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独自の解釈です。実際は違うと思われますので
付喪神というのは大事に大事に使われたものに魂が宿り九十九を経て、付喪神になる。
一神教からすれば信じられないが、神の末席になるのだ。
「群青はそれに目をつけて、九十九を宿した道具を集めて、【完璧な人間】を作り出そうとしたんだ」
「……………それがお前とギンネズ。だったのか」
「正解」
話をしつつも手慰みのようにギンネズに触れるカラクレナイ。
ここで、ユゼルが居たのなら突っ込んだだろう。人前でいちゃつくなと。
「お前たちは助けてもらう代わりに使い魔になったんだろうけど、俺と銀鼠は違ってな。もともと大事にされていた場所から。まあ、いろいろな手段で連れて行かれた。しかも、大事に扱われて力をつける付喪神という存在の根本を理解していない輩でな。銀鼠は埃をかぶったまま放置されて、俺はいじられまわされた。まあ、いじられ続けている時点でまだからくり人形としての本質を見てもらえていたと判断すれば力を持ったままでいられたというのは不幸中の幸いだった」
からくり人形としての存在理由を保ちながら居られ続けてきた。
「そんな俺をあいつは【完璧な人間】と気に入って、手入れをし続けてきた。どこまでできるか。何が出来るか。……狂気を感じたよ」
そこで披露したのは演奏だった。
「埃被っていた銀鼠を手入れして、見よう見まねで演奏をした。……最初はつたなかったが、演奏するさまを見て『これこそ【完璧な人間】だ!!』とあいつは大喜びでな。それ以来、俺と演奏させる為だけに銀鼠を手入れし始めた。……あ、そう言えば、銀鼠の名前は元の持ち主が付けたものだ。俺の唐紅も元の主がくれてな。それはもう大事に……愛してくれたよ」
愛によって育つ付喪神。
群青に連れ攫われるような形であったが、元の主のおかげで自我もあり、付喪神として力を持っていた。
そんなモノ同士が愛を育むのもある意味必然。
愛されて生まれた存在が今度は互いの愛でゆっくり育っていき、付喪神として力を強めていく。
それを群青は【完璧な人間】に近付いたと大喜びだった。
「身勝手な思考は留まることなく加速して行って、それがある決定打を生み出した……」
「………人間の女性を伴侶にする」
魔術師たちの集会。群青は【完璧な人間】は人間の伴侶を持つべきだと騒いだ。
昨日のことだったが、当分忘れられないだろう。
「ああ。こいつとは一生理解し合うことはないな。と思ったよ。心を持ち、魂を得た存在であっても俺はからくり人形であって、人間ではないし。すでに思うモノも居る」
「……………」
「モノとして使われるようになったことで銀鼠も人の姿をとれるようになった。付喪神として力をつけてきたが、人間ではない。あいつの求める【完璧な人間】の域にも満たない銀鼠は俺という【完璧な人間】の邪魔をする存在として、使い慣れない武器を使って銀鼠に斬りかかったんだ」
それがこの傷だ。
琵琶に残る刀傷。
「刀の御仁も哀れだったな。刀としての自尊心も奪われて、放置されて、存在すら忘れられかけた矢先に使い慣れていない者が乱暴に扱ってな。付喪神になるはずだったのに、怪異になってしまって俺が喰らった。………最初に喰らったのがそれだった。刀の御仁は空寸前に自我を取り戻して感謝していたけど、それでもこっちとしては喰らってしまったことが申し訳なく思えたよ。あの御仁は俺が辿るかもしれなかった末路であり、本来なら刀の付喪神として持ち主を守ってきたはずだったのになと思えて」
居た堪れない。心境を表すにはその言葉が一番合っているのかもしれない。
「で、銀鼠を連れての愛の逃避行だ」
「途中のお前の事情は長かったが、経緯は分かった。で、逃避行とやらでここに来たわけか」
「そういうことだ。怪異……悪霊を喰らえば強くなれるし、魔術師同士の仲はあまり良くないからな。いい隠れ蓑なんだ。まあ、ユゼルに見つかったが」
ユゼルはこの町に詳しいし、猫たちから聞いているからなそれで知ったのだろう。
「――そうか」
聞きたいことは聞けた。だが、ここからどうすればいいのか。
冷静に考えたら主君に報告すべきことだと思うのだが、報告をしない方がいいと思ってしまったのだ。
主君は確かに面白がるだろう。自分以外の魔術師の汚点を喜ぶ方だ。だけど、その面白いと言う一時の快楽で彼らの生き方を歪めていいのか。
「ははっ」
「何がおかしい」
いきなり笑いだすなんて人を馬鹿にしているのかと文句を言ってやろうと睨むと。
「ユゼルの言ったとおりだな。――冷たいように見えて優しい。でも、一つのことしか見えない性格だから心配になる」
『リューちゃんは集中しちゃうと一つのことしか見えない性格だから心配になるな~』
後半部分がユゼルの言い方に似ていた。
「……お前らは俺と違って【完璧な人間】になるのを条件で命を助けてもらったんだっけ」
「それも、ユゼルから聞いたのか……?」
ユゼルは、大事なことだと思ったらやすやすと他のモノに言わない。そう言う奴だ。と、思っていたのだが……。
「無理に聞き出したから責めるなよ。俺には理解できないことだったからな」
カラクレナイの真意が分からないので怪訝そうな顔でそちらを見ると。
「なあ」
「なんだ?」
「完璧ってなんだ?」
いきなり投げかけられた質問。
「それは……」
説明しようと口を開く。だけど、言えなかった。
――分からなかったのだ。




