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【第1章完結】公爵様、三年限定ではなかったのですか!?~契約結婚したらなぜか溺愛されていました~  作者: 山咲莉亜
第2章 咲き誇る赤薔薇 ──差し色は高潔に──

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53 大人の遊び

 ◇


「旦那様」

「…………」

「旦那様ー! ちょっと、聞こえてますよね!?」


 ──テロ事前阻止の任務から約一週間。

 ようやく自由に動き回ることを許可されたわたしは、深夜の日付けが変わる頃、旦那様のお部屋を訪れた。起きているのは気配で分かっていましたけど、こんな時間まで仕事をしているだなんて仕事人間が過ぎると思いません?

 執務室のバルコニーから窓をノックして声を掛けるも、振り返ってわたしの姿を完全に視界に入れたはずの旦那様は、一度わたしのことを見なかったふりをした。もう一度呼べば、ペンを動かす手がピタッと止まり、後ろ姿からも分かるほどに大きな溜め息を吐かれる。


 まあこんな時間まで仕事をしていれば、疲れて溜め息が出るのも分かりますよ、ええ。


 もう一押しでしょうか。……面白いことを思い付きました。さすがにこちらに来てくださるはず。というか、来てくれないと困る。


「──アルヴィン様!」


 その名を口にした途端、旦那様の肩が驚いたようにビクッと跳ねてそのまま固まった。もう一度視線を向けてくださった旦那様に、してやったりとニンマリ口角を上げれば、今度は無言で額を抑える旦那様。あら大変、頭痛ですって!


 旦那様ってよくわたしのことを玩具にしてきますけど、たまーにこちらが揶揄うとしっかり面白い反応をしてくださるんですよね。自覚はあるのかないのか分かりませんが。


「……リーシャ。こんな時間にそんな場所でどうした」

「夜分遅くに失礼します。少しお話ししたいことがありまして」

「普通に扉から入ればいいだろう……声を掛けられるまで気配すらなかったせいで、疲労で幻覚でも見えたのかと思った。また体を壊すぞ?」


 あら、まるで世話焼きな母親のようなことを言いますね。驚いて珍しいお顔でも見られたらな、と思っただけですよ。今さっき部屋を出たばかりですし。


「もう元気いっぱいなのでご心配なく。外で用事があるんです」

「……話があると言わなかったか?」

「……お話と用事です。どっちもです」


 わたしの言葉に訝しげに眉根を寄せる旦那様。説明するより行動に移した方が早いので、ひとまず『ついてきてください』と一声かけてからバルコニーの手すりに体重をかけた。


「待て、リーシャ」

「しっかり追ってきてくださいね!」


 そのまま手すりを飛び越えたわたしに、止めようと手を伸ばす旦那様。けれども旦那様の制止は間に合うはずもなく、羽織っていたアウターがまるで蝶の羽のようにふわりとなびく。


 やがて身体強化で難なく着地し、旦那様も同じく飛び降りたことを確認して走り出した。


 目的地はフェルリア公爵邸の敷地内にある小さな森。剣一本を手にして追ってくる旦那様に、さすがだなと思った。

 ロードとして、肌身離さず武器を持っている。妻相手でも警戒するべきですからね。特にロードなんて国至上主義なのですから、国のためなら誰でも手に掛けますし。


「────それでは旦那様、『命懸けの隠れ鬼』を始めましょう!」

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