42 ルナとのゲーム
朝食後。いつも通り訓練を終えたわたしは、書類仕事を進めながらルナの訓練に付き合っていた。
最近ルナには探索関係の訓練を付けている。インコは視覚と聴覚が優れているので、犬のような嗅覚はないけれど訓練次第でかなり強いカードとなってくれることでしょう。何より、移動速度が速く体が小さいところに大きな利点がある。
『主様、次は?』
「次? そうね……では目を瞑って、わたしが何度机を叩いたか当ててみてくれる?」
これはわたしが指で机を叩き、その回数を当てるゲーム。爪ではなく指だから音はしないようなものなのだけど、これまた正解率が高いんですよね。正直わたしもルナの実力を把握しきれていないから、こうしてたまに確かめてみるようにしている。
まずは撫でるような優しさで二回、トントンと机を叩いてみた。
『二回?』
「正解よ。すごいわね」
『ふふん、主様のルナだもん! それと主様、遠くで皇帝陛下の伝書鳩が羽ばたく音がしたよ。こっちに近付いてきてる』
陛下の伝書鳩? ということは、何か急ぎの用事があるみたいですね。任務でしょうか……
まだゲームを始めたばかりだけれど、一旦執務机を離れて部屋の窓を開けてみれば、その数秒後にはわたしにも伝書鳩の姿が見えた。手を伸ばして待てば、バサバサと大きな音を立ててわたしの手の甲にとまる。
「ありがとう。預かるわね」
……いつもより、封が雑に見える。蝋に印された紋章こそ皇室のものだけれど、急いで押したのか右上の方が欠けているし蝋も垂れてしまっていますね。まさか陛下の身に何か……?
急いで封を切って中の手紙を開く。
とある単語を見た途端、スッと周囲の音が消えたように錯覚した。『それ』を無事に遂行するための作戦を考えている間、わたしはそのひとつだけに集中することができる。
「──ルナ、任務よ。詳細は移動しながら話すからあなたも一緒に来て」
わたしは着替えてくるからリジーに置き手紙を、と執務机で様子を窺っていたルナに指示する。
ユリウスのロードが持つ特殊能力。ひとつは結界、そして他には『千里眼』などもある。伝承では様々な力を発揮するこの力は、実際には自身の視力の範囲で壁などの障害物を見透かすことができる、というだけの能力だった。それでもわたしが最も多く使用するのはこの千里眼なので、やはりシンプルな力の方が使い勝手がいいのかもしれない。
今日のわたしの仕事は屋敷内でのものだけだったから、リジーにはレイやルヴィの訓練を任せていた。先ほど千里眼で訓練場の方を視れば外に出ようとしているのが確認できたので、恐らくはユリウス公爵領の地下にある訓練場に向かったのだと思う。
前に何も言わずひとりで任務へ行くと、心配したリジーに怒られてしまったので、あれ以来彼女がいない時に屋敷を出るならできる限りは置き手紙を用意することにしていた。
『主様、書いたよ~』
「こちらも準備できたわ。行くわよ」
動きやすい服装に着替えたわたしは、武器だけ持って執務室の窓に足をかける。そのまま木の枝に跳び乗り、今日の目的地へ走った。
今度の任務は中々厄介なものになることでしょう。
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