第17話「悩み」
福原が職員室に戻った後。
「そういえば、奏汰は?最近工場に来てねぇが。琉知ってるか?」幸介が聞く。
「いや〜、わかんないっすね。やっぱここまでの2回のリタイアが堪えたのかもしんないっすね。」
この会話を聞いていた穂乃果は唯一心当たりがあった。
穂乃果が向かったのは学校の練習サーキット。
そこのピット上にちょっとしたスペースがあり、コースを一望できる。
そこの柵に寄りかかってコースを眺めている人影があった。
「いた。はい、ジュース」
「あ、ありがとうございます。」
少しの間を空けて奏汰が話し始める。
「もう、ラリーするのは辞めようと思います」
「なんで?」
「だって、僕はどうやっても父さんを超えられない。」
「今だってそうだ。夏空の息子、夏空の息子って。誰一人として僕を見てくれない。」
それは父が偉大すぎるがゆえの息子の悩みだった
「だから、父さんを超えれば僕を見てくれるんじゃないかって。」
「…」
「でも、ダメだった。2大会連続でマシン壊して。しかも今回はエンジン。もう戦えないっす」
戦えない。その言葉はとても弱々しかった。
穂乃果の中で何か火がついたような気がした。
「それでいいの?」
「え?」
「それでいいの?今まで積み上げたレースの経験、思いをそんな簡単に捨てて」
「でも、私はただのエンジニア。だからレーサーのことはわからない。まぁ、戻ってきなよ。マシン新しくなるから」
「そうなんですか?」
「うん。奏汰くんの実力を評価して先生がマシンを変えるって。」
「…もう一回戻ってもいいですか?」
「もちろん。帰っておいで。」




