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第16話 生徒会(3)

昼食を終え、


リリアナは廊下を歩いていた。


昼休みの学院は、

まだゆったりとした空気に包まれている。


食堂から戻る学生たちが

廊下を行き交っていた。


その途中で、

ふと足が止まった。


生徒会室の前だった。


扉を見る。


先日の面接のことを思い出す。


――握手。


エリオスの手の感触が、

まだ指先に残っている。


大きく、

あたたかい手。


触れた瞬間、

はなしたくなくて。


必死に表情に出さないよう取り繕ったけど、

自分がどんな顔をしていたのか

分からない。


面接の受け答えも、

きちんと出来ていたのか

確信は持てなかった。


エリオス……。


胸の奥が、

きしむように揺れる。


あのときの感情が、

今にも溢れ出しそうになる。


いけない。


リリアナは小さく頭を振った。


余計なことを考えるべきではない。


見ないようにして

通り過ぎようとしたとき。


扉の隙間が

わずかに目に入った。


少しだけ、

開いている。


昼休みだ。


誰もいないはずだ。


そう思った瞬間、


中の様子が

ふと視界に入った。


そして――


止まった。


会長席に伏せたまま、


エリオスが眠っていた。


窓から差し込む昼の光が、

机を淡く照らしている。


書類の山。


その隙間から、

金色の髪がこぼれていた。


光を受けて、

柔らかく揺れている。


胸が、ぎゅっと縮む。


次の瞬間。


あの日の光景が、

まぶたの裏によみがえった。



窓辺の光が、

机の上に静かに広がっていた。


会長席に伏せたまま、

エリオスは眠っている。


書類の端から、

金色の髪がさらりとこぼれていた。


光をまとって、

静かに揺れている。


――触れたい。


衝動のように、

その思いが胸をよぎった。


気づけば、


そっと指先を伸ばしていた。


髪に触れる。


驚くほど滑らかで、

あたたかい。


指先が、

柔らかく沈む。


その瞬間。


まつげが、かすかに震えた。


ゆっくりと、

目が開く。


焦点が合わないまま、

こちらを見る。


そして――


ふっと、笑う。


溶けるように。


「……リリー?」


低く、

掠れた声。


甘い。


寝起きのままの、

無防備な声。


離れようとした瞬間。


手首を、

そっと掴まれた。


指が重なる。


引き寄せられて、

掌と掌がぴたりと触れ合う。


親指が、

逃がさないようにゆっくりと重なる。


「……行かないで」


息が混じる。


目は閉じたまま。


もう一度、

指がきゅっと絡む。


「もう少し……ここにいて」


そのまま、

手を離さないまま眠る。


体温が、

じわりと伝わる。


甘い重み。


あの温度。


あの指の重なり。


――覚えている。



リリアナは小さく息を吐いた。


……いけない。


もう一度、

エリオスを見る。


昼の光の中で、

静かに眠っている。


あのときと、

ほとんど同じ姿だった。


だが。


リリアナは視線を落とす。


触れられない。


あのときのようには。


指先が、

ほんの少しだけ動いた。


そっと扉を閉める。


パタン。


小さな音だけが

廊下に残った。




会長席のエリオスのまつげが、

わずかに揺れた。


扉の音に

薄く目を開ける。


ぼんやりとした視線が

扉の方へ向く。


誰かが

そこにいた気がした。


だが、


そこには

誰もいない。


エリオスは

しばらくそのまま扉を見ていた。


そしてまた、

ゆっくりと目を閉じた。

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