表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤夜 Sekiyo  作者: KIKP
理幻鏡想
19/38

理幻鏡想 5

もう夜の近い夕暮れ時。

既に十七時のサイレンが鳴り過ぎて赤夜の時間が近づいている。

家の明かりが点々と灯り、子供たちはすでに家に帰り宿題や親の手伝いをしており、街中の道路は少し早い仕事帰りの車が多くなる。

六情市営球場と大きな公園が併設されている広場。

「分かったよ…でも本当にあと少しだけだからね」

「はい。ありがとうございます」

渋々と許可を出す管理人らしき人に陸上のコーチの男が頭を下げ、事務所へと戻っていくその背中を見送って振り返り、定位置に着き手を挙げ準備の合図を出す。

その広場の一部を借り百メートル走の計測をしていた。

体操着姿の柳矢競が耳を澄ましてクラウチングスタートの位置に着き、その笛の音と共にスタートを切った。

練習は十三時から休憩を挟みながらしているというのに、疲れを知らないかのように乱れぬフォームで颯爽と走るその姿はカッコよくも美しく思えるもので、百メートルを走り切り、徐々にゆっくりとペースを落とすように走りながら歩き、コーチの元にあるゴールの線を駆け抜けた。

「コーチ…記録は…」

「…11.95だ」

それを聞いてわなわなと落ち着かず、満足出来ないように強く手を握り唇を噛み締め明後日の方向を見て行こうとする。

「競!何処へ行くつもりだ」監督の男が強く呼ぶと、足を止めるが顔を向けることは無い。

「…外周を走ってきます」

「だめだ。もう今日は休め」

「でもこれだけじゃ!私は、足りないんです!彼女に…彼女らに追いつくには…」

そう、指示を無視して練習に向かおうとゆっくりと歩みながら徐々にペースを上げようと早足になって行く。

「待て!」咄嗟に走り彼女の手を掴み静止させるが、彼女はこちらを向く気配は無い。

「お前が言うのならそうなのかもしれない。そればかりは私の考えで断言出来ることでは無い…。だがお前のコーチ、いや元選手として言わせてもらう。今日はこれ以上走るな!足を壊したら元も子もないだろう」

コーチの強いその言葉を聞いてハッとして、俯きながら、ゆっくりと振り向く。

「ごめんなさい…」

顔は合わせることは無いが素直に謝る彼女の頭をゆっくりと撫でる。

「いいよ。さぁクールダウンメニューを済ませて帰ろうか」

「…はい」

言われた通りに競は目に見える範囲のところで軽いジョギングを行い、その間に監督はベンチに置いてあるマットを広げてストレッチの準備をしていく。

競の足は決して遅い訳では無い寧ろかなり早い方だ。百メートル女子世界記録は1988年に記録された10.49。女子日本記録は1993年に記録された11.62。そして今日測った中の彼女の最も良いタイムは11.84。約0.2秒と僅かな差なのだが、陸上選手である彼女からすればそのわずかな差も大きな壁である。だが、去年の記録が11.9秒と12秒を行き来していた彼女であれば一年…いや、半年あれば日本記録にたどり着き、ゆくゆくは世界にだって通じる筈。筈なのだが…。彼女の壁は更に先を立ちはだかるのだろうな…。

「———チ…。コーチ?」

「ああ、すまない。ちょっと考え事をしていたよ」

「そうなんですか…一応二分のジョグは終えました」

「うん、おつかれ。それじゃあストレッチしようか」

「はい、お願いします」

二人はいつも通りのマットを使ったストレッチを終えてジャージ着て、コーチの車で学校まで戻る。

学校との距離は約二キロ程で車で五分程度なのだが帰宅中の車が多いいことでいつも少し進みが遅くなる。だからいつもは車の中で軽い世間話とかをするのだが、今日はそんな雰囲気ではなく。競は暗く窓の外を眺めていた。


—————————————————————————


歩地の事務所室内。夕暮れの橙色の明かりが窓から室内へと差し込み、それを背中に歩地はパソコンで情報処理を行っている中、来客対応用のようにあるソファーに千和々が深くもたれかかってタバコを咥えながら手に持つ紙を上に眺めていた。

煙草の煙がその紙へと上り行く為に、紙の下に立ち込めそれが見えているのか見えてないのかよく分からない。

「何を見てるんだい、それ」

情報処理をし終え、尋ねながら彼女と同じようにタバコを咥えて火をつける。

「今日あった彼女らの体力テストの記録だよ」

「そうか…ちゃんとやったんだろうな?」

「ん?ああ。それなりにちょうどいい記録にして提出してあるよ」

「それならいいが…そんなにも梓麻の記録が不思議か?」

「鳶鷹は飛翔の家というのもあっていい成績を出すのは分かっていたが、まさか彼女がこんなにも…高成績を出せるなんてね…。しかもこの街が期待する選手の柳矢競に走りで勝るなんてな」

「世の中には様々な天才がいる。彼女もまた天才の一人だが、梓麻はその天才の中でも逸脱した天才なのだからな」

「おや、歩地。君にしては珍しく寛大な評価をするじゃないか」

そんな軽い話をしていると、隣の部屋の扉が開かれよしろが半身を出して覗き見る。目の下には深い隈ができており今にも倒れそうにウトウトとしている。

「今日のノルマは終わったのかい?」

聞くと静かに頷く。

「そうか、なら。もう休むといい」

そう、休むように促すのだが、その場から動くことなくジッとこちらを見ている。どうやら聞き耳を立てていたようで続きが聞きたいと訴えているのが何んとなく分かる。

「そうか。なら、雑学をしながらお茶の時間としようか」

「私は遠慮しておこうかな、まだ帰ってやることがあるからな」

そう、てきとうに返事をして、立ち上がり帰ろうと扉の方を向いて歩き行こうとする。

「そうか…赤華が作ってくれたプリンを食べながらしようかと思っていたのだが、一つ残るようだな」

と千和々に聞こえるように呟くと、彼女は直ぐにその行く足を止め「いや、そういえばまだ時間もあって余裕があるしな…その雑学に付き合わせて貰おうか」と振り返って元の席に座る。

それを呆れているのか、そもそも興味が無いように静かにお茶の準備とティーセットを棚から取り出して机に並べ台所にあるコーヒーポットを持ってきて注いぎ彼女の隣に、歩地は冷蔵庫から先の話をしていた赤華から貰ったプリンを取り出して机に並べ座る。

「さて、先程までの会話はなんとなくは聞こえていたのだろう?」

「才能がどうとかって…」

「そう。では、久しぶりに問うとしようか。才能とはなんだと思う?」

「生まれ持っての素質…経験と訓練によって発揮し…物事を成し遂げる力…」

「なら、天才とは?」

「1%のひらめきと99%の努力だよ」

そう横から決め台詞のように千和々が口を挟む。

「名言を聞いている訳では無いよ」

「生まれつき備わった才能。人の努力では至らないレベルの才能を秘めたモノ。他に極めて独自性の業績、所業を示す。歴史や社会に多大な影響を残したモノと年若く高い才能を持つ者。

天と地という言葉があるように同じ優れた才能でもそれほどの差があり、昔ではその優れたことから天から授けられたとして天からの才能、天性の才能、天才となった…」

「そうだな。記録にまとめてある引用朗読お疲れ様と言おうか」

その反応がなんだか正解ではなかったようで自信を無くすように曇る。

「仕方ないんじゃないか?私個人で考えても同じ結論になるのだからいいじゃないか…」

「今回は雑学だ。これまでの経験や知識から柔軟に自身の意見を述べて欲しいのだけれどな」

「なら君は先のよりもまともで納得の出来る説明ができるのかい?」

「全てのモノに個体差があり、個々それぞれに秘められ優れた才能がある。それは君が話した先の説明からしても納得はできるだろう。

文学、理系学、美学、音楽学、運動能力とその五つからも幾数百という才能の隔てがある。例でいえば運動能力による短距離と長距離、跳躍力、腕力という風にな。それが俗に言う才能だな。

私があえて天才を称するとするならば、それは己の最も優れ、眠っていた才能を開花させたもの。又は天才とはほど遠いいその常人の才をその領域へと伸ばし至らせたものだろうな」

「その説明も少々堅苦しいと思うが」

「ふむ、そうか?」

「まあいいよ、そんな小さな事は。

確かに、己のその才能というものを見つけられなければ始まらないのはそうだな。だけど、それで何故君は梓麻を天才と称するんだい?」

「二人も知っての通り彼女は小学生一年の夏から父親の手伝いである選手のトレーナーとなった。その年から昨年までの全日本陸上大会、100m短距離走を優勝し続けた天才。閃卿院せんきょういん) れんのな」

「まあ、この記録を見てあれだけ運動神経が良かったら、確かに任せられるだろうね」

「その記録を見れば今は理解できるだろうな」

「なんだい?その含みのある今はって」

「よしろ。彼女がトレーナーとなった年、一年生つまり人生初の体力テストの判定は?」

「確か…D」

「は?」

「50mの記録は?」

「12秒8」

「嘘だろう?」

「調べたらすぐに分かるような嘘を着く必要があると思うか?」

「無いが…にわかには信じ難いな。流石に…」

「だろうな。それに関しては昔の僕も同感したよ。彼女の性格からして興味のない事だからと計測で手を抜くとは思えないからな。

さて次に進もうか…そもそもその才能とはどう身につき宿ると思う?」

その問いに少し悩みながらも小さく「分からない」と呟く。それを聞いて千和々を見る。

「単純な答えを出すとすれば…遺伝…DNAか?閃卿院 錬を例として親子共に走ることの天才と呼ばれているし、ほかにも飛翔家…鳶鷹のあの身体能力高さからも明らかだからな」

「その通り。生まれつき、生まれたときに備わる才能。それを私たち人間は先天的才能と呼ぶ。生命として誕生し、母親の体内で得た才能、それに起因するものがあるとすればDNAの他には無い。

世界での記録でも、名だたる名アスリートの子供のほとんどが身体能力に恵まれるケースが多く記録されている。それにより少し前から強いDNAを残し育てようとアスリート同士の結婚も行われているようだしな」

「生物の進化の一端と言う所か…。だが、身体能力に恵まれるケースが多くということは、その反対に身体能力に恵まれなかったという記録もあるということだな」

「ああ。何事もそう上手くはいかないと言うことだ。

ここから話す二つはただの仮説だから、深くは考える必要は無い。

DNAとは何年と描き続けた設計図だ。人類の歴史は現在では六百万年前からと考えられているが、この際は一千万年前からと仮定してもいいだろう。そんな昔から人類は遺伝子の設計図を記録し組み合わさりを繰り返してきた。そんな大量の情報量の中には様々な人間の情報がある。旧石器時代であれば狩りが得意なものが入れば不得意な者がいたり火おこしができる者、どうしてもできない者、泳ぎが得意である者、溺れてしまう者とな。

つまり生物の誕生時で得られるその才能というものは、そんな無限の情報、深淵の海からサルベージし無差別に取得するものだと考えられる。

アスリート同士の子で身体能力が高い者が多いいのはそのサルベージが基本的に水面下にある新しい情報を先に掘り起こしていると考えられる。そして両親にはない才能を宿したのは、その古く深くにあったその才を持っていたもの、又はその才能を磨いていた情報があり掘り起こされたといったところか」

「まあまあ、面白い仮説だな。だが、例えDNAが大容量ハードディスクであったとしても、それほど大昔の情報は残さないんじゃないか」

「ああ。だから二つ目が才合わせ。

才能の情報を1、2と数字で表記し得意であるものを+不得意であるものを-とするものとして、生命の誕生に必要な二つのDNAをAとBとしてそこから誕生するそれをCとする。仮にAは+1、2、-3、Bは+1、-2、-3とした場合Cはどの様に才を宿すと考えられる?」

その問いにしばらく二人は長考している間にコーヒーを飲んでくつろいでいると、よしろが答えが出たように顔を上げ、答えてみなよと視線が送られる。

「宿る才は不明…だけど、二十六通りの組合せの中の一人が生まれる?」

「その通り…と言いたいところだが、少し惜しいな」

そうして視線を横にもう一人に答えを問う。

「正解はほぼ無限通りの組み合わせから一人だろう?

全ての才が二人とも得意だから不得意だからと+や-通りに行く事なんて無い。時に掛け算となったり+や-した後にそこから二で割られたりと様々の可能性があると言ったところだろうか?」

「そうだ。その場に出た要素だけに気を取られては行けない。必ずしもそれらが全てでは無いのだから。1と2の才が作用し合うといった第三、第四という可能性の要素も考慮するのが大事なのだよ。結論から言えば正確な答えは今の時代では出ないだろう。出るとすればあと半世紀と少しと言ったところか」

「おや…そんなところまで目処が立っているのか?」

「あくまでも過去から現在までの研究、科学の進歩から仮定してるに過ぎないよ」

「ふ〜ん」

「さて、ここまでが先天性才能について話したが、ここからは後天性才能だが、後天性才能とは何かな?」

「生まれた時は通常ではあったものが、人間生活を送る事で起こる出来事や環境などといった様々な事柄を原因として目覚めたもの…」

「いい説明の仕方だ。それで問題ない」

「ふむ、そう話を続けるが先天性と後天性の才能の違いとは結局のところ差別化できなくないかい?」

「ああ、そうだよ」

「ああ、そうだよって…随分とさっぱりしているな…」

「言葉を喋り始めた時に使われる言語も基本的に赤子の時に聞いている言葉をベースとされているし運動能力に関しても身体能力が高ければバスケも野球もサッカーも何となくこなせるのだからな。結局そういうような点で、この二つを見分けるには幼少期からの情報によってしか判断することはできない。結局そこの判定は曖昧になるのだが。まぁ、ボールを触って数分でドリブルもシュートこなせれたというのなら、それは確かな先天性の才能と言えるだろうな。

さて、先天性、後天性の前提についてはこれくらいでいいだろう」

そう話しながらノートパソコンを立ち上げて操作して行く。

「これが先までの話で出てきていた三人の体力測定記録だ」

パソコンを回転させて画面を見せそこにうつり出されているのは梓麻と競、錬の記録だった。

「これは…なかなかに凄いものだな…」

フォルダを確認するにそれらは確かに数年前から記録されたものであるのが確認でき、今さっき捏造して作ったものでないのが分かる。

競と錬の記録は最初の記録から8.53秒8.34秒と二人の記録差は常に0.01から0.2とかなり拮抗しているが常に錬の記録が競よりも勝っていた。

小学一年生にして高校生の平均レベルという圧倒的実力には確かに驚くのだが、二人が気になった点はそれでは無く梓麻の記録だった。

彼女の最初の記録は先の通り12.8秒と、小学一年生としては平均よりちょっと遅いくらいでなんてことないのだが、二年生の前に二人とは別に一つ記録されており、そのタイムは8.02秒だった。

「それは彼女の体力テストを終えてから一週間後、錬のトレーナーとなる前日に記録されたものだ」

「つまり梓麻はたった6日で約4秒強もタイムを縮めたというのかい?」

「その通りだよ」

「確かに彼女は 『ただ単純に黙らせて従わせる為よ。そもそも実力も無い奴から教わる事なんて無い』と言っていたが…一体どういうトリックなんだ…これは?」

「下のタスクバーに開かれてないのがあるだろう。それを開いてみな」

言われた通りに閉じられているそれを開くとノート一冊分に及ぶ記録の資料が出てきた。

ぶちが彼女がまとめた記録をそのまま資料としてまとめたものだよ」

その資料というものは小学生がやる自由研究とはかけ離れた、到底子供が書いたものとは思えないモノ…そう、これは、学者の論文というのが一番合っているだろう。

まず初めに自身の100mの記録を取ることから始まる。だが、ただ走りタイムを記録する訳ではない。スタート地点から20mごとに横から六台のカメラを用いて記録した。それはスタートからゴールまでの前傾姿勢、腕、足の角度。腕の振りや足の伸ばし、上げ幅。初速と加速、現最高速に減速地点といった毎秒速度とあらゆる数式が使われるまとめられている。

そしてそこからオリンピックなどといった映像を記録されているモノを基に幾つか選出し同じ様にまとめ記録した。

そこから共通点となる箇所をまとめ上げ、自身、各選手の身長と体重を計算し、自身に最も合い、最も速く走る理論を仮定し、それを一日かけて脳で意識させトレーニングと共に体を動かす。それは子供が物を掴み、握り、離す、バットで素振りを、バスケットボールでドリブルをするように繰り返し違和感を無くなるように体に覚えさせる要領で。

最速で走る選手たちの走る動きや姿勢から自身の身体に合うもの描き、

体に定着させる。理論的に考えればそれが最も理想的なものでより良い結果をもたらせるだろう。

そして翌日の二度目の記録。タイムは11秒45と1秒縮まった。タイムが縮まったのを見ればいい事なのだが、それは彼女の理想では無い。思っていた結果では無い。そう、現実とはそう理論道理にはいかないものなのだから。

だが、資料を読み進めるとそれは予定調和だったようで、その二度目の記録から更に計算や姿勢などの見直しと修正点とを導き出し、体の動きなどの修正を行い改善し、三日目の記録では9秒22と更に2秒縮めた。

その後、四日目、五日目、六日目と同じように修正と改善、見直しを繰り返し、閃卿院 錬のトレーナーとなる日に50mの競争を行い、彼女は8秒02の記録を出し勝利したのだ。決して錬が不調だった訳では無い。彼女もその競争で8秒15と新記録を出していたのだから。

そこからは改善案や修正案と様々な数式が書かれており、何かを導き出そうとしていたが、その先は途切れており、続きを知る事は今はできそうにない。

「つまり、自分が導き出した理論を基にその才能を開花させたということか。それにしてもこの数式の数々…この時には既に数学は学者レベルだろうこれは…」

「彼女は魔術道具の家系である綾嶄寺の家に生まれながら魔力を持たないだけでなく、家の研究、開発に関わる事を禁じられた。だが、彼女は諦められず自身で研究開発をする為に独自で開発研究をしていた。それで必要であるであろう事を独学で身につけたのだろう」

そう話しているといつも座っている椅子後ろから窓を叩く音が聞こえ、立上り行き窓を開ける。そこには窓手摺があり五匹の猫が集まっていた。猫たちは歩地を見上げて何かを伝えるように鳴いており、それを聞いて横から空となっている二つの銀皿に五匹分のキャットフードを入れて与える。

「走ることに優れた父親から生まれ、環境からもそれなりに恵まれたその記された道を進んだ者。環境に恵まれており、望んでいたものには見放されたが、それを糧に走る事とは別で、ここで出すなら思考的才能、発想のセンスにより並の才能を後天的に開花させたことができた者。一般的な家庭と環境で生まれ、何かをきっかけに進み、努力して才を伸ばしてきた者といったところだろうか」

「ふむ、ならばその三人の環境が入れ替わり又、全く異なればまた違った結果が出ていたかもしれないな」

「そうかもしれないし、そうでもないかもしれないな」

「おや、その心は」

「才能とは聞こえがいいが、それは場合によっては一種の縛り。重りであり毒でもある。

生物とはいつだって理想を抱き追い求める。それは単純なもので興味や探求心、承認欲求、快楽といったものに流されやすい。それ故に最も手軽く間近に自信のあるものに固執し頼り勝ちとなってしまう。そうなれば視野が狭くなり、本来なら見えていたであろうものも見えず、経験していたでろうモノも知ることが出来ずに、可能性を逃してしまう。

そんな状態で容易く越えられない壁が現れた時、今の話を前提に二人がいたとしよう。

一つの才だけに固執した者。その才ほど優れたものとは言えないが、幾つかの知識と経験という手札を持つもの。この二人差は歴然だ。と一般的にはなるが僕はそうは思わない。何故ならその壁、いわば問題が何でどう来るかなど分かりはしないのだから。前者に有利なものもあれば後者に有利でもあり互いに平等であると言う可能性も有り得る。

有象無象の才能と天才も、全て運命のような、ありとあらゆる出会い、巡り合わせからなるものの様だからね。何が起きて、どうなるかなど、それは僕たちは疎か、神ですら分かりはしないさ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ