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2.ラッキー

 私は、もう二度と、ペットを飼いたくありません。


 両親が、情操教育にいいからと、

私は今までに、色々な生き物を飼わせてもらいました。

情操教育とは、子どもが、豊かな感性を持ち、

自分で考える力や、相手を思いやる心を育てる事、

だそうです。

だから、生き物を飼う事は、

命の重さや尊さを学びながら、

感受性や思いやりを育む、絶好の機会という訳です。

私が飼った生き物は、

メダカ・キンギョ・コイ・カメ・ジュウシマツ・

ヒヨコ・カブトムシ・スズムシ・ザリガニ・

カタツムリ・ネコ・イヌです。

その中で、金魚と鯉・

ひよこ・犬について、お話しします。


 生き物を飼うと、必ず死が訪れます。

そんな時は、

家の花壇の隅に埋めて、小石を並べました。

その子のお墓です。

最初のうちは、

そのお墓の前で、手を合わせるのですが、

そのうちに、忘れてしまって、

手も合わせなくなるし、

お墓もどこだったか分からなくなっていました。

ある日、飼っていた赤い可愛い金魚が、

亡くなりました。

私は、いつものように、庭の花壇の隅に、

埋めました。

そして、小石を置きました。

手を合わせて、金魚の冥福を祈りました。

ところが、2・3日して、

その金魚がどうなったのか、気になりだしました。

「いつも、飼っていたものが死んだら、

土に埋めているけど、

その後、どうなるんだろう。」と。

そこで、私は、金魚を埋めた所を掘り起こしました。

すると、金魚の体の周りに、

たくさんのウジ虫が、湧いていました。

私は、びっくりして、すぐに土を戻しました。

母に言うと、

「そうやって、土に戻っていくんだよ。」

と言われました。

「だから、前のお墓が、どこにあったか、

分からなくなっていたんだ。」と納得しました。

亡くなって、土に埋められた生き物は、

土になる事を知った日でした。

私はもう、決してお墓を掘り起こしたりしません。


 黒い鯉を庭の池で、飼っていました。

毎日餌をやって、半年に1回くらいは、

父と池の大掃除をしました。

2・3年飼っていたでしょうか、

体調は、40cm程になっていました。

とある日、鯉が体を横にして、弱っていました。

父は、塩をやればいいと、

鯉のえらの所に、塩を少しまきました。

ちょっと元気になったかと思った、鯉でしたが、

その後、すぐに死んでしまいました。

すると父は、

「この鯉を、食べよう。」

と、言い出したのです。

私は、信じられませんでした。

私達は、毎日魚や肉を食べています。

でも、この鯉は、長年可愛がってきた鯉なのです。

それを食べるなんて・・・。

私は、父が鯉を調理している間、

仏壇の前で、鯉の成仏を祈っていました。

父は、鯉のあらいと鯉こくを作りました。

私も、父に勧められて、少し食べてみましたが、

全くおいしくありません。

一口食べて、食べるのをやめました。

今にして思えば、「命を無駄にしない」という、

父の教えだったのかもしれません。

でも、それから私は、鯉料理が苦手になりました。


 私は、怪我をしたひよこを、

しばらく預かった事があります。

ひよこですから、ミルクを与える必要もなく、

難しいお世話はありません。

家に連れて帰って、箱の中で飼いました。

私が出かけようとした時、出口で振り返ると、

2m位離れた所にいたひよこは、私の方を見て、

今まさに、箱を乗り越えようとしていました。

私は、一人で出かけようと思っていたので、

あわてて、手のひらをひよこの方に向けて、

「ダメ!」

と言いました。

すると、ひよこは、私の言葉が分かったのか、

箱を乗り越えるのをやめました。

そして、つぶらな瞳で、じっと私の方を見るのです。

その瞳に負けた私は、

「いいよ。」

と手のひらを床の上に差し出しました。

ひよこは、嬉しそうに箱を乗り越えて、

私の方に、一直線に走ってきました。

そして、手のひらの上に、ピョンと乗りました。

私は、ひよこと一緒に、出かけました。

犬や猫とは、心が通じ合うと、思っていました。

まさか、ひよこ(鳥)にも、

人間の言葉や気持ちが分かるとは、

思ってもいませんでした。

ひよこと、気持ちが分かり合えた瞬間でした。


 ラッキーという犬を飼いました。

子犬で4か月の時、娘が友達からもらってきました。

お母さんは、柴犬でしたが、お父さんは不明です。

とっても元気な男の子で、

子ども達は喜んで、毎日世話をしていました。

走るのが速くて、食欲旺盛です。

町内放送の音楽が流れると、一緒に歌っていました。

水が大嫌いで、体を洗う時は、暴れて大変でした。

青年になったラッキーは、山の頂上の広場を、

走り回るのが好きでした。

必死で走っても、とても追いつけません。

でも、思いっきり走った後は、

必ず戻ってきてくれました。

動物病院では、体温をお尻で測ることを嫌がり、

私の手を、思わず噛んだ事もありました。

私の手からは、血が出ました。

その時、ラッキーは、

「そんなつもりじゃなかった。ごめんなさい。」

とでも言っているように、私を見つめていました。

その顔が、なんとも愛おしかったです。

子ども達も成長し、私が散歩に行く機会が増えました。

以前は、グイグイ引っ張っていたのに、

私に着いて歩くようになっていました。

我が家に来て14年、次第に、老いがラッキーの体を、

覆うようになりました。

足がよろけて、目も悪くなり、認知症なのでは、

と思うような行動も出始めました。

紙おむつもはめました。

体を洗っても、昔のように暴れません。

そのうちに、ラッキーは、全く動かなくなりました。

水も飲めません。

死が近づいている事が、分かりました。

ある日の朝、ラッキーは、静かに息を引き取りました。

悲しくて、ただ悲しくて、

家族でラッキーを見送りました。

精一杯生きた14年でした。


 ラッキーと過ごした14年が、あまりにも重く、

亡くなった悲しみが、あまりにも大きくて、

私は、二度と生き物を飼わないと、決めました。





続きは、9月14日(月曜日)に投稿する予定です。

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新作読み始めました! 執筆活動お疲れ様です。続き楽しみにしてます!
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