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赤夜 Sekiyo  作者: KIKP
理幻鏡想
18/38

理幻鏡想 4

昼食のひと時を終えて、当初の目的であった理鏡様が現在滞在し営んでいるというビルの元へと向かっていた。

その場所はファミレスを出て少しもどり右に商店街がある交差点をそのまままっすぐに進むと六情駅が見え、そこのT字路を右に行くと、また別の木々の生えた少し大きな通り、辺りを見渡すとある一つのビルの入口の両脇にキリストの宗教服のようなものを身に纏う男二人おり、そこから伸びる人の行列が見え、その最後尾に並ぶ。

「今日からというのもあって少ないわね」

「そうやな、だいたい四十分くらいやろか」

「う、うんそのくらいかなぁ」

「今日からだというならもっと早く回ってくるでしょう」

そう三人は言うのだが、軽く数えて三十人以上の人が前を並んでいる。それが少ないとは、一体三人の言う多いい時はどれほど並んでいるのだろうと思いながら、尋ねる。

「そういえば今更なんだけど、理鏡様って一体どんな人なの?」

その言葉にまぁそうだよね~と言う風な空気が漂う。

「赤華が知らないのは大体察していたわ。そうね…私もこうして実際に会いに行くのは今日が初めてだから正確なことは詳しくはないのだけれど、噂通りなら"最も会いたい人に会わせてくれる"人よ」

「最も会いたい人に会わせてくれる人?」

「せやで。誰でも会えるらしいで、芸能人やヒーローやらと言った憧れの人とか、会いたくても絶対会えない人とでもあえるらしい」

「会いたいけど絶対会えない?それって…」

「も、もう既に亡くなってしまった人とかだよ」

「つまり降霊術とかそういうやつ?」

「まぁそこだけ聞くと大体の人はそう考えるけれど、先に言ったてたでしょ誰でも会えるって。今も現役の人とも会えるのよ」

「あ、ほんとだ…だったら降霊術では無いのかな?」

「さあね…そればっかりはちゃんと体感して見ないことには分からないでしょうね」

「まあなんにしても、テレビとかにも出演するくらいの人やからな、かなりの有名人やで」

「う、うん。でも年に二度くらいしか出演しないけどね…」

「そうね。有名は有名でも、いい方よりも圧倒的に悪い方で有名だけどね」

「悪い方?」

「売り出す組織が組織だけにテレビではやらせと叩かれたり、精神操作によってあえて非公式の宗教団体を作り、悪質な勧誘や悪徳商法をしているだとかってね。まあ一回の利用料考えてみればそんなもの分かり切っているでしょと私は思うけれどね」

「確かに一回じゃなくて一分千円は高いもんな」

その鳶鷹の言葉に確かに一分千円かぁ高いなと「へえ~」と漏らすのだが、梓麻と唯一が「は?」「え?」と鳶鷹を見る。

「なんや?二人共」

「あんた今さっき何て言った?」

「ん?一分千円は高いか?」

「それで今あんたの所持金は?」

「三千五百ちょいやな」

それを聞いて二人がため息を吐くと、前を並んでいた人達が何かもめながら私達の横を通りどこかへと向かい、列の進みが早くなった。

「どうしたんやろか、あの人ら」

「金額を聞いて納得できなかったんでしょ」

「そんな揉めるもんなんか?一分千円やろ。そこまで言い合いになるような事なんてないやろ」

「一万よ」

「…今なんて?」

「だから一分一万よ」

「一万…?」

間の抜けた顔でそう聞き変えし、ゆっくりと唯一の方を見ると、コクりと頷く。それを見て身体を震わせながら唯一に縋り付く。

「ゆ、唯一。すまんけど…か、貸してくれへんか」

「ご、ごめん。僕も一万円ちょっとしかないんだ」

うっ…流石に楽しみにしてた唯一に貸してもらうなんてできへんな…。しゃあない今回は諦めるか…と落胆して下を見ていると横から諭吉の札がひらひらと目の前を揺らぐ。ゆっくりと横を見ると梓麻が差し出していた。

「現在の最低賃金は約六百円。大体十七時間、私の手伝いをするというなら、それで貸してあげるわよ」

そう何か企んでいる様に告げるのだが、

「おおきに!おおきに!何でもするで」

とそのひらひらとさせる梓麻のその手ごと両手で握り締め見上げる。それは傍から見れば愛の告白をするドラマとかのワンシーンにも見えなくは無いことも無いだろうか。

「即決ね…。まあ嫌いじゃないわ。それで貴方は誰に会うつもりなの?」

「わいか?わいはな、仰天・超奇想天外ヒーロー・ヤバイバーや」

「…ああ、そう。所であなた洋画とか見るかしら」

「おおい。聞いといてなんやその反応はおい。まぁええわ。もちろん見るで。ゴーストとかホーム・アローン、シザーハンズにダークマンとか色々見てるで?」

「それは吹き替えかしら」

「おう、もちろん。英語はさっぱりやからな」

「なら一万円でとりあえずその…」

「ヤバイバーや」

「そう。それとこのもう一万円でダークマン?に会わせてもらいなさい」

「ん!?ええんか?」

「ええ、それくらいはサービスしたげるわ。だけどそれ以外と会おうとしないことを約束しなさいよ」

「おう、それはしっかりと誓ってやれる」

そんなやり取りをしている内に列は進みとうとう順番が回ってくる。

「では、貴方の祈りの数をお納めください」

そう扉の横に立つ職員の男が声をかけて手を差し出す。

「ほら、お先にどうぞ」

「おう」

鳶鷹は扉の傍に立つ職員の男に二万円を差し出す二人が一礼して扉が開き、「どうぞお入り下さい」と招き鳶鷹が入ると直ぐにその扉が閉じられる。

「ほら、貴方も」

そう梓麻が唯一に一万円札を差し出す。

「え…受け取れないよ。流石に…」

「気にしなくてもいいわよ。正直最初から奢る気でお金を下ろしてきていたから」

「でも…」

「それでも気にして納得出来ないのなら、受け取らなくても構わないし、先に鳶鷹に話してた通り貴方も鳶鷹と一緒に一万円分の時間、私の手伝いをしてくれたらそれでいいわよ」

「う、うん。分かったよ。ありがとうございます…梓麻さん」

「ええ。はい、赤華も」

「私もいいの?」

「まぁ貴方は家に住まわせてもらっているし、これくらいは私が出すわよ」

「ありがと梓麻。でも私も二人と一緒にお手伝いに参加するよ」

「ええ。貴方の気が済むようにするといいわ」

「うん。そうするよ」

「それで次は誰が行く?私はいつでも構わないけど」

「私は最後がいいかな」

「じゃあ、僕次行くよ」

「なら私は三番目ね」

と、そんな順番を決めているうちに終わったようで、とても満足した様に鳶鷹が出て来て、こちらへと来ようとするが直ぐに別の職員に引っ張られ、反対側の歩道に設置されているベンチへと連れて行かれる。

まぁ再び前から並んだりと、後方からの割り込み等と勘違いされての騒動を避ける為のものなのだろう。

そしてそれと変わるように唯一が入って行き、やはり一分とは早いものですぐに出てくる。その様子は鳶鷹とは違うもので、恐らくそういった人と会ってきたのだろう。

「それじゃあ次は私ね」

「行ってやっしゃ~い」

「たぶん、私は二人分するかもしれないから。ちょっと遅くなるかもだけど気にしないでね」

「うん。分かった」

たった二、三分別れるだけなのだからそんな見送りの様にしなくてもいいのだけれどと、手を振るそれに返事をする様に返して職員に一万円札を渡して中へ招かれる。

扉を抜けてすぐに見えたのは明かりの全く無い玄関のような場所で更に扉のある二重扉の構造だった。

入ってきたその扉が閉められ数秒して先の扉が開かれる。すると奥から青白い光が眩く目を差す。

そこに見えたのは教会などでよく見るキメ細やかに装飾された神秘的な芸術のステンドグラスだった。

そしてそのステンドグラスの前に立つ神官又はキリスト風の巫女を示す衣装を身に纏ち黒いベールで顔を隠す理鏡がそこいた。

特に何か指示はされていないが、もう入っていいのだろうとその元まで歩き進む。

その部屋の中は、まるで引っ越してきたばかりというように椅子といった家具は一切何も無いのだが、私達が俗に言われる迷い人だとするならば、彼女の元まで迷わないようにとある導きの道の様なレッドカーペットがあるくらいだろうか。

そして進むにつれて奥にあるステンドグラスの装飾が良く見えてくる。

その装飾が見せるそれは、湖と辺り一面に咲く白い彼岸花。その傍に佇む白いマントを身に纏う少女とそれに巻き付く金色と赤い瞳の白い蛇。その周りを漂う七つの黄色い球体の上に輪のようなものがついているように見える。

部屋の中には彼女と私以外に先程入ってきた扉の両脇に二人、彼女から三、四メートル離れた両脇の壁にいる二人のみ。

護衛にしては離れすぎでは無いだろうかと思いながら歩み行く。

彼女を目にするのは二度目だ。

と言っても二年ほど前、テレビの画面越しでだが。

その時より成長しており、赤華より頭半分、少し高いくらいだろうか。

「では、今貴方の最も会いたい方を思い浮かべてください」

何か響く透き通ったその声をかけられて、考える。

誘われて一度その目で彼女を見てみたかっただけで特にこれといって会いたい人というのは居ないのよね…。だけどこのまま試さないのも勿体ないし…。

そう、熟考していると。ある事を思い出してそれを思い浮かべる。

すると一瞬の瞬きと共にその黒いベールに隠れていた顔が思い浮かべていたその人物の顔を見せ、その下の服装は愚か身長までもその人物のそれと変わっていた。そして、直ぐにその人物が梓麻向かって何かを言うのだが、それを気にせず手を軽く上げて、「もう結構よ」と断ると姿がぼんやりとして黒いベールに隠れた元の姿と戻った。

「何か気に入りませんでしたか」

「いや、問題ないわ」

「そうですか」

「申し訳ないのだけれど、別の人と会いたいのだけれどいいかしら」

そう言って一万円札を出す。それを聞いて理鏡は両端にいる男二人に確認を取ると二人共が頷く。

「ええ、大丈夫のようです。では、先と同じ様に貴方様の会いたい方を思い浮かべてください」

その言葉を合図に再び思い浮かべると先と同じように思い浮かべたその顔と格好の人物へと変化する。

やっぱりそういう事か…。

「ありがとう、もう大丈夫よ」

そう言って振り向き出口の方へと歩き出す。

「えっ…あの…」

余りにも早く、時間が余っているからか、戸惑いながら呼び止めようとしてしまう。

それを聞いて顔だけ振り向こうとすると、右側の男の方から壁を指で突いた様な音が響いた。

その音に、理鏡はハッと自身を落ち着かせ、伸ばしかけていたその手を仕舞う。

「申し訳ございません。なんでもありません」

「そう…。それじゃあね」

出口へ歩み行き、入口に立つその職員に先の一万円札を渡し開かれた扉から出て行く。

出て直ぐに見えたのは赤華のその姿で、会話を交わすことの無いように職員に鳶鷹と唯一のいる方へ行くように誘導されてしまう。それと変わるように赤華が皆の方に手を振ってビルの中へと入って行った。


あれが理鏡様…。聞いてて思った通り、なんか凄みというか雰囲気のある人だなぁ。身長も私より少し大きいし、歳上なのかな。

「では、今貴方の最も会いたい方を思い浮かべてください」

その問いを聞いて直ぐに思い浮かべると理鏡の姿が変化し、その瞬間、それを見て静かに赤華の目尻から涙が溢れゆっくりと頬を垂れ地面に落ち、開いた口をゆっくりと閉じる。

そこにはいつの間にか床布団が敷かれある人物がそこに起き上がり佇んでこちらを見ていた。地味で色あせた和服を身に纏い赤華と同じ赤く長い髪が垂れ伸びている。顔色が少し悪く病弱なのか瘦せこけ、掛け布団の上に添え置く彼女の両手の甲は薄っすらとだが、骨が浮き出て見える。

「分かってる。うん、分かってるよ」と小さく呟き、しばらく何も言わず静かにそれを眺め続ける。

そして時間である事を職員の男が知らせようと赤華の元へ行こうとした瞬間、赤華が理鏡に頭を下げる。

「ありがとうございました。理鏡様」

「いえ。あなた方皆様の幸福が私達の喜びですので」

そう小さく手を振る彼女に軽いあいさつ程度に返して振り返り、開かれたその扉を通って皆のいるベンチへ向かい合流する。

「さて、目的は終わったけどこれからどこ行くのかしら」

「そうやなぁ…。特に何も決めてないな」

「私も今日はみんなについて行くよ」

「一気に行きたいところを消化するより、何日もかけて行く方が楽しみを待つという楽しみがあるものね」

「まぁね」

「確かにそういうのもあるんやな。じゃあ唯一は何かあるか」

「えっ…ぼく?」

自身に提案を振られるとは思って無かった様でびっくりしたようにキョロキョロとら皆を一度見て考え、指先でモジモジとして小さく答えを口に出す。

「ぼ、僕は…皆がいいなら、もう少し歩き回りたい…かな…」

そんなか細い声で皆の機嫌を伺うように言う。

「いいね。私も皆と色々と歩き回りたいから行こうか」

「そうね。私も地図しか見てなかったから実物を直接見たかったわ」

「地図って何?」

「初日のことでね。商店街の入口にあったパンフレットの地図を軽く見たのよ」

「ああ、あの時の。それなら梓麻にガイドさんしてもらおうかな」

「ガイドってここ何も無いじゃない」

「そんなことないでしょ…たぶん」

そんな軽い会話をしながら進む二人の後ろ姿を鳶鷹と唯一がその場に立ち止まってみる。

「ほらな。あの二人なら真っ直ぐとお前の事も見てくれるし聞いてくれる。大丈夫やから気にすることない思うで唯一」

「…うん…そうかも…しれないね…。鳶鷹」

ゆっくりとその手を伸ばす行くと

「お〜い、二人共何してるの?」

「なんで立ち止まってるのよ…。置いていくわよ」

そう二人が着いてきていないことに気がついて少し先のところで二人が立ち止まって呼び掛け待ってくれている。

「ほら、行こで」

鳶鷹が声を掛け、少しずつ伸ばしていた唯一の右手を握り締める。

「う、うん…」

咄嗟のことにびっくりしながらも、返事を返して手を引く鳶鷹に連れられて待つ二人の元へと走っていった。

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