私は王になろう
しばらくの静寂。
「…………なぜ、私を選んだ」
ラウタは、ようやくそれだけを口にした。
「私は、とても王に向いていると思わないが」
「うーん、そうね……」
人差し指を口元にあて、レティシアは思考した。
「……私って人間が嫌いなの。だから、王様に頼まれた
時、やってられるかって感じだったわ」
「だが、現に選んだ」
「だって!自分の選んだ候補が王になったら、その魔女の願いを叶えられる範囲で一つ叶えるって、王様は言ったのよ?」
指を組み、キラキラとした目でレティシアは訴えた。
「報酬は魅力的。でも、人間の言うことを聞くのは癪だと思った。だから、王に相応しくないやつを王にしたらいいんじゃないかって考えたの!」
「……悪趣味だな」
「でしょ?で、探している時にあんたを見つけた。話してわかった。こいつだって!あ、褒めてるのよ?……命令がなければ動けない兵士が、誰かに命令する王になるってすごーく素敵な皮肉じゃない?」
ニンマリと口元を緩めながら、レティシアは言った。
「それは、私を侮辱しているように聞こえるが」
「あら?ごめんなさい。そう聞こえたかしら?」
「……そうとしか、聞こえないと思うが」
「ふふ、冗談よ!そうね、半分はバカにしているわ。でも、残り半分は期待よ」
「……期待?」
「えぇ、だって上手くいったら、あんたは王様になるのよ?命令が絶対のあんたが、王になって命令する側になるなんて……面白そうじゃない」
「面白いで王になれるのか?」
「なれるかもしれないわ。あんたが、命令を守ってくれるなら、ね?」
「…………」
「どうする?この命令を破って、次の命令が来るまでまたあの荒野で待つ?……やっても、死ぬだけよ?それより、私の命令を守って生きている方が、死ぬよりはマシだと思わない?」
甘い誘惑だ。
手を握り返せば、たちまち食われてしまいそうな甘言だ。
ラウタは目を閉じ、しばらく考えた。
そして、ゆっくりと目を開けた。
「……死ぬことは、命令違反になる。これは、私の優先する命令の一つだ。それを破りたくない」
「そう……よっぽど大事な命令なのね」
「……あぁ。その命令を守るためには、お前の命令が必要だと判断した。だから、決めた。私は、王になろう」
レティシアは一瞬だけ目を丸くした。
しかし、すぐに満足そうに笑う。
「自分で決められて偉いわ、ラウタ。改めて自己紹介しましょ。私は『棺の魔女』レティシア。あんたを王候補に選んだ魔女よ」
レティシアは白い指先をラウタに向けた。
「……私はカリティア……いや、違うな。今は魔女レティシアに選ばれた王候補の一人、ラウタだ」
ラウタはそう言うと、レティシアの手を取った。
「じゃあ、命令よラウタ。王になりなさい」
「……その命令、承った」




