表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強騎士、昭和に帰還。理不尽をやり返す話  作者: 水戸直樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/37

第24話 平成元年、天才の早業

 五時間目、自習時間の教室。


 琴子は真っ赤な顔のまま、ノートを振り回して叩いてくる。


「このっ!バカ慎太ッ!」


 そのすべてを悠々かわす俺。


「当たらなければどうということはない」

 低い声で某アニメキャラの声真似をしてみせる。


「くうっ……!この、ムカつくっ!なんで当たらないの!」


「坊やだからさ」


「なによっ!私のドキドキを返せっ!」


 琴子、渾身の振り上げ。


(仕方ない、一発くらってやるか。……ん、見える!)


「間違いない、先生だ!奴だ!奴が来たんだ!」


 大声で皆に告げる。


 琴子は振り上げていたノートを慌てて引っ込めた。


 それぞれ友人同士で集まっていた女子たちも、うろついていた男子たちも、一斉に自分の席へ戻る。


 直後、教室の扉が開いた。


 担任・大山滝子だ。その後ろに佐々木真佐奈がいる。


 大山は表情を変えないまま、口を開いた。


「みんな、佐々木さんに、何があったか、なんで呼ばれたか、聞かないように。佐々木さんには先生から『みんなに言わないように』約束してあるから」


 真佐奈に席へ戻るよう促すと、一人の女子児童を手招きする。

 

「次は、下館亜里さん。……先生と来て」


「は、はい」


 昼休みの一悶着から、ずっと静かになっていた亜里が立ち上がると、そのまま大山と出ていった。


 足音が遠くなると、再び、教室が騒がしくなる。


 真佐奈に声をかける者はいない。


 琴子も彼女を一瞥すると、ノートを広げて絵を描き始めた。


 こいつ、漢字プリント諦めやがった。


 チラッと見ると、キッと睨みつけてきた。


「……慎太、あんた、覚えてなさいよ」


 どうやら、恨みを買ったらしい。


 ふん、こいつに何ができるというのだ。


 放っておくとする。


 戻ってきた真佐奈の様子を、目の端で確認しておく。


 彼女の前の席の女子が振り返り、慰めるような声をかける。


「真佐奈、大丈夫?」


「……うん、ありがとう」


 一瞬、目を上げて小さく頷くと、また漢字プリントへ視線を落とした。


 だいぶ、疲れたようだな。


 一足早く漢字プリントを終えた俺は、他教科の予習を進める。


 しばらくすると、琴子が席を立つ。


 ノートを手に真佐奈の席へ歩いて行った。




 佐々木真佐奈は疲れていた。


 実習生・矢田沢による連れ出し。

 慎太の機転による救出。

 その後、下館亜里との一悶着。

 担任・大山滝子からの一対一での聞き取り調査。


 慎太に助けられたことはボカしたが、一通り話してきた。


 教室に戻るのはなんだか気恥ずかしかった。実際に戻ってみると、担任が注意したこともあるが、みんな、気を遣って話しかけてこない。




 漢字プリントを無心で進める。


 こういうとき、何かに集中していた方がいいことを、私は知っている。


 突然、机の端に一冊のノートが置かれた。


「……真佐奈。これ、見て」


 覗き込んできた亀井琴子の顔は、ニヤリと歪んでいる。


 促されるまま、開かれたノートへ視線を落とした途端、私は吹き出した。


 そこに描かれていたのは、劇画調に描かれた――慎太。

 

 琴子が振り上げたノートの連打をくらい、「ぎゃあああ!」とボコボコにされる彼の姿。

 いつもぶっきらぼうで冷めている慎太の、見る影もないやられっぷり。


 さらに次のコマをめくると、頭に大きなたんこぶを作った慎太が、涙を流しながら地面に額を擦りつけていた。


『琴子さま、すみま千円!』

『おーほほほほほ! この亀井琴子、慎太の思い通りにだけはさせなくてよ!』


「あははは! なにこれ、慎太くんそっくり!」

「でしょ? 調子に乗るから天罰を下してあげたの。……ふん、現実のあいつも素直に謝ればいいのに」

 

 笑わせようとしてくれている彼女の優しさが、おかしくてたまらない。


「あははは! ありがと、琴子ちゃん。元気出た」

「へへっ、よかった。慎太にもやり返せて気分爽快だわ」

 

 ――少し離れた席の慎太が、怪訝そうな顔をして首を捻っている。

 私は琴子と顔を見合わせ、ぷぷっと吹き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ