそくつけていきます」
マシンに乗り込み、ウインカーレバーにお守りをかける。
スイッチ類に手を伸ばす。
そしてエンジンをかける。
真紀もペースノートやタブレットなどを持ってナビシートに乗り込む。
「奏汰くん、早いね」
「なんか落ち着かなくて」
「まぁ、ゆったりやって遅れるよりはましだし、いいんじゃない?」
「ですね。行きましょうか。」
ヤリスがテントから動き出す。
「車両出まーす!」琉が誘導してくれる。
サムズアップで送り出していく。
それに奏汰も答える。
走り去っていく奏汰の後ろ姿を見守る琉。
「どうしたんだよ、そんなに見届けて」
「え、あいや、なんか、奏汰、一時期と違ってなんか明るさが戻ったなぁって」
「たしかにな」
「ちょっと前だったら多分あのサムズアップにも答えてくれなかった気がするし。」
「ま、気持ちが明るい方向に変わったならいいんじゃないか。」
「ですね。」
「さ、琉、俺らはSSS1を戦ったあいつのメンテナンスの準備だ!」
「あいっす!先輩!」
2人はテントの下で工具を取り出し始めた。




