第16話「切り替え」
学校。
工場に到着した一行はマシンと機材を下ろし、解散する。
その後。
フロントが焼き焦げたGRヴィッツと向き合う福原。
「今回の結果もあってわかったことは、このヴィッツのスペックが奏汰くんの実力に追いついていないこと。それとこのエンジンだとターボのパワーに耐えきれないこともわかった。」
「だから、この2つに耐えられるマシンを作る必要がある。そのためにはHR-Xにクラスを切り替えることも視野に入れないと。」
その時、福原の中にある考えが浮かんだ。
翌日。
「うっす」
「あ、琉くん!」
「奏汰くん知らない?」
「あいつ、教室にはいましたよ」
「あ、よかった。学校には来てたのね」
「あれ、そういえば、福原先生は今日はいないんすか?」
「あ、なんか、福原先生今日出張らしいよ」
アダチラリーレーシング(ARR)と書かれた看板の前に立つ福原。
「ここのパーツを貰えればHR-Xに昇格する条件は揃う。」
中に入るとリフトアップされたGRヤリスRally2やGR86などレース用のマシンたちが並んでいた。
すると初老の男性が出てきた。
「うちになんか用かい?」
「あ、連絡していた福原です」
「あ、愛豊高校の。いらっしゃい。まぁ、そこの事務所で話そうか」
事務所に入る。
壁にはWRCなどのポスターが貼られており、棚には大量のトロフィーが並んでいた。
「あ、名刺渡してなかったですね。愛豊高校自動車競技部の福原葵です」
「お、じゃあ俺も渡すか。アダチラリーレーシングの安達友信だ。」
「安達って…もしかして?」
「おぉ、察しがいいね。俺の息子はF1レーサーだ。」
「すごいですね。正反対だ。」
「あっはは!よく言われるよ!」
「それで、愛豊高校さんが何の用で?」
「実は色々調べていて、安達さんのチームで使われていたヤリスS2000のスペアパーツがいただけないかなと。」
「それはどうして?」
「実はうちの新しいドライバーと現状のヴィッツの性能が釣り合ってない気がしまして。それでアップデートできればドライバーの本来の実力が活かせると思ったんです。」
「…実は愛豊高校さんの走りをみさせてもらったよ。」
「そうなんですか?」
「あぁ。確かに君が言う通り、萩原奏汰だっけか、はかなりヴィッツを苦しめる走らせ方をしてる。市販車であの走らせ方だとボディ剛性が狂ってそろそろ歪みが出てくる可能性もある。」
「それに、うちのマシンもGRヤリスRally2に乗り換えたからな。パーツだけじゃない、マシン自体を譲ってやるぞ。」
「マシンも…へ?」
「だから、もうあのヤリスS2000は乗らないから、あれごと譲ってやるよ。」
真っ白なヤリスS2000を指差す。
「いいんですか?」
「あぁ、実は今年、愛豊高校の走りに注目していたからね。それに、ドライバーの実力とこのクルマが合わさったら面白そうだしね。」
「マシンも譲ってくださるなんて…ありがとうございます!」
「いいってことよ。あ、だけど、エンジンはそっちで探してもらうことになるな。」
「エンジンについては大丈夫だと思います。」
「そうかい。じゃあ、クルマ自体は明日にでも届けに行くよ。」
「わかりました。お願いします!」
翌日、工場に真っ白なヤリスS2000が来た。
「さ。マシンも届いた。」
その時、中村が入ってくる。
「こんちわーっす、ってなんすか、このクルマ」
「あ、琉くん。このクルマはね、私達の真の実力を引き出すための秘密兵器だよ」
「なんかすごそうっすね。ヴィッツですか。」
「厳密には外国名のヤリスを改造したヤリスS2000ってクルマなの」
「ヤリスなのにS2000?ホンダ…?」
「S2000っていうのはFIAが定めたスーパー2000規定のことなの。」
「ちなみにだけど、自然吸気2000ccのエンジンを搭載した、3ドアベース車っていうのがスーパー2000規定ね。」
「自然吸気なんすね」
「まぁ、私達はターボエンジン搭載する予定だけどね」
「だけど、ヴィッツがエンジンブローしたからエンジンがないじゃないですか」
「そうなんだよね〜。どっか知ってるところない?琉くん」
「あ、俺の知り合いのところにならあるかも。知り合いが工場やってて、廃車工場。」
「もしかしたらスポーツカーとかの廃車があるかもっす。今日帰り寄って探してみます」
「いいの?」
「はい。意外とスポーツカーの廃車が来やすいんすよ。なんか知んないすけど」
「じゃあ、とりあえずお願いね」




