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【第1章完結】公爵様、三年限定ではなかったのですか!?~契約結婚したらなぜか溺愛されていました~  作者: 山咲莉亜
第2章 咲き誇る赤薔薇 ──差し色は高潔に──

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66 新たな政策

 ◇


 とある日の昼下がり。話したいことがあるからと登城を命じられたわたしと旦那様は、皇城内の応接室にて陛下と向かい合っていた。


 突然の呼び出しに困惑したけれど、二人揃って呼ばれたということはそれなりに重要な話である可能性が高い。


 到着するなり、先に来て待っていた陛下から数枚の書類とお茶を差し出される。


「アルヴィンにリーシャ、いきなり悪かったな。もうひとり呼んでいるのだが、全員の予定が空いている日が今日くらいしかなかった」

「いえ、問題ありません」

「今日のお話にはその方が関わっているのですか?」

「ああ。これから二人にだけ先に話しておきたいことがあるので、もうひとりが来るのはその後になるが」


 ということは、前半はロードに関する話になるのでしょうか。

 わたしと旦那様が急遽呼び出された理由、少なくともロードか……あるいは公爵としての立場あってこその内容だと思うのですが……


「そなたらは自分の血筋が継ぐ役割と能力について、互いに話しているのだったな?」

「ええ。と言っても、最近知ったばかりではございますが」

「そうか、では早速本題に入ろう。少し前に起こったテロ未遂の件は覚えているな? リーシャからの報告に、『動機は国のために戦ったのに、誰もがその想いを蔑ろにした怒り』とあったが、そのあたりは我々も以前より問題視していたのだ。そこで人々の口に戸は立てられぬが、せめて彼らが未来に絶望せぬよう対策を取ることになった」


 思わぬ話題に、ぱちぱちと目を瞬く。


 話の発端はテロの件の報告の際、この国の課題のひとつとして彼らの過去と今後そのような環境が与える影響について、対策案を挙げたことなのだと思う。

 彼に同意した想いのひとつに、『今後同じ道を辿る人が現れないように』というものがあったんです。彼らの場合、様々な要因が重なっての結果でしょうから、例えば貴族に生まれて親の命令で騎士になった、などという人なら同じ道は辿っていないと思う。それでも可能性のひとつとして、不安の芽は摘んでおきたく、対策案を提示した。


「────今後ウェルロード帝国では、騎士として戦い、怪我を負ってしまった者に対して無償で治療を行うこととする。そこには訓練中の負傷も含み、また、命を落とした場合は身分問わず働きに応じた見返りを、その家族に」

「それは……」


 あまりにも、覚えのありすぎる話で。気のせいでなければその『対策』というのは……!


「そう、半分ほどリーシャの意見を取り入れたものになる。リーシャは治療費の寄付を募るのはどうかと言っていたが、話し合いの結果国費で賄うことになった。そしてこれは医療大国であるウェルロードの、さらなる発展にも繋がるだろう。今回の件で言うなら仮にライフルのような銃火器によって怪我を負ってしまっても、医師が経験を積むことにより生存率が上がるかもしれぬ」

「うっ……耳が痛い話ですわ……」

「生存率が上がるにしても、正確で早急な対応が求められるのは変わらないだろうが……いつかは私たちフェルリアの力が不要になる日も来るかもしれないな」


 ふとそんなことを口にした旦那様は、『だが我々の能力は使わないに越したことはない』と僅かに唇の端を持ち上げた。


 でも旦那様、それはどうでしょうね。


 わたしは治癒には術者の血液を代償にしなければならないことを後から知りましたが、そのデメリットを差し置いても強すぎる力だと思いますよ。一分一秒を争う状況で、この能力なら普通に手術をする何十倍も早く完治させることができるのですから。


 それはそれとして、自分の命を削ってまで誰かを救おうとするのは控えてほしいと思いますが。


「何にせよ、各方面リーシャのおかげで事の重大さを理解したことだろう。長らく停滞していた事案を進める大きなきっかけとなってくれたこと、心から感謝している」

「お力になれたのなら良かったです。それから陛下、新たな政策を始めるにあたってユリウス公爵家から治療費の援助を申し出たく。つきましては、この政策が始まる前にいくらか資料をいただけないでしょうか?」

「フェルリアからも同じく」


 わたしの中で長らく問題視されていた『金銭面の余裕』というものは、旦那様の元に嫁いでから一気に解決しました。ユリウス公爵領の再興にも充分すぎるほどの資金がある。

 だからこその申し出だけれど、これはこちら側にもメリットがあるんですよ。もちろん素直に新しい政策を応援したい気持ちもありますが、情報を制する者は世界を制すという言葉がありまして、何に関しても情報は早く正確であるほど強いカードになるのです。特に貴族社会においては。つまり、お金で情報を買うというわけですね。


 そしてウェルロード帝国の皇帝陛下は、この程度の思惑も見抜けぬようなお方ではない。だからこそ……


「いいだろう。一般に公表するのはまだ少し先になるが、そなたらには明日までに資料を届けさせる」


 だからこそ、そのカードを持つことを許されるということは、それだけの信頼を得ていることの証左となるのである。

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