67 ロード序列第四位
「ありがとうございます、陛下。ところで今日この場にいらっしゃるというお方は、いつ頃来られるので?」
「そろそろ来るはずだが……」
旦那様の問いに答えるべく陛下が口を開いたちょうどその時、誰かの気配がこの部屋の前で止まった。次いで、扉を叩く音が響き渡る。今この部屋の前にいる人の気配はわたしも知っていた。何度も顔を合わせたことがある。
陛下の返事のあと一拍置いて顔を見せたのはやはり、オッドアイを持つ人物で。
「──エイダン・ロード・レリック、只今参上いたしました」
『高潔』を象徴する家紋の赤薔薇と同じ、燃え盛る炎のような真っ赤な髪を持つ当主。
ロード序列第四位、レリック公爵家は代々皇族の護衛を担ってきた家として有名で、わたしが裏での護衛を任せられるのもあってこちらが一方的に見慣れています。例に漏れず持っている能力や役割は存じ上げませんが、表向きの職業からして他のロードよりも戦えるであろうことは容易に想像できます。
「皇帝陛下におかれましては、ご機嫌麗しく──」
「良い。そこに座れ」
「失礼いたします」
わたしや旦那様の斜め前に座った彼に、そっと目礼をされる。
ここからはこの三家が揃わなければならない話になるようだ。今のところ、少なくともわたしは彼と接点がないので何の話かは全く分からない。ただまあ、ロードの当主三人と皇帝陛下の集まりなら、たしかに全員で時間を取れる日も少ないだろうなと思う。
陛下の最初の言葉に大臣でも来るのかと思っていましたけど、もっとすごい方でしたね。
「それでは全員揃ったということで、早速本題に入ろう。今からひと月先の十一月上旬頃、隣国アルランタ王国にてアルランタ国王主催のパーティーが開かれる。各国の王族に声を掛けているらしく、私と王妃も招待された。そしてフェルリア公爵夫妻もぜひ、とそなたらにも声が掛かっている。成長したリーシャと話をしたいそうだ」
あらまあ……それは光栄なことですね。昔、お母様がアルランタ国王夫妻の命をお守りするような任務があったらしく、お二人とはそれからも親しくしていたのだと聞いている。
わたしも何度か会っており、その時に王女時代のルヴィとも初対面を果たしていた。恐らくはその縁で声がかかったのでしょう。ルヴィのご両親……癖が強そうですが、どうなのでしょうね。たしか兄君もお二人いるとのことですが……
「なのでそのパーティー中、アルヴィンは好きに過ごすといい。リーシャは基本、フェルリア公爵夫人として私たちの傍にいてほしい。本質は影からの護衛だ」
「御意」
なるほど、たしかに公爵夫人が護衛をしているとは思わないでしょうね。姿は隠さないので、その意味で『影』と言われたのだと思う。
他国のパーティーとなると、自国よりも武器の持ち込みが大変そうですね。あっ、でもアルランタの国王夫妻は過去にお母様に助けられていて、それはつまりわたし達がロードであることもご存知ということだから、案外そうでもないのでしょうか。まあ難しくても何とかしますけれども。
「そしてエイダン。そなたには普段通り護衛を命じるが、今回はリーシャのいない時だけで構わない」
「……陛下。お言葉ですが、彼女は僕と同じだけの働きができるのでしょうか」
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