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第4話 会わなかった日(5)

扉の外で、

慌ただしい声が重なる。


「お嬢様がいないわ」

「どこへ行ったの」

「さっきまで、ここに……」


メイドたちの声。


「今は探している場合じゃないでしょう」


継母の声が、

わずかに上ずる。


足音が止まる。


短い言葉が交わされる。


父の声。

継母の声。


それから。


落ち着いた、

抑えた大人の声。


この家の人間ではないと、

すぐに分かる声。


そして。


もう一つ。


年の近い、

まだ幼い声。


はっきりしていて、

ためらいがない。


何度も聞いた声。


「リリー」


そう呼ばれたときの、

あのままの響き。


胸の奥が、

強く揺れた。


——それでも。


自分がそばにいた未来の先で、

彼は、

倒れた。


呪いのような病に侵され、

少しずつ弱って、

最後に、

呼吸が止まった。


その光景だけが、

消えずに残っている。


顔を見れば、

きっと、

近づいてしまう。


同じ距離へ、

戻ってしまう。


そして、

その先で何が起きたのかを、

自分は知っている。


理由は分からない。


けれど。


自分が関わった未来の先で、

彼は死んだ。


その事実だけが、

胸の奥に残っている。


扉の向こうで、

声が重なる。


胸の奥が、

先に反応した。


——エリオス。


扉越しでも、

分かる。


あの人が、

すぐそこにいる。


その名に触れた瞬間。


思考より先に、

記憶が動いた。


今じゃない。

ここじゃない。

別の朝の空気が、

静かに重なってくる。


——あの日のことを。

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