第18話 お茶会(5)
昼休みだった。
王立学園の中央回廊。
授業の合間で、生徒たちが行き交う時間。
リリアナが廊下を歩いていたとき、背後から声がかかった。
「リリアナさん」
振り向く。
そこに立っていたのは、王太子の婚約者――サラだった。
栗毛色の髪は光を受けて、まるで絹糸のように柔らかく輝いている。
瞳は澄んだ青。晴れた空のような色だった。
凛とした立ち姿に、よく通る声。
彼女がいるだけで場が明るくなる――そう言われるのも無理はない。
初めて見たとき、リリアナは思った。
――聖女にそっくりだ。
七歳の頃。
王宮の名授けの式で、エリオスの隣に立っていた少女。
あのとき思った。
この人が、エリオスの隣に立つ人なのだと。
王太子と王太子妃。
この国を背負う二人。
その姿はあまりにも自然で、
自分とはまるで違う世界の人のようだった。
サラはにこりと笑う。
「ちょうどよかったの。
あなたに少し、お話があって」
リリアナは軽く礼を取る。
「私に、でしょうか」
「ええ」
サラは少し楽しそうに言った。
「母がね、
あなたに一度会ってみたいって言っているの」
リリアナが瞬く。
「エリオスにお願いして
誘ってもらおうと思ったんだけど、
なかなか話が遅いから」
くすりと笑う。
「先に声をかけちゃった」
アルヴェイン公爵家。
王の妹の家。
断れる立場ではない。
リリアナは静かに頷いた。
「……光栄です」
サラは満足そうにうなずく。
「よかった」
「それじゃあ、後日正式に招待状を送るわね」
軽く手を振る。
「お茶会はうちの屋敷だから。
気楽に来てちょうだい」
リリアナは礼を取る。
「ありがとうございます」
サラはやわらかく微笑んだ。
「お会いできるの、楽しみにしているわ」




