表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/90

第17話 研究棟(2)

ある日の放課後。


生徒会の仕事が終わり、

役員たちがそれぞれ帰り始めていた。


エリオスは

机の上の書類を整理していた。


視線を上げる。


窓の外。


学院の中庭を横切る

二つの姿が見えた。


ノア。


そして――

リリアナ。


二人は並んで歩いている。


研究棟の方向だった。


ここ数週間、

同じ光景を何度か見ている。


生徒会の後。

時には、

生徒会のない日も。


ノアの名義で

研究棟の閲覧申請が出ているのは

知っていた。


確認したのは

エリオス自身だからだ。


担当教員の承認も通っている。

正式な申請だ。


だから問題はない。


ただ――


二人の距離は

思っていたより近い。


並んで歩く足取りは自然で、

遠目にも

表情が柔らかく見える。


ノアは

もともと本をよく読む。


興味を持ったものには

深く潜る。


授業の範囲を超えて

資料を探し、

答えが出るまで

調べ続ける。


そういうところがある。


読書仲間だというのも

頷ける話だった。


二人とも

思考の運びが似ているのかもしれない。


話題が一つあれば

どこまでも掘り下げる。


探究心の強い者同士なら、

話が尽きないのも

不思議ではない。


エリオスは

そう結論づける。


窓の外で、

二人の影が重なった。


夕方の光の中で、

並んだ影がゆっくりと伸びる。


二つの影は

いつの間にか

境目が分からないほど混ざり、


一本の線のように

地面の上を滑っていった。


そのまま、

ゆっくり遠ざかる。


なぜか、

目で追っていた。


……そういうものか。


読書仲間というのは。


いったい、

何に夢中になっているのか。


歴史か。

王家史か。


それとも

その他の――


ふと、

そんな考えがよぎる。


その時。


生徒会室の扉の向こうから

声がした。


「会長」


顧問だった。


エリオスは

そちらへ顔を向ける。


「研究棟の資料について、

少し確認したいことがあります」


研究棟。


偶然、

同じ場所だ。


エリオスは

一瞬だけ

窓の外を見る。


中庭には

もう誰もいない。


「承知しました」


静かに立ち上がる。


ただの用事だ。


顧問に呼ばれたから

向かうだけ。


それ以上の意味はない。


……そう思いながら。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ