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【第1章完結】公爵様、三年限定ではなかったのですか!?~契約結婚したらなぜか溺愛されていました~  作者: 山咲莉亜
第2章 咲き誇る赤薔薇 ──差し色は高潔に──

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49 君には見せないが

 ◇


 ────リーシャの部屋。今、誰かが入ってきたな。物音がした。窓から侵入したのか?


 不審な気配にペンを動かしていた手を止め、彼女の部屋の方向へ軽く視線を遣るのと同時、誰かがドタバタと廊下を駆ける音がした。それから数秒も待たず、勢いよく執務室の扉が開かれる。


「旦那様、失礼します! リーシャ様関係のことで内密に話したいことがあるから至急協力してくれない!?」

「……詳細は?」

「リーシャ様が怪我をした……! これから国立の病院に連れて行くから、旦那様はその準備と同行を頼みたいです!」

「待て。怪我の程度は? 意識はあるか?」


 恐らくは任務中の怪我だろう。リジーとメルヴィンがいない。二人は現場に残っているのか? エントランスではなく窓から部屋に入ってきた時点で、騒がれると困るのは間違いないだろう。

 ともかく、国立病院に運び込まなければならないほど酷い怪我をしたことは分かった。あそこは基本、緊急で処置が必要な者ばかりが集まる。腕の良い医者が多いからだ。それ以外なら貴族でも中々利用許可が下りない。


「意識はない。生死を彷徨ってる」

「分かった。シエル、飲料水と水を入れた桶、タオル、甘味を持ってリーシャの部屋に」

「かしこまりました」


 生死を彷徨うほど酷い状態なら、国立病院まで持つかも分からないだろう。それなら私が対処する。


 仕事をしている場合ではないと急いでリーシャの部屋に向かえば、血塗れで寝台に横たわる彼女がいた。止血はされていたようだが、再び溢れ出して布を赤く染めている。背中に冷や汗が流れるのに気付かないふりをし、シエルが準備を整えるのを待った。


 ──陛下が、未来を見たとおっしゃっていた。今日は二度目だそうだ。普段はこんなに高頻度で見えないが、一度目の未来と関連しているからこうなったのだろうとのこと。陛下が見たのはリーシャが命を落とし、ユリウスの血が完全に途絶えた未来だそうだ。ユリウス家滅亡の先にあるのは国の危機。

 陛下が未来を見た時、偶然仕事で皇城を訪れていた私も執務室にいたが、突然そのようなことを言われても一瞬意味が理解できなかった。


 リーシャが命を落とす? そんな未来、耐えられるはずがないだろう。


 リーシャがその姿を見たら驚くだろうが、あの時の私は激しく動揺しているのが誰の目にも明らかだったはずだ。自分でも分かる。陛下が仕事を中断し、屋敷でリーシャの帰りを待てと。そうすることを許可してくださらなければ、私は復讐の鬼と化していたのではないだろうか。


「旦那様! 一刻も早く病院で処置してもらわなければならないのに、何してるの!?」

「落ち着け。……これだけ出血しているんだ、国立病院であろうと生きているうちに処置を終えるのは厳しい。脈が弱すぎる上に怪我を負ってから相当な時間が経っているだろう。負傷後五時間といったところか? むしろまだ生きている方が不思議なくらいだ」

「はあ……? じゃあこのまま死を看取るしかないと!? あんた、リーシャ様の夫だよね……!?」

「そうは言っていない。私とて、彼女のことは大切に思っている。私ならば何とかできるんだ。そうだな……どうせなら君もそこで見ていろ、レイ」

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