第15話「またもリタイア…」
SS1の待機場所につく。
車検も終わり、後は出番を待つだけ。
後ろに載せてあったヘルメットを被り、スイッチを入れる。
その様子を横で見ていた真紀は奏汰の目つきが不覚にも夏空に似ていると感じていた。
〈愛豊高校!スタートゲートに進んでください!〉
そのアナウンスの後、奏汰はヴィッツを進める。
『路面温度はまだ低め、タイヤへの熱入れはしっかりと。あと、パワーも上がってるからブレーキの感覚が変わってくるよ』
「…了解っす」
スタートの合図が出る。
ヴィッツがターボパワーで飛び出していく。
この加速の瞬間、奏汰は驚く。
「ターボがつくだけでこんなに力強くなるのかッ…!」
かつてのヴィッツだったら苦戦するような長いストレートもぐんぐんと進んでいく。
気づけばフィニッシュラインが目の前に来た。
通過する。
すぐに順位を真紀は確認する。
そこに表示されていたのはP2。
『奏汰くん、このSSでクラス内2位になったよ』
「…」
SS2後半。
前半の直線から打って変わりヘアピンカーブやS字カーブなどが連続する。
スピードレンジが下がるコーナー区間でもこのターボエンジンは役に立つ。
大きなパワーがコーナーからの脱出で加速を後押ししてくれる。
すると目の前に右に曲がる直角コーナーが待ち構えていた。
奏汰の目つきが変わる。
ブレーキを踏み、ギアを下げ、そしてサイドブレーキを引く。
少しのスキール音とともに車の向きが変わる。
そして爆発的なターボパワーで加速していく。
フィニッシュ。
クラスランキングは1位になった。
『奏汰くん、1位になったよ!このまま行こう!』
「…だめ…まだ…まだ…」
1位になったのに奏汰の目つきはどんどん厳しくなっていく。
SS3。
ここは前半区間が緩やかなコーナーが続き、後半セクターに入ると一気に直線になる。
SS3が始まる。
奏汰の走りはここまでの中で一番荒々しいものになっていた。
ガードレールにも何度かかすりながらコーナーを抜けていく。
「まだ…」
隣で見ていた真紀は正直恐怖を感じていた。
「いつもの奏汰くんじゃない…なにか、まるで操られてるような…」
コーナー区間を抜け、直線に来る。
その瞬間だった。
フロントガラスにたくさん付くオイルのようなもの。
外から見ると、マフラーから大量の白煙を吹き上げていた。
即座に真紀はエンジンブローということを理解する。
『そこの交差点で右にはけて!』
奏汰はまたショックのあまり何もできなくなっていた。
真紀が強引にハンドルを切り、交差点で右に曲がる。
そしてすぐにマシンを降り、足元に搭載されていた消火器を取り出す。
「奏汰くん!今回は本当に降りて!爆発しちゃうかもしれないから!」
真紀が消火器を吹き付ける隣で奏汰がマシンから降りてその場にへたり込む。
「僕が…僕がまた壊した…」
なんとか真紀の消火活動のかいもあって火は消し止められた。
そこにあったのは消火剤をかぶって真っ白になったヴィッツ。
今日の走行順はかなり後ろの方だったため、すぐにレッカー車が来た。
2人の体に何も無いことをメディカルカーから降りてきたドクターに伝える。
その後、クレーンでヴィッツが吊り上げられ、荷台に載せられる。
ヴィッツがサービスパークに到着する。
マシンが下ろされると、テントで消火剤を落とす。
そこに現れたのはフロントが焼け焦げたマシン。
「…」
「…」
「…」
「…」
みんなが言葉を失う。
「とりあえず、載せちゃおうか、クルマとテント」
「わっかりました」
トランスポーターのリアハッチが閉められる。
「じゃ、学校戻ろうか。」
その奥で表彰式が行われていた。
そこの一番高い場所に立っていたのは産浜高校だった。




