73 両陛下におかれましては
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「お待たせしてしまい申し訳ございません。両陛下にご挨拶申し上げます」
早朝、まだ起きている人の方が少ないであろう時間に皇城を訪れたわたし達は、到着するなり外で待っていてくださった皇族の皆様へ頭を下げる。直接お声掛けしたのは旦那様だったけれど、それよりも皆様はわたしの後に降りてきた『彼』に驚いたようだった。
「ウェルロード帝国皇帝陛下並びに皇后陛下におかれましては、ご機嫌麗しゅうございます」
使用人の身でありながら発言の許可を待たずに挨拶をしたのは、本来それが許される立場の人物で。いつも通りの男装ではあるけれど、王族同士交流もあったのだから彼の正体など一目で分かったことでしょう。わたしだって、たとえ名乗られなくても一度知ってしまえば気付ける自信がある。
何せルヴィって、一度見たら必ず記憶のどこかには残るであろう美貌ですからね。普段あんな感じだけどお顔は美しいんですよ。髪色もすごく特徴的だし。
「あ、ああ……貴殿も。近年名を聞かなかったゆえ、心配していたのだが元気そうで何よりだ。フェルリアに滞在しておられたのか」
陛下、動揺が滲んでしまっていますよ。王女としての姿でない以上、普通の使用人として扱おうとしているのは分かりますが、ただの使用人に対する言葉ではないと思います……
「いえ、正しくはフェルリア公爵夫人の護衛としてお仕えしております。此度の国交に同行させていただくのも同じ理由となりますが、アルランタの王城内では本来の姿で顔を見せる予定ですので、その時に改めてご挨拶に伺いたく」
「なるほどな……承知した、楽しみにしている」
「ありがとう存じます」
ちなみに何も知らないレリック公爵はひとりで戸惑っている様子。皇帝が丁重に扱うような人物のはずだけど、わたしの護衛と言っているのはなぜ……という感じでしょうね。わたしが同じ立場でもそうなると思うのでご安心くださいな。
「それでは早速ですが、アルランタ王国へ出発いたしましょう」
「ああ。ジークハルト、私たちが不在の間皇城の留守は任せたぞ」
「はい。お気を付けていってらっしゃいませ、父上、母上」
わたし達は今日から三日ほどかけてアルランタ王国へ向かう。滞在期間も含め、帰ってくるのはニ週間以上先になるはず。フェルリア公爵家の留守はレイとフォルトに任せてきた。レイは戦闘特化なのでイアン達のような屋敷の管理は難しいと思うけど、普段イアンの補佐をしているフォルトがいれば他の使用人とも協力して頑張ってくれるでしょう。良い経験になることを願う。
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