理幻鏡想 14
千和々タバコを吸いながら、結界の維持と煙の使い魔を操り、山の中の状況眺めみていた。
四人の安否を確認しつつ、スーツを纏う男達を見ると、あちこちで人型の怪物と化した一般人の回収作業を続けていた。
歩地のやつ、こうなると分かっていたのなら先に言っとけよな…。まぁ、一般人の回収を任せられるというのなら、それはそれとして好都合なんだが、果たして最後まで信用してもいいものか…ん?
そう考え事をしていると、上空から山を見下ろす視界の隅の二点の所から、こちらへと向かって走ってくる人影達が映った。
あれは確か…。あの様子…進路からして、このまま山の中へと入っていく勢いだな…。仕方ない…。
煙の使い魔をその人影の真上まで操りながら、術式を煙で描く。
煙は霧散し、催眠の術式が施された魔素がその人影達に降り掛かる。
勢いよく走るその人影達は術が効いたように、徐々に勢いが収まり立ち止まろうとしする。
だが、急に意識を元気を取り戻したように、そのまま立ち止まることなく、再び元の勢いで走り出した。
…嘘だろう。魔力も無しにどうやって抵抗したんだ…。根性で、どうにかなるものじゃないんだけど…。いや、そんなことはなかったか…。もう結界の維持の為にも、自由に回せる魔力も無いし…。無事を祈るしかないな。
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引き裂かれた四肢が散った血液と魔素が混ざり、地面を這い、宙を漂い傷口へと集まる。傷口の両端から肉の繊維が絡み合い、何事もなかったように再生する。
相変わらず人外のそういう所、本当にズルいわよね…。
「ほら、言いたいことがあるのなら、さっさとかかってきなさいよ。現実逃避した弱虫さん」
「ヨ…」
よ…?
「ヨワムシジャナアアァァイイイイィィ」
唐突に人間らしくも荒々しい言葉を限界以上に開いた口を裂けさせながら発っすると同時に、高速で二連続で突進してくるそれを、何とか回避する。
「喋れんのなら、最初っから喋んなさいよ」
そう文句を言うように声を上げながら、右拳で顔面を殴りつける。
だが、当然の様に非力なその拳に全く手ごたえなどなく、直ぐに自身と異形の間に三枚の爆発術式の紙をばら撒いて距離を取り、起爆させる。
三度の小規模の爆発に爆煙が漂うも、異形が直ぐにそれを鬱陶しそうに払って晴らす。
姿を現す異形のその体は全く受け付けていないのか、既に再生し終えたかのように傷一つ無く、がむしゃらに迫り来て殴り掛かる。
容易く木々をなぎ倒し吹き飛ばすその威力は凄まじく、安易に体で受けることは一度たりとも許されないのが分かるが、まだ戦闘慣れし始めた、発展途上の動きに加え、高速の突進によるものより明らかに遅い為に何とか回避しながら前へ詰め寄り、再びただの拳で殴りつける。
大振りの腕のなぎ払いを姿勢を落として避けて後ろに周り、丁度目の前の辺りになるように置いた一枚の爆発術式を起動させる。
だが、当たり前のように擦り傷程度のもので容易く回復し、元気よく爆煙を払う。
やっぱり即席の術式じゃ、大したことできないか…。
あの男に何度も動きをしっかりと見させてもらったのもあって、動きの起点が分かって、目もこの速さに大分慣れて見えて来てるのもあるけれど…。さっきまでより少し動きが遅い鈍くなってる?
それは異形自身も気になっているのか、自身の体を確かめるように動かしていた。
その様子を観察して見ていると、先ほど顎門に切られ、再生しているはずの四肢の部分が変に痙攣しているのが見えた。
魔力による特殊な斬撃…。恐らく鋸で切る様に断面をズタズタにして、そこに魔力を刻み埋め込むことで完全な再生を阻害しているってところかしら…。余計な事をって本当は言いたいけれど、正直かなり助かる。
「弱虫じゃないなら何よ。何であんたはその姿になってるのよ」
「ナニガ」
「人が異形になった場合、三つパターンがある。一つ、ショックにより狂い自我を失う。理性無き怪物となる者。二つ、姿を変えさせた術者によって操られる者。三つ、その者が望んでのこと。貴方のそれは望んでのものでしょう。自我も理性を確かにあるのだがら」
「ダカラ、ソレガナンダッテイウノ」
「つまりあなたは、人であることを諦めたのでしょう。なぜ諦めたのかは大体察しが付くけれど」
「ナニヲ ワカッタキニ」
「分かるわよ…。貴方と同じ人の傍で六年近く一緒にいたからね」
「ハ?」
「今あなたに言えるのは全てを諦めるのは、本当に全てを試してみてから考えて、諦めなさい。それをしないのはただの怠惰よ」
「ダマレ!」
その言葉が癇に障ったようで、一直線に再び突進するのを軽々と避けるも、急ブレーキを掛けて反転しがむしゃらに殴り掛かってくる。
「ナニガワカル。ナニニモメグマレタ テンサイノ オマエナンカニ」
「分からないわよ。だけれど貴方こそ、私の何を知ってると言うの」
「ア?」
拳を振り下ろそうとすると、足が何かに引っかかり倒れてしまう。
その足を見ると、トラバサミらしきものが足を噛んでおり、それは地面の中まで鎖が伸びていた。
「何にも恵まれたね…。確かに私は周囲の者から見れば、家柄、環境に恵まれていたのかもしれないわね。それは多少、自覚してるわ。だけど私は天才じゃないわよ。苦労しなかった事なんて一度もないわ。最も望んでいた才に恵まれなかったわ。それは家業に必要不可欠であり、家族の皆は勿論、職員達すらも、その世界に通ずるものなら持っているのが当たり前のモノに、いくら試そうともその才が芽生えることは無かった。だからそれが無い私は虐げられ、見放されてきたわ」
外れぬトラバサミを何度も叩き、鎖を無理やり引きちぎり、襲い掛かる。
「だから、私はひたすらに努力したわよ。寝る時間を遊ぶ時間を全て研究の時間、義務教育で学ぶことを前倒しにして、学業の時間すらもそれに当てる為に。残りの人生の時間をそれに捧げられるように。時に家業とは全く関係ない、父から諦めるように示唆する道を、仕事を与えられても、文句を言わずに乗り越えた。それが何の意味にも、力にもならないかもしれないと思いながらも、きっと未来の自分を支える何かになると信じて…足りないものを少しでも補えるように。自分の道を進み続けているわ」
「ナンノハナシヲ シテルンダヨ」
「安心していいわよ。さっきまでのは私のただの独り言だから」
防戦一方に避け続けていたが、反撃とばかりに水球魔術を膝元へ放ち、木々から縄やツタを伸ばしたりと、様々な方法で動きを阻害させる。
「ウットウシイ!」
「強欲なのは別に悪いことじゃないわ。だけど、強欲に進み続けた結果そうなったのは、それ以上に自身の体を省みなかった貴方の責任じゃないかしら」
!?
「私に対して何の劣等感を感じているのかは知らないけれど。私は貴方が羨ましいわよ。周りにも…望んだ才にも恵まれた、あなた達が…」
「ダ、ダマレェ!」
「どうせ今の貴女には私の言葉なんて、何一つ意味をなさないわ」
ことごとく、邪魔をする魔術を潜り抜けて、遠くまで距離を取られた梓麻を狙い定め、完治した両足で深く踏み込み突進の姿勢を作る。
「だから、残念だけれど私はここでもう終わり」
そう言って、山の方を振り向いて走って行く。
その様子を見て、異形は一瞬呆然としてしまう。
オワリ?アキラメタ?ワタシト オイカケッコデモスルキ?イマノワタシ二 カテルトオモッテイルノ?バカニスルナヨ!
込み上げる怒りをぶつける様に、踏み込む足が深く地面に沈ませ、容赦なく突撃する。
確かな手ごたえを感じ、そのまま走り行こうとするのだが、体が動かない。そう思った時には進んだのだが、何故か左方向へと走っていた。急ブレーキを掛けてその場を見る。
一体何が起こって…。
衝突したであろうその場には、見覚えのある長く赤い髪がなびく、一人の少女が立っていた。
「おまたせ、梓麻」
「いいえ、予定通りよ。後は任せるわ、赤華」
「うん。そっちはお願い」
そう言って走り行く姿を見て、更に苛立つ。
「ニゲルナァ!」
再び力強く踏み込み突撃するも、赤華が立ちはだかり、受け流すように進行方向を横に流し行かせる。
「逃げじゃないわ。互いに話し合って、最善だと確認して任せ合う事にしたのよ」
「だからごめんけど、あなたの相手は私」
「ジャマヲスルナァ!セキジョウゥ!」
「この件が終わったら幾らでも、言い合いくらいなら付き合って上げるわよ。だから、赤華。彼女をお願いね…」
「マテェ!」
突進では全く意味が無いと理解し、剛腕による接近戦を行うも、細いただの人間の腕の赤華にいなされ続け、振り被った大振りの一撃を振り下ろすと、視界がぐるりと大きく揺れ回り、気がついた時には仰向けに倒されていた。
すぐに起き上がるも、その時には梓麻の姿は無く、見失ってしまい、ゆらりと赤華を睨みつけ、呼吸をする暇などなく、拳を激しく撃ち合う。
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伸びる棒によるリーチを無くす為に何度も棍に身を打ち付けられながらも、常に張り付くようにして無理やり接近戦に持ち込み攻め続け、伸ばしに掛かった棍の先を上に弾きながら、懐を攻め行く。
だが、それは誘いであり攻めに行く勢いを利用するように溝落ちを抉るように重い拳の一撃が入る。
拳を引き抜こうとすると、動かない事に気がつく。
それは鳶鷹が打ち放ったその拳を掴むように防ぎ、逃げられぬように強く握り締めていたからだ。
「ふぅ。やっぱり誘って狙っとったな。やり返しじゃ」
空いている片手で二発のジョブを決めながら、三発目を振り被って強く撃ち込んだ。
かなり鈍く重い音を鳴らしながら猿角は仰け反り吹き飛ばされるのだが、タダでは吹き飛ばされず、間際に持っていた棍を短くし、指に引っ掛けて弾きその宙で回転させ、指先で印を結び棍を一気に伸ばし、先がアッパーを喰らわせるように、鳶鷹の顎を下から打ち上げた。
完全な不意を突かれたその一撃は、大きく脳を揺らし意識が途切れ、再び大きな隙を生み出してしまう。
そこへ、棍を再び短くし、水平になった所で勢いよく伸ばし、鳶鷹の腹部を突いて吹き飛ばしながら更に伸び、反対側を猿角がキャッチして元の長さに戻して着地する。
「げほっ…なんつーテクニカルな技かますねん…こん男は」
口を拭う鳶鷹に、猿角は余裕ありげに棍の手ごたえを確かめ、かかってこいと、手招きをする。
せっかくのリーチがある状況で、それを捨ててやるから攻めて来いってか…。ええわ、そんな余裕すぐに無くしちゃる。
…やはり、勘違いじゃない。このボウズ…攻撃を受ける度に身体強化が高まっている。どんな攻撃でもいいわけではない…。急所を、特別大きな攻撃を受けるたびに、魔力が湧水の様に異様に増え、身体強化に回されている。雑な魔力制御だが、それを無視する勢いのモノだ。それに加えて受けた瞬間に、その箇所から魔力が溢れるから、ダメージを軽減までされている。受ければ受けるほど強くなるとは、まるで鍛造される刀の様だな。ただ分かるのは、こいつがそれを全く自覚していない事。馬鹿正直に攻めてくる真っ直ぐな性格。そして今なお、俺はこいつの底が全く見えていないという事だ…。だが、いくら魔力に優れ、強化が強くなろうとも、当人にそれを扱い切れる技量も技術も無ければ何の意味がない。
振り回す棍で鳶鷹の攻め手をことごとく潰しながら、勢いを付けた渾身の一撃を振り下ろす。
両腕は弾かれ防御も、回避も不能のその胴体を狙った一撃。確実に倒すための一振り。
ボウズとのお遊びも、これで終わりだ…。
——————!
「ふっぐ」
無容赦なく振り下ろされた、それを受け鳶鷹は強く踏みとどまり、耐えた。
なっ…お前…!?
それを見た猿角は思わず驚愕してしまう。
防御も回避も不可、そう自身でも理解した鳶鷹はなんと、その一撃を頭突きで迎撃するように受けてたったのだ。
「お、お」
頭突きと棍による両者ともが譲らない激しい競り合い。
「りゃああぁぁぁぁ」
その気合の入った声にこたえるかのように、徐々に鳶鷹が押し始め、ついには棍を砕き破ってしまった。
力を振り絞り、痛みや感覚の揺れに体が揺らぎ、惚けながらも、何とか立ち耐えていた。
猿角は叩き壊された棍の先を見る。
なんてボウズだ…。本来であれば最も重要である、頭や急所だけでもと反射的に避けて受ける…それは戦いに慣れた奴なら誰もが行う行動。一先ず、生きてさえいればいいのだから。だが、このボウズは攻撃を受け入れると諦めずに、迷いなく頭で受け攻めてきやがった。普通に考えれば無謀とも言えるその行動…。勝算があってのことだったのか、それともただ真っ直ぐに、馬鹿だったのか分からないが…こいつは確かに…競り勝ちやがった。
振り返り見ると、ようやくハッと正気に戻ったように顔を横に激しく振り目を覚まさせて猿角を探し見るなり、身構える。
その様子を見て、口元が和らぐ。
—————!?今、俺…。
「ほんと、面白いっスね。鳶鷹は」
鮭馗羅の声が聞こえ、その方を見ると服が乱れた姿で歩いてきていた。
「お前にしては珍しく無茶してきたみたいだな」
「そうっスね。こうでもしないとこの場に間に合わないと思ったっスから」
「ほかん人らは?」
「一般人の保護に回させたっス。他も忙しいからここで無駄に人数を割く訳にもいかないっスからね」
「…こうなる事まで、お前の予定通りなのか」
そう折れた棍を差し出して見せる。
「もしかしたらってところっス。まあ、本音を言うと予想以上の結果…みたいスね」
「そうか。俺も久しぶりに単純に楽しめたようだ」
その意表を突く言葉と微笑みに、思わず呆然と見てしまう。
「それは…良かったスね…。だけど、もう終わりっスよ」
指先に魔力を溜めると、緑白の電気がバチバチと火花を散らす。
鳶鷹もまだ、元気があるように高まった魔力を無意識に使い強化を維持させる。
その二人を見て、棍をぶらりと力なく降ろして、ため息をこぼす。
「そうだな…」
諦めたかのようその言葉に警戒を少し緩めながらジッと様子を見る。
「鮭馗羅…そしてボウズ…。悪いことは言わねぇ。今すぐここから逃げろ」
「この状況で、今さらなんを言うてん——」
————!
そう尋ねようとした瞬間。
地震が起きたかのように空気が激しく震えた。
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木々の隙間を駆け抜け、ぶち当たる。
力量は五分で競り合いをするかのように譲る事無く攻め続ける。
すると、突如異形が拳の衝突と共に後方に飛び跳ね、木々の間を高速で移動し、真横から突進する。
それを赤華はまるで跳び箱をする体操選手の様に高く飛び越え、着地点を狙う、その拳による追撃を回転しながら受け流し、副部を掌底で打ち込みながら、足を蹴るようにバランスを崩させて、流れるように顎元に手を押え、後ろ向き倒させた。
綺麗に決まったその技に、一瞬呆気に取られるも、直ぐにジタバタと周囲を巻き込むように暴れ起き上がる。
「ナンデ、ジャマヲスル」
「私が貴方の事を任されたから」
まぁ、任せられたけど…一体私はどうすればいいんだろ。梓麻の口ぶりから知人…私も知ってる人そうなんだけど…。
「…貴方は何故その姿になったの?」
「スガタ…? イッタイナニヲイッテル」
自覚がない…。いや、私達には異形に見えているけど、彼女からしたら普通の姿として見える幻術による視覚的認識の相違…。
「あなたここ最近、何があったの」
「…サイキン?」
「そう」
「レンシュウデ アシヲコワシテシタ。イッショウ ウゴカナクナッテシマッタ。アシヲ ウシナッテシマッタ。ドウシヨウモナイ ソンナワタシニソレガアラワレテ コエヲカケテクレタ」
それ…?
「ソレハワタシニ ウゴクアシヲクレタ。コワレルコトノナイツヨク ハヤイアシヲ。ソシテ ジユウヲオシエテクレタ」
いや、これは違う…認識の相違じゃない…。彼女からすれば既にその姿が普通…彼女の常識となってしまっている。だから、私の問いに疑問を浮かべた…。
「貴方は、今のその姿に満足しているの?」
「…モチロン ドレダケハシッテモ ツカレナイ コワレナイ キモチイイ ココチイイ タノシイ」
「そっか、貴方が満足しているならいいけれど。なら、なんで貴方は梓麻を執拗に狙うの?」
「ナンデ…?ソンナノキマッテル。ワタシノマエニタチハダカル カベダカラ」
「壁?」
「ワタシガジユウニハシルトキニ アタマニヨギルカベ。ジャマデ ジャマデ シカタナイ。ダカラ…ドウスレバイイノ」
「どうすればいいって…そんなの」
唐突な問いになんて答えればいいのだろう、無責任な事は言えないなと思い悩んでしまう。
「ダヨネ」
「まだ私は何も…」
「ソノカベヲ コワサナイト トリノゾカナイト イケナイヨネ」
違う…私を見ていない。私に聞いていたんじゃない。彼女はただ…彼女の世界に映るソレに尋ねたんだ。
『ソウソウ』「ダカラ」 『ジユウノタメニ』 「ヒツヨウノナイ」『ジャマスルモノハ』 「ゼンブ」『ゼンブ』
「『コワスンダ』」
異形が纏うローブが荒狂い暴れ、姿を覆い隠す。そして幾つにも分裂し槍の様に伸びたそれが周囲に倒れた木々に突き刺さり、乱暴に自身に突き刺すかの様な勢いで引き込み、取り込み始める。
遠くからゴロゴロと雷の音が聞こえ、空を見上げると、若干赤みのある黒き雷雲が空を覆う。
するとバチバチと異形の真下、地面が帯電し溢れるように電気を火花を散らし始め次の瞬間には雷が落ち激しい揺れと轟音を鳴り響かせ、ソレは姿を表す。
ミノタウロスの様な巨体に、腕は大猿の様に更に太く、牛の尾を伸ばし馬の蹄をのばす。至る所から青白と黄白の電気を発し、背毛は五色に彩られ、毛は金色に身体には鱗が見え、頭は龍に似ており、二本の角を後方に伸ばす。
異形は先程までとは全く違う、重々しい雰囲気と感じたことの無い圧を発するしているのだが、まるで眠っているかのように呆然と立ち尽くしていた。
次は一体…どういう…。電撃を纏う獣でも、こんなにも混ざったのは聞いた事が無い…。
一切油断することなく警戒し、観察するように様子を伺っていると。ようやくそれは顔を上げてこちらを見る。
来る。
『…雷道』
そう、異形が声に出した瞬間真横に、稲妻が走ったと同時に瞬間的に異形がすぐ側まで近づいていた。
即座に放たれたその重々しい拳を何とか防御するのだが、電気を纏う、その拳から流れるように感電し、熱く痺れる痛みが全身に走りながら吹き飛ばされてしまう。
ふぅ…危なっいっ——。
何とか耐えて、次の動きに備えようとした瞬間、一瞬体が硬直してしまう。
それはおそらく先程全身に流れてきた電撃による痺れだと、そんな思考をするも、その無防備となった隙に再び稲妻が走り、顔を横に振り払うように殴り飛ばされ、地に着く前に稲妻を走らせ追い付き、足を前に飛んでくるサッカーボールを受け止めるように腹部を軽く蹴り、嘔吐く赤華に容赦なく、激しく帯電する右足で上から地面へと叩き付けるように蹴り飛ばす。
鈍い音を鳴らし地面をはね転げながら起き上がり、迫っていた追撃と地面を砕き蹴り飛ばされた、帯電した瓦礫を何とか避けて、余裕を持つようにこちらを見るその様子を見ながら、激しく乱れた呼吸を整えながら口を拭う。
この嫌な感じ…結構まずいかも知れないな…。
異形の次の出方を伺っていると、点々と地面から電気がバチバチと溢れて帯電しだす。
一体次は何が…。
少しその様子を見ていると、異形が姿を変えた時の事が頭をよぎった。
まさか…。
『雷鳴災歌』
異形が詠唱を告げた次の瞬間。嵐の如く幾多の落雷が降り注ぎ、雷鳴による天災の歌が轟いた。




