70 気遣いって大切ですね
「僕の心配が杞憂であったことはよく分かりました。ご無礼をお許しください」
「許すも何も、最初から怒っていないのでお気になさらず。ご満足いただけましたか?」
「はい。ですが、もう少しだけ」
このような機会は二度となさそうですし、とまだ何か聞く気でいるらしい。ええ、まあ……いいんですけどね。そんなに聞きたいことありますか……?
「皇帝陛下のことをどう思っておられます?」
「とても素晴らしいお方だと思いますよ。器が大きく、接しやすいですね。臣下の意見をよく聞き入れてくださるし、国を一番に考えておられるからこそ民にも慕われていて」
それこそ『賢帝』という言葉がよく似合うお方だと思う。それにしても、こればかりは失礼な質問ではありません? 『忠誠』を象徴するユリウスのロードの忠誠心を疑うだなんて。あなた方に見えない『裏』で動いている分、この国の暗黒部分を見ることも多々ありますが、それでも余りあるほど素晴らしい国だと言えるくらいには、忠誠心は強いんですよ。
これは『高潔』を象徴するレリック公爵家の方々が『下劣』であると言われているのと同義だと思いますが? なんて、言うはずがありませんけれど!
「照れるな?」
「事実ですので、どうぞ遠慮なく」
「僕もその意見には同意します。ではユリウス公爵──あなたのロードとしての役割は、戦闘系ですか?」
「あら、そこに踏み込んで来るとは思いませんでした。わたしには秘匿する権利があると思いますが」
「リーシャ、無言を貫いて良い。レリックの人間に嘘は吐けぬ」
「洞察力が優れている方なのですか? では真偽を見抜けるか、腕試しといきましょう! わたしは戦闘系の役割を『持っていない』。ただ個人的に戦闘能力が高いだけで、陛下はその点を評価してくださっているだけですよ」
大嘘ですが。でもわたしは多少なら、自分の思考まで欺くことができる。仮に嘘だと見抜かれたところで、『戦闘系』だなんて当てはまる範囲が広すぎるでしょう。皇族の『影』であることが見抜かれなければいい。
「…………フェルリア公爵、つかぬことをお聞きしますが」
「なんだ」
「フェルリア公爵はご夫人のことを心から愛しておられますよね?」
「ああ。他家のロードに取られる前に結婚を申し込んだくらいだしな」
「……やはり。ありがとうございます」
それは何の質問なのでしょうか。『やはり』の意味をお聞きしても? この感じ、普通にいつも通り冗談で言っているように聞こえますよ。というか旦那様、そんなことを考えていたのですか? たしかに女性らしさの欠片もなかったとはいえ、序列一位のロードなら結婚を申し込むだけの価値はあるかもしれませんけれど……現時点で結婚しているロード当主はわたしと旦那様のみですし。
そんなことを考えている間にレリック公爵は自分の中で答えを出したらしく、いまだに悩んでいる素振りはあるけれど、この質問に関してはひとまず解決ということで良さそう。そして途中から表情が硬くなり始めていた陛下が、ついに口を挟んでこられた。
「エイダン、それ以上は何も聞くな。リーシャは深く詮索されることを嫌うゆえ、多少なら許されてもそろそろ怒るぞ。そなたの立場でリーシャを怒らせるのは得策ではないと思うが?」
「……おっしゃる通りです。あなたが僕と同じだけ、どころかそれ以上にお強い方であろうことは良く分かりました。底知れぬ何かを感じましたので……」
ありがとうございました、と深く頭を下げた彼からはもう疑いの気配を感じない。
──わたし、この話を通してひとつ学んだことがありまして。
同じ『他人』でも言葉ひとつ、行動ひとつでこんなにも相手への印象が変わるんだなと。言うまでもなく旦那様と比べているんですけどね。やっぱりこの人、気遣いはできるんだな……と改めて思いました。
ご覧いただきありがとうございます!
よろしければ感想、レビュー、ブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価していただけると励みになります!
また、X(旧Twitter)にて新作や更新情報、たまに作品の小ネタ等も載せています。興味を持っていただけましたら、ぜひ下記URLからご覧ください!
(https://x.com/ria_yamasaki)




