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第2話 白い装束の神殿(2)

——いた。

——いた。


視線の先。

人の列の、少し外れたところ。

石の縁に設えられた王族席。


金色の髪が、

光を受けて、きらりと揺れている。


一瞬、

息の仕方を忘れた。


——生きてる。


考えるより先に、

胸の奥が、きつく締めつけられた。


そこにいる。

確かに、そこにいる。

棺の中じゃない。

眠ってもいない。


ただ、その事実だけが、

胸の内側を満たして、

あふれそうになる。


嬉しい。

嬉しくて、

怖いくらい。


呼吸を忘れそうになるほど、

あふれそうな感情を、

リリーは必死に押し込めた。


泣きたかった。

本当は、今すぐにでも。


でも、涙は出なかった。


代わりに、

胸の奥が、焼けるみたいに熱くなる。

呼吸をするたび、

その熱が、

内側から、じわじわと広がっていく。


——ああ。

生きてる。


心の中で、

何度も、名前を呼ぶ。


エリオス。

エリオス。


声にしたら、

叫んでしまいそうで。

駆け寄って、

抱きついてしまいそうで。


それを、

歯を食いしばって、押さえ込んだ。


距離は、まだある。

人の列。

祈りの空気。

神殿という場所。


そして何より、

自分の足が、動かなかった。


ただ、見る。

光の中にいる、その姿を。


少し幼い輪郭。

それでも、間違いなく、エリオスだった。


ふいに、

こちらを向く気配がする。


視線が、合った——

ような気がした。


ほんの一瞬。

ほんの、刹那。


胸の奥が、ぎゅっと鳴る。


それだけで、

止まりかけていた呼吸が、戻る。


生きている。

ここにいる。

同じ場所に、存在している。


司祭の声が、

神殿に響く。


子どもたちの名が、

ひとつずつ、呼ばれていく。


世界は、

何事もなかったみたいに進んでいる。


でも、リリーの中では、

止まっていた時間が、

静かに、音を立てて動き出していた。


——生きててくれて、よかった。


声にはならない言葉が、

胸の奥に、

あたたかく残った。

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