表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者は身バレしても平穏を求める  作者: 天原 重音
坂月菊理編 異世界帰りの転生者は平穏を望む

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/14

休校初日 ①

 休校初日となる翌朝。

 日課のジョギングを終えてから、無人の厨房で自分だけの朝食を作る。

 朝食と言っても、ジョギングを終えたあとなので量は多め作る。そしてメニューはサンドイッチだ。スクランブルエッグや、厚焼き玉子などのパンに挟むものを作って行く。スープはコンソメキューブを使い、手抜きのオニオンスープを作ろう。フレンチトーストも作ろうかと思ったけど、既に作った量が多いので止めた。

 オニオンスープを作っている途中、サバゲー会の面々が厨房にやって来た。

 彼らは、自分と大熊先生がカレーもクリームシチューも食べられなかった事を元生徒会長から聞かされて、大層驚いたそうだ。

「寺田から、空になった大鍋を見る坂月を嗤っていた女子がいたと聞いたんだが、事実か?」

 寺田と言うのは、男子柔道部元部長で元生徒会長を務めていた男子生徒の事だ。

「事実ですよ。五大不良部の元部長五人に睨まれるなり逃げましたが」

 自分の回答を聞いたサバゲー会の面々は一斉にため息を零した。

「マジかよ」「一番飯食っていたのって、大熊先生が厨房から追い出した女子共だよな?」「そうだぜ。普段は『体重が、カロリーが』って、騒いでいるくせによぉ」「それは女の先生もだぜ」「マジでうるせぇ」「本当だよな」『うんうん』

 サバゲー会の三年生は言いたい放題言っている。一年生は力強く頷いた。

 これは彼らの本音だ。自分が意見する事ではない。だから、偶然にも食堂の出入り口で、サバゲー会の面々の本音を聞いてしまった話題の女子生徒達が怒りで顔を真っ赤にして去ったとしても、自分は関与しない。

 不幸と言うか、タイミングが悪かっただけである。

 オニオンスープが出来上がり朝食が完成した。ロールパンを皿に山盛りで載せて、サバゲー会の面々に一言言ってから、皿とバターを手に自分は厨房から出た。

 カウンターには自分が作った朝食が並んでいる。それらを全て近くのテーブルの上に移動させて、席に着いて食べる。食パンもあったけど、カットされていないタイプだったから止めた。サバゲー会の面々が食パンを分厚くカットして使っているので、手を出さなくて正解だったかもしれない。

 スクランブルエッグ、厚焼き玉子、チーズでカットしたハムを挟んで焼いたもの、カリカリのベーコンとマッシュポテトを混ぜたものの四種類だ。厚焼き玉子は平皿に二枚(ロールパンに挟む事を想定してカット済み)が乗っており、チーズとハムを焼いたものも似たような平皿に載せている。お椀ぐらいの大きさと深さの二つの器には、スクランブルエッグとベーコンとマッシュポテトが盛られている。

 これらと、ロールパンとオニオンスープが今日の自分の朝食だ。

 カトラリーを用意して、テーブルの上にオニオンスープの鍋を載せてスープボウルに取り分けたら朝食の開始だ。

 オニオンスープを一口飲み、ロールパンを縦半分に割りバターを塗って片方を食べる。もう片方にはスクランブルエッグを乗せて食べる。

 暫くの間、無言で朝食を食べる。

 サバゲー会は協力し合って朝食を作り終えると、自分がいる席から少し離れたところで食べている。聞こえて来る会話の内容は休校期間中の活動についてだ。

 所属外の部活の事なので、気にしても仕方が無い。

 無言で朝食を食べ進める。

 


 厚焼き玉子以外の具材を食べ終えた頃。

 騒々しい足音が聞こえて来た。

 サバゲー会の面々は食事を中止して『何事?』と声を上げた。

 自分は嫌な予感がするので、フォークで厚焼き玉子を食べ進めた。食堂内の時計を見ると六時半過ぎだった。


「遅刻、遅刻す――る? って、あれ?」

 

 慌てて食堂にやって来たのは宇賀神さんだった。閑散とした食堂を見て、宇賀神さんは首を傾げた。

「え? え!? どうなっているの!?」

「大熊先生から通知を受けている筈だ。自炊しない生徒の朝食は八時半以降だぞ」

「ああっ!? 忘れてた!!」

 サバゲー会から指摘を受けて、宇賀神さんは大袈裟に驚いた。

 驚く宇賀神さんを無視して、サバゲー会は食事を再開する。自分は無視して食べ進める。

「うぅ~、お腹が空いているのに……。あ、坂月さん」

 宇賀神さんの視線が自分に向いた。言う言葉は一つだけだ。

「断る」

「まだ何も言っていないよ!!」

「昨日大熊先生から『他人の分は作らなくても良い』って許可を貰ったの。それから大熊先生は『幼稚園児じゃないから、我慢出来る』って言っていたよ」

「嘘ぉ」

「厨房のパンを食べて部屋に戻れば?」

 厨房には幾つかの食パンやロールパンが存在する。イタリアのパンと言えばフォカッチャを思い浮かべるが、毎日生地から作っているのか、在庫が無かった。

 宇賀神さんは肩を落として厨房へ向かった。その途中、チラチラと自分を見る事も忘れない。

 ……本当に、見た目だけの残念美少女だな。

 時折、厨房から『パンどこぉ~』と宇賀神さんの情けない声が聞こえて来る。残念具合が酷過ぎる。

 厚焼き玉子を食べ切ったが、オニオンスープとロールパンが三つ残ってしまった。縦半分に割ってバターを塗るか、オニオンスープの底に沈んでいるバターで炒めた玉ねぎを載せて食べる。

 最後のロールパンを口に入れた直後になって、宇賀神さんは厨房から出て来た。

「あ」

 自分がロールパンを食べ終えたところを見て、宇賀神さんは絶望に満ちた顔をした。

 実を言うと、ロールパンとバターだけはカウンターに常備されている。食べ足りない人向けのサービスだ。

 それに気づかない宇賀神さんがこちらに来ると煩いので、ロールパンが置かれている場所を指差した。自分の行動を見て、宇賀神さんは疑問顔になった。けれど、自分が指差した方向を見て満面の笑みを浮かべた。

 幼子のように喜び、自分に礼を言った宇賀神さんはロールパンの許へ駆け寄った。ロールパンをテーブルの上に運ばず、その場で何個か食べ始める。

「本当に、幼稚園児みたいだな」『うん』

 サバゲー会の誰かの発言が食堂に響いた。けれど、宇賀神さんには聞こえていないのか、ロールパンを食べる事に夢中になっている。

 自分は宇賀神さんみたいな生徒が来ない内にオニオンスープを飲み干して、使用した食器類を片付けた。

 昨日の今日だし、既に一部の女子生徒が食堂に来て去る奇行を目撃したのだ。

 大熊先生を探して、外出許可証を貰い、早々に校外へ行こう。



 そして、自分の予想は正しかった。

 職員室にいた大熊先生を捕まえて外出許可証を貰い、学生寮に戻った頃になって、食堂では大騒動が発生していた。

 宇賀神さんみたいに忘れていた生徒がこんなにいたとは、吃驚だよ。

 自分は彼らに見つからないように個室に戻り、私服に着替えて、外出した。



 少し足を延ばして、たまに利用する大型ショッピングモールに向かった。

 近場のスーパーで取り扱っている輸入食品は食材と調味料しかない。レオーネ学校の近隣で輸入食品(主にお菓子や飲料の他にちょっと珍しい調味料)を取り扱っているお店はここしかないのだ。

 ちょっと買い過ぎたが、ここで買い物を済ませ、昼食はフードコートで取った。大熊先生から指定された時刻の一時間前にレオーネ学校に戻った。

 寮の個室に荷物を置き、制服に着替えて大熊先生が指定した時刻よりも少し前に第一武道場に到着するように移動した。



 十五時(午後三時)十分前。自分は第一武道場の前に到着した。

 レオーネ学校の武道場は体育館並みの大きさを誇る建物だ。

 こんな大きな建物を十棟も保有しているところを見ると『流石は私立』と思ってしまう。公立の高校で体育館並みの大きさの建物十棟以上の管理と維持は難しい。

 地方に行けば、公立の学校で複数の校庭を持つ学校は存在する。校庭が複数存在しても、基本的に使うのは校舎前のものだけになる。マジで複数存在しても意味が無いわ。

 授業参観や体育祭で、保護者を招いた際の臨時駐車場以外に使い道が少ない。

 サッカー部と野球部と陸上部が同じに日に部活動を行っても、場所取りで揉めないのは良い事かもしれない。

 異世界に召喚されるまでに通っていた公立の中学校がまさにそうだった。

 校舎を挟むように二つの校庭が存在した。第二校庭は第一校庭の約二倍近い広さを保有していたが、体育の授業でサッカーを行う時以外に入った覚えがない。他の利用方法は基本的に駐車場だった。

 中学校の在校生は三学年三クラスで三百人ちょいだった。在校生の人数と学校の施設の規模が合っていない。

 かつての母校近隣の私立中学校は基本的に高等部とセットだった。中高一貫校だからか、学校の敷地は広大だいだし、建物の数も多かった。

 そんな事を思い出しながら、自分は第一武道場に入った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ