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選択の意味

「……そろそろ話してくれ」

 

スープを飲み終わると、ラウタはそう呟いた。

 

「『王になれ』とは、どういう命令なのかを」

 

真っ直ぐ、レティシアを見据えた。

 

「あら、ついにその話をしちゃう?」

 

口元に手を添え、ニヤニヤとレティシアは笑う。

 

「そうねー、なにから話そうかしら。今、この国の貴族たちは大混乱だってことは知ってる?」

「他国の事情は残念ながら」

「そう。まぁ、いいわ。とにかく、大混乱。なぜかって?王様が病気で寝込んでしまったの」

「王が?」

「そう。お医者様によると、もう長くないんですって」

「ならば、次の王が後を継ぐはずだろう」

「ふふ、い・た・ら、だけどね」

「……どういうことだ」

 

ラウタの問いかけにも、レティシアは相も変わらずニヤニヤと笑っていた。

 

「王様が倒れる前のことよ。第一王子のマタン様が病で亡くなったの。マタン様には子どもがいなかったから、継承権は第二王子のニュイ様に移ったわ。で、ここからが本題!」

 

人差し指を立て、レティシアはくすりと笑った。

 

「そのニュイ様が、毒殺されたの」

「……間者の仕業か」

「さぁね。でも、みーんな予想はついてるわ。王様にはね、弟がいるの。ルナリオ様。婿養子でハミルトン家に入って、継承権を放棄した方よ。その方がやったんじゃないかって噂」

「……継承権がないのなら、なぜ容疑がかかる」

「ふふふ、ルナリオ様にはね、一人息子のオーブ様がいるのよ」

「その方に、継承権はあるのか」

「あるわけないじゃない!ルナリオ様は継承権を放棄しているもの……でもね?面白いことに血は残ってるの」

「……血?」

「えぇ。王子がいなくなれば、血筋が近い子を王家に戻そうとする貴族が出てくるわ。だから、ルナリオ様は、せめて自分の子どもを王の座に就けようとして、残ったニュイ様を殺したんじゃないか、って言われてるの」 

「……憶測だろう」

「そうね、憶測よ。でも、残念なことにね?オーブ様はニュイ様の派閥に殺されたの。そして、そのことにショックを受けたルナリオ様は、自死をしたらしいわ」

「…………」

「ふふふ!救いようがないでしょ、人間って!」

 

真顔で黙っているラウタと対照的に、レティシアは楽しそうだ。

 

「息子二人、甥、弟を立て続けに亡くした王様は、心労で倒れて、そのまま床に伏してしまったのよ」

「……では、次の王は」

「空席よ。王冠だけあって、被る人が誰もいない状態。……で、よ?そんな病床の王様にね、神託が降りてきたらしいの」

「神託?」

「そう、創造神デウス・マキナからの神託。『七人の魔女を集めよ。その魔女たちに、それぞれ王に相応しい者を一人ずつ選ばせよ。その中に、次の王がいる』」

「……なんだ、それは」

「意味わかんないわよね?私もそう思ったから安心しなさい!で、面倒なことにその魔女の一人に、私は選ばれたの。そして、王様はね、使者を通じて私にこう告げたわ。『性別も年齢も国籍も問わない。お前が王に相応しいと思った者を選べ』って」

「…………」

 

絶句。

この一言に尽きる。

思わずラウタは、言葉を失った。

 

「……馬鹿げてる」

「ん?」

「性別はともかく……年齢も、国籍も問わないだと?王は乱心したのか」

「残念ながら正気らしいわよ。それほど追い詰められているのね。だから、面倒。でも、神託を通して出した結論よ」

「しかし、貴族たちが止めるだろ」

「そりゃ、止めたでしょうね。特に王家の血をすこーしだけ継いでる貴族は」

「では、その貴族が継げば……」

「王様はね、こうも言ってたわ。『私はもう、血の繋がりで苦しみたくない』って」

「……どういう意味だ?」

「そのまんまよ。血の繋がりが原因で争って、みーんな死んでしまった。だから、もう血で王を選びたくないんでしょ」

「暴論だな」

「えぇ、貴族たちはカンカンで大変そうよ?」

「……では、王になれと言うのは」

「ふふ、ようやくわかった?つまり、あんたは王候補に選ばれたってことよ!」

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