第11話「トラブル」
SS4。
前半はほぼ直線で代わり映えのしない。
そしてゴールまで後少しとなった頃にヘアピンカーブが待ち構える。
ヘアピンに差し掛かる真っ赤なヴィッツ。
少しのサイドブレーキでリアを滑らせてハーフスピンに近い状態でコーナーを抜けていく。
やはり奏汰は滑らせるように、まるでカートを扱うようにヴィッツを操る。
そしてゴール。
『トップ維持!しかもSSの歴代最速タイム更新だって!』
「…だめだ…これじゃ…」
『奏汰くん?』
「あいや、なんでもないです。さ、サービスパークに戻りましょう!明日もまだありますから」
『そうだね』
ヴィッツがサービスパークに戻ってくる。
愛豊高校のメンバーたちが拍手で迎えてくれる。
「やったぞ!俺達、歴代のタイムも塗り替えてファステストだ!」
「せ、せんぱい、だからくるしいですぅ…」
「あぁ、わりぃわりぃ」
幸介が奏汰を離す。
「じゃあ、今日はちょっと贅沢なご飯食べに行こうか!」
「やったぁー!」
「マジすか!あざーっす!」
この日はみんなで地元のうなぎが食べられる店に行った。
最終日。
この日はSS5のみが行われる。
この最終SSはこの東海ラリー県予選のSSの中でも最長。
山を下り、市街地がゴール地点で、豊田スタジアムが表彰場所になっている。
『この長いSSが最後だよ。これ1番に行ければ勝てるよ』
「…わかってます。行きましょう。」
ゆっくりとヴィッツが走り出す。
SS5中盤。
ここまでトップで駆け抜けてきた。
「…まだ…まだダメ…まだ…もっと…」
奏汰はさらにアクセルを踏み込んでいく。
「奏汰くん、踏みすぎだよ…車が壊れちゃうかも…」
ゴールも近づいてきた頃だった。
加速し始めた瞬間、フロントから大きな異音が聞こえてきた。
「しまった…!?」
『奏汰くん止まって!止まって!』
「嫌!まだいけます!」
そう言ってアクセルを踏み込もうとする。
しかしさらに異音が大きくなる。
『奏汰くん!本当に止まって!もうこの音はダメ!走れない!』
「…」
愛豊高校のGRヴィッツがコースサイドに止まる。
『奏汰くん、とりあえず三角板出して、OKの紙をトランクに貼っておいて!』
「…」
『奏汰くん!』
車も、自分の体も動かない。
自分が車を壊してしまった。
その事実がショックだった。
その間に真紀が助手席から飛び出し、OKの紙を持ち、トランクから三角板を取り出す。
このOKと描かれた紙はWRCでも使われており、これを貼っておくことで後続に情報を伝達する。
奏汰はその間も動かない。
動けない。
「奏汰くん!運転席にいたままだと危ないよ!降りて!」
やっと状況を飲み込み始める。
「あ…自分、車壊したんだ…」
「そんなことはいいから早く降りて!後続もすぐ来ちゃうから!」
そんなことを言っているとエンジン音が聞こえてきた。
それを聞いて奏汰もやっと体が動く。
真紀の介抱のもとマシンを降りてすぐ、後ろからデミオが通過していく。
そのデミオに真紀はサムズアップで無事を伝える。
そしてまた奏汰はその場に座り込んでしまう。
真紀は持っていたスマホで他のメンバーがいるサービスパークに連絡を取る。
「先生、ごめんなさい、何かが壊れて、走行が完全に不可能になりました」
『何が壊れたか、直接はわからない?』
「現状はわからないです。でも、フロントセクションから聞こえてきたので、おそらく駆動系だと思われます。」
『わかった。とりあえず全車の走行が終わったらレッカーが来るからそれまでそこで待機してて』
「了解です」
最後のマシンの通過後、確認用のメディカルカーが駆け抜けていく。
その時、そのうちの台が止まり、奏汰たちの容態を確認する。
真紀が2人は大丈夫と伝え、その後に来るレッカー車を待つ。
すると、JAFのようなレッカー車が来た。
それにヴィッツを連結させてサービスパークに向かう。




