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男を狂わせる魅了の祝福を持つ令嬢は、野獣と恐れられる辺境伯様と三か月の仮婚約をしたら溺愛されました  作者: 紳士テニス


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改稿中☆46 王家への婚約報告

※現在、改稿作業を進めています。


第1話から順番に、改稿版へ差し替えております。

差し替えが完了した話から、こちらの前書きは外していく予定です。

物語の大筋に変更はありませんが、細かな描写や内容については、改稿前と改稿後で異なる部分があります。

 王宮の謁見の間は、静寂と威厳に満ちていた。


 高い天井から吊るされたシャンデリアの光が、磨き上げられた大理石の床へ落ちている。壁際には近衛兵が整然と控えていた。


 その中央で、三人が礼を取っていた。ガレス、リリアンナ、そしてロイド。


 正面の玉座には国王が座し、その隣には王妃が座している。少し下がった位置には、第一王子クロードの姿もあった。


 ヴァルグレイブ家と王家の付き合いは古い。クロードとガレスは幼馴染であり、国王も少年だった頃からガレスを知っている。


 だが今日は、私的な面会ではない。有力貴族の正式な婚約を王家へ報告する場である。


「皆、顔を上げよ」


 国王の声が広間に響いた。


「ガレス、待っていたぞ。そなたの口から話を聞かせてもらおう」

「はっ」


 ガレスは力強く応じ、背筋を伸ばす。鋭い瞳には、確かな覚悟が宿っていた。


「陛下に申し上げます。ヴァルグレイブ辺境伯家当主ガレス・ヴァルグレイブ。このたび、ルベルハルト家がご息女リリアンナ・ルベルハルト嬢との婚約を願い、参上いたしました。何卒、王家のご承認を賜りたく、謹んでお願い申し上げます」


 ガレスは深くこうべを垂れた。


「ルベルハルト伯爵」

「はい、陛下。娘リリアンナとヴァルグレイブ辺境伯閣下との婚約につきまして、我が家に異存はございません。このような光栄な縁を結べますことを、当主として心より嬉しく存じます」

「うむ」


 国王は満足そうに頷いた。


「北の守りを担うヴァルグレイブ家と、代々王家に仕えてきたルベルハルト家が縁を結ぶことは、王国にとっても大きな意味を持つ。北方の防衛、外交、交易。ヴァルグレイブ家が担ってきたものは重い。そのヴァルグレイブ家が、王都と宮廷に通じたルベルハルト家と縁を結ぶ。……これを機に、辺境と王都の結びつきも、より強いものとなろう」


 これは二人だけではなく、国王の目から見ても王国にとって価値のある婚姻だった。


 国王は二人へ視線を向け、厳かに告げる。


「王家はガレス・ヴァルグレイブと、リリアンナ・ルベルハルトの婚約を、正式に認める」


 仮婚約から始まった二人の関係が、この瞬間、正式な婚約として王家に認められた。


 承認が告げられると、張り詰めていた空気がふっと和らいだ。


 国王の視線がリリアンナへ向く。


「リリアンナ。そなたのことはクロードからも聞いている。ガレスを、よく支えてやってくれ」


 それは王としてだけではなく、幼い頃からガレスを知る者としての親しみも込められた言葉だった。


 リリアンナは動じることなく、美しく一礼した。


「身に余るお言葉、ありがたく存じます。誠心誠意、ガレス様をお支えしてまいります」


 可憐でありながら芯の通った返答に、国王は目を細めた。王妃もそれを見て、柔らかな微笑みを浮かべて口を開く。


「おめでとう、リリアンナ。あなたがガレスの隣に立ってくださることを、わたくしも心から嬉しく思いますわ。これからは二人で、時々王宮にも顔を見せてちょうだいね」

「温かなお言葉、ありがとうございます、王妃陛下」




 ◇◇◇




「さて、承認は済んだ。だが、もう一つ決めておくことがある」


 和やかな空気が一段落すると、国王は表情を少し引き締め、次の本題へと切り出した。


「ヴァルグレイブ家は、北の守りを担う王国の要だ。その当主が、代々王家に仕えてきたルベルハルト家の令嬢と婚約するのだ。相応の形で、大々的に発表したいところだな」


 そう言って、国王はクロードへ目を向ける。その視線だけで意図を汲んだクロードが一歩前へ出た。


「ちょうど二週間後に、王家主催の舞踏会を予定しています。招待状も今まさに各家へお届けするところでした。そこで二人の婚約を発表してはいかがでしょう」


 ガレスとリリアンナは顔を見合わせた。


 王家が主催する舞踏会。王都の主だった貴族が集まる場で、王家の承認のもと公表されるのであれば、発表の場としてこれ以上のものはない。


「異存ございません。王家のご配慮に感謝いたします」


 ガレスが即答し、ロイドとリリアンナも頭を下げた。


「よかろう。では、二週間後の舞踏会にて、両家の婚約を発表する」


 国王の決定により、婚約発表の日取りが二週間後に決まった。


 話がまとまったところで、クロードがさらに言い添えた。


「ああ、それから。ファーストダンスは、お二人にお願いするよ」

「……」


 ガレスの動きがぴたりと止まった。戦場でも、魔物を前にしても、動じない男の表情がわずかに引きつっていた。


 ガレスは女性とダンスを踊った経験がない。しかも、王都の主だった貴族が集まる中で二人だけで踊るのだ。


 とはいえ、断るという選択肢もなかった。リリアンナとも、ダンスの練習をしておくと約束していた。


「……分かりました」


 クロードはガレスの反応からおおよその事情を察しつつも、この場で弄るような真似はしなかった。


 こうしてファーストダンスも決まり、謁見は終わった。




 ◇◇◇




 王宮を出たガレスとリリアンナは、同じ馬車へと乗り込み、ヴァルグレイブ邸への帰路についた。


 車内には、王家から正式に婚約を認められた安堵感と、二週間後の大舞台に向けた高揚感が満ちていた。


 しかし、ガレスは腕を組んだまま難しい顔をしている。


「ガレス様。もしかしてダンスのことを考えていらっしゃいますか」

「……分かりますか」

「ええ」


 リリアンナはくすりと笑う。


「申し訳ありません。踊りたくないわけではないのです。ただ……人前で貴女に恥をかかせることだけは避けたいと思いまして」


 いかにもガレスらしい心配だった。


「でしたら、舞踏会まで一緒に練習いたしましょう」

「一緒に、ですか」

「ええ。わたくしもずいぶん久しぶりですもの。腕も治りましたし、練習からガレス様とご一緒できるのが楽しみですわ」


 リリアンナが楽しそうに笑いかけると、ガレスの表情も自然と和らいだ。


「では、お願いいたします」

「はい。一緒に頑張りましょう」


 そんな話をしているうちに、馬車はヴァルグレイブ邸へ到着した。門をくぐり、玄関前へ近づいたところで、窓の外を見ていたリリアンナが首を傾げた。


「あら?」


 玄関前には、すでに一台の馬車が停まっていた。見覚えのある、洒落た造りの馬車だった。


「あれは……」


 ガレスも身を乗り出す。二人は、ほとんど同時に思い当たった。


「「メゾン・セシリア?」」


 二人の声が重なった。

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