セロの追憶⑵
やっぱり短いです。なんでかなー。
タイトル通りセロちゃんのお話です。
一瞬目が眩むような気がして、目の前に広がっていたのは古い思い出。
優しくて優しくて、凍りついてしまいそうな程に温かい記憶。
セロがヴィオラと旅に出る、その前のこと。
それ、がセロの目の前でもう一度、繰り広げられる。
「ねぇセロ」
思い出の中と何も変わらない声で、同じ姿で、淡い金髪の青年はその時のセロを見て、言った。
「思うんだけどさ、誰かが死んだところで大して世界なんて変わらないと思わない?」
その時のセロも、それを見ているセロも何も言わない。
「僕はね、世界を変えて見たいんだ」
今のセロからは青年の顔色は伺えない。
「ねえ笑わないで聞いてよ。こっちは本気なんだからさ。……死んでも世界が変わらないならどうすればいいと思う?」
青年はセロに尋ねた。
そのセロは、ちょっと俯いていた視線を上げる。
近いのに遠い距離をおいてセロは、確かにその時のセロと目があったのを感じた。
「いきてればいいんだよ」
少しの間をおいてセロは答えた。
澄み切って硝子玉のように見える感情の浮かばない真っ赤な目をひた、と青年に向けて。
彼は答えが返ってくると思ってなかったのか少し、驚いたようだった。
そして、宥めるようにセロの頭を撫でると
「そっか。そうだね。簡単だね。ありがとう、セロ」
そう言った。
「きづかないヴェルもヴェルだよ」
じとり、とセロはヴェルと呼んだ青年を見る。
ヴェル、とあの時は確かにそう呼んでたな、とセロは思い出して口元を綻ばせた。
今は もも と呼んでいるけれど。
どうして、そう呼び始めたんだか。
それが思い出せなかった。
「ねぇ、ヴェル。ヴェルはどうしてそんなことおもったの」
小さく問いかけた。
それに、少し困ったように、一瞬、頭をなぜていた手が止まった。
「何で、って言われると困るかな。何でだろうね。僕は。俺は、死にたくないから……かな」
「そう。でも、わたしは、はやくしにたいな」
淀んで、でも澄み切って硝子玉のような目。幽かにその中に暗い感情が揺れた。
「みんなみんな、どうせわすれていくよ」
そっと。遮断するように目を閉じたのはどちらのセロか。
目を逸らして、目を塞いで、何も見ないように、忘れるように。そうやって結局まだセロはずるずる生きている。
みっともなくしがみついて、当たり前のように情けなく。
「……そうだね。きっと僕も、セロのことをおいて行くのかな」
ヴェルは、寂しそうに言った。
「ねぇ、ヴェル。わたしねヴェルのことすき。いちばんすき。だいすき」
セロは脈絡なく言った。
驚いたようなヴェル。
セロは、その時できる一番の笑顔をヴェルに向けた。
だからね、と、セロは続ける。
「だから、いちばんさいごにはヴェルがわたしのこところしてね」
そうすれば、おいていかれないし、忘れることも、忘れることもないでしょう?と。
よく見ないとわからない程小さな笑み。
それに、ヴェルがなんて答えてたのかは、聞こえなくて。思い出すことも、できなかった。
けれどほんの少し笑っているような、そんな気がした。




