61 声と発言の差
コツン、と。静まり返った牢獄でヒールの音が響く。その直後、手錠がガチャガチャと大きな音を立てているのが耳に入った。意識はあるようですね。まあなかったとしても、これから起こすつもりでしたが。
「そんな顔をなさらずとも、今のわたしは疲れているので早めに終わらせて差し上げますよ」
気を遣っているようで、実際のところ嘲笑していると思わせるような声音で話しかける。わたしが身内によく言われるのが、『かわいい声をしているのに発する言葉がかわいくない』なんですよね。喜ぶべきか怒るべきなのか、分からなくないですか? 両方すればいいんですかね?
まあそんな感じなので、『登場の仕方が怖いだけで現れたのはただの女』、などと思わない方が身のためだと思いますよ、そこの安堵しているお兄さん。
「はじめまして。わたしの名はリーシャ・ロード・ユリウス。あなたのお仲間と戦っていた者です。以後お見知り置きくださいね」
「……は?」
「ふふ、何を驚いているのですか。あなたを捕らえて拷問したのだって、ただのか弱そうな女性でしょう? ほら、そこにいるじゃないですか」
わたしの後に降りてきたリジーを、『ほら』とにっこり笑って指し示す。
急激に血の気が引きましたね。リジーに何をされたのか知りませんけど、これから始まるのはもっと恐ろしいことですよ。もちろん大人しく情報を吐けばあまり苦しまなくて済みます。
彼を拷問椅子に座らせて拘束してもらっている間、わたしはワインセラーから取ってきた薬をいくつか調合する。よかったですね。あなたは一度拷問を受けていてその恐ろしさを知っていますから、今回は座るだけで全身に棘が刺さるような椅子ではありませんよ。ただの鉄でできた拘束具付きの椅子です。それでも恐ろしいでしょうけど。
「初めに聞いておきましょう。あなた、正直にすべての情報を吐くことはできますか?」
「そんなこと……っ!」
するはずがない、ですか? それは残念。お仲間のことは大切なのでしょうか。もう全員殺されているだなんて、知るはずがありませんものね。
「威勢がいいようで結構。いつまで持つか楽しみですね。では手始めに、これを飲んでいただきましょうか」
液体の小瓶を顔の前に持っていき、しっかりと色を認識させる。中身はただの興奮作用がある薬。色も無色透明だけど、小瓶が禍々しい緑色なので、この状況も相まって彼の目には毒に見えているでしょうね。この量ならただ体温が急上昇するくらいのものですが、この人の脳はきっとそれを『異常』と判断する。
案の定、顎を上げさせて小瓶を傾ければ、恐怖に染まり切った顔で飲み込んだから。
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