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【第1章完結】公爵様、三年限定ではなかったのですか!?~契約結婚したらなぜか溺愛されていました~  作者: 山咲莉亜
第2章 咲き誇る赤薔薇 ──差し色は高潔に──

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55 差し込む光

「…………」


 旦那様が見当たらない。気配もない。もしかして旦那様、隠密行動が得意だったりするんですか……? それとも気配を消してわたしの死角にいるだけ?


 ゲームを始めて約二分が経過した。わたしの読みが正しければ、もうあと二分以内には月明かりが差し込む。このまま終わるのはあまりにもつまらない。森全体を視て、自ら接近してみるのもありでしょうか。


「そう、つまらない。だから君は私が探さずとも姿を見せる」


 三階建ての屋敷くらいは高さのある木から飛び降り、ストッと静かに着地したわたしは、旦那様を探すべく能力を使おうとした。……その時だ。背後から探し人の声が聞こえてきたのは。一体どこに隠れていたのか。

 わたしの名誉のために旦那様に言っておきたいのですが、任務で隠密行動をしている時は自ら姿を見せたりなんて、絶対にしませんからね? それが作戦でもない限りは。でもこれは所詮お遊びなので、わたしが楽しいと思う行動を選んでいるんです。


 そんなことを考えながら咄嗟に胸の前で武器を構えれば、いつの間にやら背後に立っていた旦那様は意地悪な笑みを見せてくる。

 わたしはというと、誰かに背後を取られたのはいつぶりか分からず、心臓がバクバクと大きな音を立てていた。


「……びっくりしました」

「安心しろ。普段の君が簡単に姿を見せないのは分かっている」


 何だか…………違和感を感じる。わたしと旦那様、どちらかの何かがおかしい。あるいは両方の。その違和感の正体までは分からないけれど。


「そうですか。ではわたしはこれで失礼しま──」

「私は、見逃すとは一言も言っていないぞ? 狙い定めたものはどんな手段を使っても手に入れる」


 ゲームが始まった時と同様に、サッと一瞬で消えるつもりだった。旦那様が、わたしの逃走経路に先回りして立ち塞がらなければ。


 それならばと一度足止めすべく、両手に短剣を持ち直す。


 戦闘狂なのか、それともわたしと戦いたかっただけなのか分からないけど、わたしの行動を見た旦那様は、それはもう心から楽しんでいるのがよく分かる顔をした……直後。


「──……っ!」


 ガキィン! と。旦那様の漆黒の剣と私が交差させた二本の短剣が、派手な音を立てて交わる。

 わたしは身体強化を使っているというのに、旦那様の体はビクともしない。旦那様ってこんなに力が強かったのですか? この前戦った彼らなんて、軽い一撃で吹っ飛びましたけど……?

 旦那様の力は本当に底が知れない。秘めた能力が多すぎる。普段から適度に見せているせいで、そもそも何かを隠しているということ自体が分かりづらい。


 今はお互い、思い切り力を込めている。ならばわたしが引いて、体勢が崩れたところで横から一撃入れればいい。


 そうして大きく一歩、後ろに引こうとした。旦那様は笑みを崩さない。まるでわたしの考えていることはすべて分かっているとでも言わんばかりの態度。もしこの人が本気で敵に回ったら、戦闘中はかなり腹が立つでしょうね! 今はまだマシですけど、一々強いし煽ってくるので!!


「ふっ……君は本当にかわいいな。君の本気を引き出してみたかったが……タイムリミットだ」


 闇の中にパアッと青白い光が差し込む。旦那様の言葉とほぼ同時に見えたそれは、戦闘中なのにもかかわらず思わず見惚れてしまうほど、綺麗な円を描いていた。

ご覧いただきありがとうございます!

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