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彼らは歌う自分のために  作者: 高月水都


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 魔術師たちの集会の次の日は仕事を休みにしてもらった。何が起きるか分からないので念のためだったが、休みをもらって正解だったなと昨晩の無理難題を思い出して頭を抱える。


 そんな状況なのに台所にいる自分に気付いてセッテアールが鳥かごから出てくるとともに人間の姿に変化して、

「おはようデス」

「………………………おはよう」

 不機嫌な声が出てしまった。セッテアールに八つ当たりしてどうにもならないのに。


「リューステインくん。何悩んでいるデス。相談にのるデス」

 セッテアールが不機嫌な声に全く動じずに声を掛けてくる。


「なんでもない」

 セッテアールにばれるとは思っていなかったが、相談しても無駄だと思ったので、何でもないと伝えるが、セッテアールは頬を膨らませて、

「噓デス。リューステインくんは分かり易いデス。困っていることあるデス」

 相談にのりますデスと相変わらずの片言で告げてくる。


「………………………………………お前に相談しても解決できない」

「そんなことないデス。何でも言ってくださいデス」

 セッテアール(こいつ)に相談しても解決できないだろうと思うが、このまま傍にいられるのも鬱陶しいので、

「主君に人間と結婚して子供を作れと言われた」

「結婚。いいデス。………人間とデス?」

 意味が分からないと首を傾げている。


「人間の真似しているだけデス。子供は出来ないデス。………発情期のシーズンも違うデス」

「それを為せと言われたんだ。【完璧な人間】ならそれくらいできるだろうと」

「………………ごめんなさいデス。相談してほしいと言ったデスが、むりデス」

 自分では何とも出来ないと涙目になって告げてくる。

「……………………だから言っただろう」

  解決できるわけない。


「リューステインくんは、ユゼルくんの番なのに出来ないデス」

「…………………………………はっ⁉」

 今とんでもないことを聞いたような。


「セッテアール。自分とユゼルが番とは……」

「違うデスか? 生涯ともにしたい相手デスよ」

「あいつはただの腐れ縁。…………………………いや、家族のようなものだ」

 小犬の時から助けてくれた存在。おそらく、人間でいう家族のようなものだろう。


「番と家族違うデスか?」

「全然違うだろう。【完璧な人間】を目指し過ぎて本能を忘れたのか?」

 言っているうちに先日までの自分だったと自己嫌悪に陥るが、セッテアールには気付かれなかったようだ。


「そうだったんデス? てっきり、眷属になったのは人間同士になれるからその点の問題を解決するからだと思ったデス」

「………………………それ以前に同性だ」

 無理だろう。というか、なんでこんな初歩的なことをいまさら言わないといけないんだ。


「面倒だ」

 思わず言葉を漏らすと、ドアを開ける。


「どこ行くデス?」

「頭を冷やしてくる。このままだと八方塞がりにしかならないからな」

 眩しい日差しの中。頭が冷えるどころではなくのぼせそうな暑さを感じる。


 しばらく歩いているとふと、ユゼルの勤めている店が近いことを思い出す。確か、この時間はちょうど勤務時間で……。

「ユゼルは店を辞めていない……」

 会いに行ける。だけど、会いに行っていいのか。今の自分に会いに行く資格はあるのか。


 だけど……。

「会いたい」

 会いに行きたいか行きたくないかと自問すると出てくるのはシンプルにそれだけ。


 何を言えばいいのかどう接すればいいのか分からないけど、顔を見たい。様子を知りたい。そう思うともう止めれない。


「…………………行こう」

 もし目が合って、拒まれてもそれは仕方ないだろう。ただ会いたいのだ。会って、元気な顔を見れればそれで……。


「食事をするだけだと言えばいい。なんで来たんだと言われたら……」

 会いたい気持ちは正直に足早になっていく。


 走らない程度に自重して、ユゼルの店に辿り着く。


 扉に手を掛けて、さて入ろうと思ったら、タイミングよく中から扉が開けられる。

「おっと」

「あっ」

 中から出てきた客にぶつかりそうになり、慌てて避ける。出てきた方も気付いて避けてくる。


「すまない」

「いや……」

 それだけで終わるはずで、記憶にも残らないはずだった。


 だが、出てきた客の匂い。人間と異なる音を本質が【犬】であった自分は気付いた。


「お前……人間ではないな」

 まっすぐに伸びた赤い髪を揺らし、こちらを見てくる瞳はよく見ると精巧なガラス玉だが、常人では気付かないだろう。そのガラス玉の瞳を大きく見開き。


「へぇ。人間のふりを止めたのか」

 挑発ではない。裏表もない正直な感想だったのだろう。こちらの神経を逆なでと言うか無意識に人の傷を抉ってくるが。


「お前何者だ?」

「ちょっと、リューちゃん!! カラクレナイに絡まないのっ!!」

 入り口でもめ事があるのを察したのかユゼルが出てきて注意する。


 久しぶりに再会。久しぶりに聞いた声なのだが。

「まさか、最初の声がそれとはな……」

 あまりにも予想外過ぎる。

 カラクレナイと呼ばれた男は笑っているし。


(って、カラクレナイ……)

 昨日の魔術師の集会で出てきた。群青から逃げ出した【完璧な人間】のことでは……。


「その顔は、俺のことを聞いているみたいだな」

「ああ……」

 カラクレナイは全く動じていなかった。


「ユゼル。少し、こいつと話をしたくなった。連れて行くな」

 と勝手に決めて、連れ攫われたのにはかなり驚いたけど。






やっと、ここまで書けた。

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