51 これは一体どういう状況なのでしょうか
◇
「…………」
「リーシャ、起きたか」
「……死んだ……?」
「生きている。縁起でもないことを言うな」
死にたくないとは思いましたが、あれは確実に死ぬ流れだったはず……でも全身の疲労と能力の使いすぎで体調が悪すぎるので生きているみたいですね。痛みなら耐えられるかもしれませんが、地獄に落ちた後も体が弱いなんてさすがに嫌ですし。
「あれ、でも傷が治ってる……もしかして白昼夢だった……?」
一時的に見えなくなった目は回復しているし、血痕のひとつもない。生きていても目覚めた時には国立病院の集中治療室かしら、なんて思っていたのにここはフェルリア公爵家のわたしの寝室ですね。リジーや夫の旦那様はともかく、なぜかルヴィとレイまでいますが、まあ細かいことはいいでしょう。
「うーん……」
「状況は把握できたか?」
右に、左に何度も首を傾げていれば、旦那様は困惑しているわたしを面白がっているようだった。相変わらず趣味の悪い人ですこと。
「とりあえず、よく分からないことが起こっているのは分かりました。リジー、今は何月何日の何時?」
「九月の一日、お昼前ですね。まだそれほど時間は経っていませんよ。普通に寝坊してしまったくらいの時間です」
それは大変。今日って後祭りの日じゃないですか。お互いに予定が空いていれば行きたいと言っていたのに、この時間からだと厳しいですよね。今から準備すれば間に合います……? いや、駄目だわ。頭痛と吐き気が止まらない。
何が何だか分からないけれど、ひとまずリジー達がここにいるということは後始末は終わったのでしょう。
後ほど詳細を聞きますが、やはり状況を確認したくて。でも誰も話してくれない。誰か教えてくださってもいいのでは? この感じだと全員、わたしのことを面白がっていますよね!?
「旦那様がね、リーシャ様の容体を知っている人なら治っている理由にも察しが付くだろうってことで、先に聞いていたレイくん以外の僕らにも教えてくれたんだけど」
「な、なにを……?」
「私の血筋が持つ能力だ。とはいっても、複数あるうちのひとつだけで、役割のことも話していないが」
つまりこの感じだと、わたしの負った傷を治してくださったのは旦那様だということになりますよね。えっ……?
「……そういえば。お母様の命日でお墓参りに行った時、旦那様がそれらしいことをおっしゃっていたような……」
盗み聞きされていたので余命宣告をされていることを話せば、旦那様はこんなことを呟いたんです。『体の弱さは治せないな』……って。
それは逆に言えば、それ以外のものなら治せるということじゃないですか。ロードである旦那様は何かしらの特殊能力を持っているはずで、そんな意味深な言葉を口にしたことがあって、致命傷を負ったわたしが目覚めると綺麗さっぱり傷が治っている。
「……治癒、とか?」
「正解だ。本当に私の能力について調べなかったんだな」
それはええ、当然でしょう。そういう契約ですし。結婚したばかりの頃、こっそりシエル様を使ってわたしを調べようとした旦那様とは違うので!!
そんな意味を込めてにっこり微笑んで見せれば、何のことやらとでも言わんばかりに目を逸らされる。どうせシエル様くらいの実力では何の情報も入手できなかったでしょうし、その結果だけを見るなら『調べた』という事実は気付かないふりをして差し上げますけど。
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