58 表と裏で戦う存在
「皇族の……影……?」
ユリウスについて話し終えた後、しばらく無言だった旦那様がようやく口を開いた。
「ええ、そうです。表立って動けない汚れ仕事を担っているのがわたし達……と言っても、現在ユリウスはわたしひとりですが。最近ではリジーだけでなく、ルヴィやレイも任務に同行させる時があります」
「……まさか」
無表情で考え込んでいた旦那様が、何かに気付いたような反応を見せる。そうですよ、きっと今、わたしと旦那様が考えていることは同じ。
「先日の君の負傷は任務中のものだと言っていたな」
「はい。もう終わったことなので言いますが、テロを企んでいた人たちを相手にしていたんです。だから銃火器をたくさん所持していたようで」
「それを君ひとりで対応したと?」
「後処理はリジー達に頼みましたが、戦ったのはわたしだけですね」
わたしの言葉に絶句している旦那様。随分と珍しい反応ばかりするではありませんか。一度共闘したこともありますし、ここまで驚かれるとは思っていなかったんですけどね。
それとも、わたしが殺してきた人の数に失望しましたか? 『皇族の影』『汚れ仕事をひとりで担っている』。これだけでどれだけの人を手に掛けてきたかも、少しは想像が付くでしょうし。
わたしは嫌われても失望されても、軽蔑されるのだって構わないのですよ。秘密さえ守ってくださるのならね。
「このような話をした経緯といたしましては、先日の任務でご迷惑をお掛けしてしまったように、今後も似たようなことがあるかもしれないからです。いつ命を落とすか分からない身の上ですから、ある程度説明しておいた方が良いのではないかと思いまして」
それにこれは予定外だったけど、今後は旦那様の能力をお借りして応援を呼ぶことになっても、この方には詳細を隠す必要がなくなった。嬉しい誤算です。
「結婚当初は話すつもりなど一切なかったんですけどね。夜会の時に捕らえたルイスさんを逃がしてしまったことも含めて、少し不穏な状況になってきましたので……」
「経緯については理解した。こちらとしても、すぐに対応できるのはありがたい。何もないのが一番だが、また怪我をしたら現場に私を呼べ」
「良いのですか? ではお言葉に甘えますね。ありがとうございます」
「それにしても……影、などという存在がいるのか。たしかに言われてみれば、私はこの国の暗黒部分を見ることが滅多になかった。『国の剣と盾』など、普通はそういった部分も見るはずだというのに。それもこれも、私の元に情報が回ってくる前に君が処理していたからなのか」
ええ、おっしゃる通り……って、ん……? 今何か言いましたか? さらっと、何かを口にしましたよね。武器や防具の名前を聞いた気がします! ちょっと旦那様、『国の剣と盾』って何の話ですか!?
「仕返しだ」
「笑いながら言うことではないと思いますが!?」
「君も同じ感じだっただろう。やられっぱなしは気に食わない」
だからと言って普通、そんな理由で重大機密を明かしますか!? もうちょっとこう、それらしい理由を付けましょうよせめて!
そんなわけで、結局最後は旦那様に敗北したわたしは、墓場まで持って行かなければならない秘密を作ってしまった。
『国の剣と盾』、要するに他国との戦争や内乱などが起きた時に最高責任者として軍を取り仕切り、国のために戦うのが役割だと話す旦那様は、それはもう良い笑顔でございました。そのような状況になった時はロードであることがバレないよう、公爵の地位を使うことになっているそうです。たしかに戦場で役立ちそうな能力ですよね。
ちなみに戦争が起こっていない時でも、戦争を起こさないための対策、事前阻止、国防の強化や警備など、任務を命じられることはあるらしいですよ。
これらの情報を伝え合ったことで、旦那様と共有した認識がひとつ。
この二家はある意味で同じ役割を担っている。違うのはただ、フェルリアは表で戦い、ユリウスは裏で戦うために用意された存在という部分のみになるのでしょう。
ご覧いただきありがとうございます!
よろしければ感想、レビュー、ブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価していただけると励みになります!
また、X(旧Twitter)にて新作や更新情報、たまに作品の小ネタ等も載せています。興味を持っていただけましたら、ぜひ下記URLからご覧ください!
(https://x.com/ria_yamasaki)




