71 秋のお茶会
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生い茂った深緑の葉が鮮やかな赤や黄色に変化してきた、とある秋の日。
フェルリア公爵家の庭園では私的なお茶会が開催されていた。敷地内の小さな池の傍にテーブルと椅子を並べ、ティーセットに様々なスイーツや軽食。私的なものでありながら、これほど豪華にできるのは当主妻の特権ですね!
「──そうそう、リーシャ様聞きました? 先日噂になっていた伯爵夫人、やっぱり不倫していたそうですよ! しかもお相手は侯爵家の方らしくて、ご夫君は下手に訴えることもできないのだとか……あそこは愛妻家なことで有名でしたし、今は伯爵がどうやってご夫人を取り戻すのか、っていう話題で持ちきりなんですよ! 賭け事をしている貴族もいるらしいし。いやぁ、一躍有名人で羨ましいですねぇ!」
この社交界で偶然耳にした話なのですが……とばかりに、他人の不幸を面白がっているのは女性の姿をしたメルヴィン・アルランタ王女。ちなみにその話はわたしも知っているけれど、侯爵によって揉み消されていたその情報をどこからか仕入れ、噂として広めた張本人は、目の前の楽しそうにしている尊き身分の方になる。事実なので構いませんけど、他国で一体何をしてくれているんだか。
「さすがは王女殿下。侯爵が揉み消した情報程度、いくらでも引っ張り出してこられるというわけだな」
「ふふ」
旦那様の言葉に何を言うでもなく、ただ優雅に微笑むルヴィの目は、それはもう楽しそうな色をしていた。
テーブルに頬杖を付き、手元で呑気に扇を開閉させているのは少々お行儀が悪いけれど、そんな仕草すら美しく見えるのはやはり育ちの良さが関係しているのか、それとも顔が良すぎるせいか。恐らくはその両方でしょうね。
それでは今の状況を説明しましょう。今日は特に予定がない日ということで、秋にしては暖かい日だったのもあり日光浴でも……という話になったんですね。でもただ散歩をするだけではつまらないからと、急遽女性の姿になったルヴィや貴族の装いをしたリジーと共にお茶会を開催することに。
リジーは平民としての生活に慣れ親しんでいますが、わたしのように潜入調査をすることもあるので貴族らしく振る舞うのはお手の物。レイは『暇なら兄さんの手伝いに』と言ってユリウス公爵家に行きました。
さて、ここでひとつ疑問が。なぜわたしは彼女たちのように椅子ではなく、旦那様のお膝の上に座っているのでしょうか。
いえ、理由は分かっていますよ。テロ未遂の件でご自身の身を削って治癒してくださった旦那様に、『何かお礼を』と言ったことがあるからです。その時は思い付かないと言われて先送りになりましたが、ついに提案されました。『君たちの茶会に参加させてほしい。ついでに君は私の上に座れ。何もしないから』と。
以上が今の状況になります。意味が分からない。困惑が滲んでいる二人よりも、当事者であるわたしが一番混乱していますよ!!
「あっ、このお茶美味しい。どこの茶葉ですか?」
「たしか……西の領地で栽培されているものだったかしら。わたしが一番好きなお茶なの。気に入ってもらえたようで何よりだわ」
「ああ、これが。リーシャ様がいつも飲んでいるお茶、いい香りがするから気になっていたんですよ。西の方で取れるなら僕が知らなくても仕方ないか」
ルヴィの出身であるアルランタはウェルロードの東の隣国だからね。この茶葉が採れる領地はユリウスとは比較的近い場所になるけれど、彼はまだこの国に来たばかりですし。
今日はお茶会を開いて良かった。ルヴィやリジーも楽しそうだし、基本的に黙っている旦那様もご機嫌なようで。
いつもは髪の両サイドを編み込んでハーフアップにしているのですが、今日はそれも変えてみました。毛先を軽く巻いただけという、シンプルなヘアスタイル。なぜかいつも編み込んでいる部分に軽く引っ張られるような感覚があり、見れば優しい手付きで遊ばれているのは気にしたら負け。というか旦那様、姉妹はいないはずなのに編み込みができるのすごくない……? 手先、器用すぎません……?
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