第13話「アップデート」
翌週。
メンバーたちはドライブシャフトが折れたヴィッツを分解し、オーバーホールしていた。
その隣で奏汰はタイムアタックチームの86を使って走りを極めていた。
その走りを見てタイムアタックチームのメカニック、ドライバーたちは開いた口が塞がらなかった。
「はぇぇ…」
「なんであいつこっち来なかったの…?」
速すぎたのだ。
「…だめだ。まだ…まだ、超えるには…」
奏汰の心の中には何か得体の知れない大きなものが支配していた。
何かを思い立った福原はタイムアタック用のマシンが整備されるエリアに来た。
「チーフいる?」
「あ、はい」
この部活では真紀が部長、タイムアタック部門をまとめるのが副部長で、副部長はチーフと呼ばれる。
「このさ、ヴィッツにターボって載る?」
「ぱっと見、スペースは十分なので搭載は可能だと思います。ただ」
「ただ?」
「相当パワーが上がります。エンジンブロックとか負荷がかなり大きくなりますし、ターボ化すると熱害も大きくなります。」
「でも、ターボはいい武器になる?」
「なるはなります。ただ、さっき言った問題が起こり得ることは考えておいてください。」
「わかった。一応ターボの部品はもらえたり…」
「いいっすよ。まだ4つくらいあるんで。譲ります」
「ありがとう。頂いていくよ」
ラリー部は最高の武器を手に入れた。
福原はすぐにラリー部のエリアにいく。
「みんなー!いい武器手に入ったよー!」
「なんすか〜?」
「じゃーん、カタツムリ〜」
「ターボじゃないですか」
「あ、うん」
「これヴィッツのエンジンに組み込むんですか?」
「そのつもりなんだけど」
「そうなると、インタークーラーの大型化と冷却効率の改善をしなきゃだな…」
「パーツは任せて。学校の予算で買えるから」
早速エンジンを下ろす作業が始まった。
「はーい!OK!」
その合図でエンジンを吊り上げ始める。
そして下ろしたエンジンをエンジンスタンドに固定し、作業を始める。
「じゃあ、とりあえずオーバーホールから始めるか。」
「琉、まずオイル出すよ」
「ういっす」
エンジンの中のオイルをまず抜く。
そしてエンジンキャップをまず外し、そこから段々下へと進んでいく。
気づけばエンジンブロックだけになっていた。
「よし、ここまで分解できれば大丈夫」
エンジンブロックからクランクシャフトと残されたピストンを外していく。
「何か怪しい部品とかあったらすぐに交換すること。あと、わからなければすぐ俺に言う事」
「わっかりました」
今までの酷使で至る所に交換すべき部品が出てくる。
そして新品同然にきれいになった部品たちをもう一度組み直していく。
翌日、バラバラだったエンジンがきれいに組み上がった。
「よし。これにあとはターボを組み込めば完成だ。」
ターボに一緒につけるエアクリーナーや、パイプなどを組み合わせ、ターボを搭載できるように準備を進める。
「よし、琉、パーツ組んじゃおう」
「了解っす」
ターボが組み込まれた直列ターボエンジンが完成した。
「できた。これが、俺達の流れを大きく変えてくれるかな。」
「琉。ターボの魔力は恐ろしいぞ?こいつは劇薬だ。使い方を誤れば行けない方向に行くことにもなりかねない。でも、こいつが俺達の優勝を引き寄せてくれるかもな。」
「あとは俺達で持たせてやればいいんだ。メカニックの仕事は最高のマシンをドライバーに渡してやるのが一番大事だからな。」
「そうですね。それが俺達メカニックのやるべきことですよね。壊れて帰ってきたら前より良い状態で送り出す。これが愛豊高校ラリー部の大事なことですもんね」
「そうだ。覚えてて偉いぞ。」
「あざっす!」
その頃、産浜高校。
リフトアップされ、バラバラになったDS3。
その隣には下ろされたエンジンがオーバーホールされていた。
その様子を篠宮は静かに見守っていた。
「篠宮先輩」
「どうした?」
「次の愛知トヨタラリーカップから搭載する新スロットルシステムと燃料噴射システム、一気に2個も変えちゃっていいんですか?リスクが大きいと思いますが…」
「最初はデータ取りのつもりさ。でも、このパーツが馴染めば絶対に今後役立つ武器に変わる。」
「じゃあ、搭載の方向でいいですね?」
「あぁ、頼む。」
実は篠宮和也の息子である篠宮昇也も父と同じくモータースポーツの世界に飛び込んだ。
そして、奏汰とは違い父からの勧めでラリーの世界を選んだ。
昇也は高校2年生ながら、その実力の高さが評価され、現在はシトロエンWRCチームの育成チームの一員としてラリーの舞台で戦っている。




