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5.先輩A

 失恋をして、死にたくなった事があります。


 私は、学生時代に、部活の先輩と、

付き合った事があります。

でも、付き合って1年位して、振られました。

他に好きな人が、できたようです。

「お前の事を、嫌いになったわけじゃない。」

と言われました。

私の何が、いけなかったのだろう。

自問自答しても、答えは分かりません。

結局、自分は選ばれなかったんだ、と失望しました。

私は、何の価値もない人間なんだ、と感じました。

生きている意味がない、とさえ思いました。

自殺したくなりました。

従兄弟が亡くなった時、

「親より先に死んではいけない」と思ったはずなのに、

私は、いとも簡単に、死にたくなりました。

自殺。

高い所から、落ちるのは怖い。

首吊りは、汚い。

ガスは、周りに迷惑をかけるかも。

それなら、やはり、リストカット。


 でも、ある事が頭をよぎりました。

私は小さい頃、よく両親や祖母と、

時代劇を見ていました。

その中で、どうしても疑問に思ったことが、

あったのです。

血判状です。

誓いの文書に署名し、その誓いの強固さの表れとして、

親指の一部を切り、自らの血液を朱肉代わりにして、

捺印するというものです。

有名な所では、忠臣蔵の赤穂浪士が、やっていました。

ドラマの中では、侍が、刀の鍔の手前に親指をかけ、

刃を少し出すと、いとも簡単に指に傷をつけて、

次々に捺印していくのです。

「痛くないのかなあ。」という疑問がわいて、

確かめたくなりました。

確かに知らぬ間に、紙などで、

指に切り傷が出来てしょまう事は、よくある事です。

そこで私は、カミソリを用意して、

自分の親指に、切り傷をつけてみようとしました。

親指の腹に、カミソリの刃を当てて、引きました。

「いったあ!」

確かに、親指の皮は、切れていましたが、

血は出ていません。

あんなに痛かったのに、血が出ていないので、

びっくりしました。

もう一度、同じ所を切るしかありません。

ただ、さっきの痛みを知ったので、

1回目よりも、怖くなりました。

だから、恐る恐る切りました。

「いったあ!」

まだ、血は出ません。

3回切って、やっと少し血が出てきました。

その血を、絞るように押し出して、

やっと、血判ができました。

誰も痛いと言わないし、

痛みで顔をゆがめる人もいないあのドラマは、

嘘だと分かりました。


 失恋して、リストカットして、自殺したくなった時、

あの時の記憶が、よみがえってきたのです。

親指を、ちょっと切るだけでも、

あんなに痛かったのに、

自分の手首を切るなんて、とても無理だと思いました。

他の死に方にしたって、楽には死ねないと思いました。

だから、自殺はやめました。

でも、食欲が無くなって、1か月で7kg痩せました。

別人のようになった私を見て、心配した友達が、

毎日のように私を呼び出し、

一緒に食事をしてくれました。

そのおかげで、私は、少しずつ元気を取り戻しました。


 失恋した時は、

その事で頭がいっぱいになってしまって、

死にたくなりましたが、

今では、

あの時死なないで、本当に良かったと思います。

続きは、10月5日(月曜日)に投稿する予定です。

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