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第4話 会わなかった日(1)

あんなに泣いたのに、

世界は、続いていた。


朝は、いつもどおり来た。

屋敷も、いつもどおりだった。


昨夜、遅く戻ってきても、

誰も気づかなかった。


声も、

視線も、

なかった。


それが、

この家の普通だった。


リリアナは、目を覚ましたまま、

しばらく動かなかった。


泣いたあとだからといって、

体が軽くなったわけでも、

楽になったわけでもない。


ただ、

静かだった。


胸の奥で、

絡み合っていたものが、

いったん、沈んでいる。


消えたわけじゃない。

なくなったわけでもない。


巻き戻る前の記憶。

思い出の中にしかいないエリオス。

サラの存在。

童話の挿絵。

あの家での自分の位置。


全部、

そのまま、そこにある。


——あのときも。


彼の呼吸が、止まった瞬間から、

何も、外に出せなかった。


心が、

追いつかなかった。


時間だけが進んで、

自分だけが、

そこに取り残されたみたいに。


あの日から、ずっと。


胸の奥のどこかで、

時が止まったまま、

生きてきた。


泣き尽くして、

ほかのものは、

すべて流れた。


残ったのは、

ひとつだけ。


生きている。

あの人が。


それだけが、

胸の奥で、動かずにある。


理由も、

答えも、

まだ何もない。


それでも、

それだけで、

朝は来ていた。


起き上がる。

足を床につける。


いつもと同じ冷たさ。

いつもと同じ屋敷。


何も変わらない。


それでも、

昨日までと、

同じではなかった。


静かに、

そう分かっていた。

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