45 オッドアイのお嬢さん
「こんにちは、美しいオッドアイのお嬢さん。この目で直接見たのは初めてですが、あなたは皇族に継ぐ権力者、『ロード』と呼ばれる存在のようですね」
廃教会にコツンとヒールの音が鳴り響く。
ついさっきまで暴言を吐いていた男たちは、彼女が動き出したことを確認するなり大人しくなった。この場において、この女性はリーダーのような存在なのでしょうか。
全身黒で体のラインが出るタイプの衣装を着こなす彼女は、笑みを浮かべたまま手を背中のうしろで組む。
「こんにちは。あなたの方こそ、見たことのない衣装ですがとても素敵でしてよ。残念ながらわたしには着こなせそうにありません」
「お褒めに預かり光栄です。ところであなたはどこの家の貴族でしょうか? 見覚えのないお顔ですこと。これほど美しい方なら一度見れば忘れませんのに……それに、とても活発な方ですのね。天井のガラスを突き破って登場するだなんて……まるで空から舞い降りる女神様でしたわ!」
「ふふ、ある意味ではそれは間違っていないかもしれませんね。人ならざる力を持って生まれた存在ですから」
……まるで貴族を相手にしているようなこの会話、面倒なことこの上ないですね。わたしはこういうのが苦手なんですよ。
嘘を織り交ぜて話すのは得意ですし、この会話の中にも本心ではないことはたくさん含まれていますが、彼女の言葉を正しく解釈できているのか分からない。上手く皮肉になっているかも分からない。
一見言葉通りに受け取ることができそうな言い回しだけれど、実際には違うことをわたしは知ってる。貴族の遠回しな話し方って難しい。
「……では。名前を知らないので『オッドアイのお嬢さん』とでも呼ばせていただきましょうか。あなたも私たちの仲間になりませんか?」
「面白い提案ですね。何をしている団体なのでしょうか?」
「この国のためになることです」
……武装した複数人の大人が、子供達を誘拐することを。それを国のためになることだと言うのですね。
「なるほど。分かりました」
「では武器を捨ててこちらに……」
「いいえ? あなた方とは、絶対に分かり合えないことが分かったのですよ。改めてクズだと分かる自己紹介、感謝いたしますわ」
あなたの言う、『オッドアイのお嬢さん』は簡単に誰かを裏切ってしまうような尻軽に見えるのかもしれませんが、意外と身持ちが堅い女なのでそう簡単に絆されはしませんよ?
例えばロードにはアルヴィン・ロード・フェルリアという名の美しい男性がいまして、彼はわたしにたくさんのお金と気楽な関係をくださいました。お金目当てで結婚する人は少なくありませんし、対等な立場というのは良いものですよ?
あとはタイミングですね。相手の機嫌が悪い時ではなく、自分の提示できるものを最も求めている時期にアプローチしてみましょうね。わたしの実体験を元にしたアドバイスです!
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