space watcher
☆リヒロ☆
僕達は【星を見詰め、星の声を聞く】のが仕事だ。
全く生産性はない。
丘の上の王子様達からの、施しで生かされているみたいなもの。
僕とジィとトウは人里離れた山の上にある観測施設で、レンズとパラボラを小惑星に向けて生きている。
残された人類の探索の為に。
昔、沢山の人が死んだんだって。
ジィの先祖達は、丘の上の王子様の救いの手にすがり生き残り、救世主の下で生きる事になった。
僕は長谷川利裕。
でも、登録名は長谷川リヒロ。
この世界では僕達は名前に意味を持たせてはいけない。
音としてしか扱われない。
丘の上の王子様では無いから。
そして姓は枷なんだそうだ。
長谷川を名乗るのはその枷を継承している、と丘の上の王子様達に表すため。
丘の上の王子様達は、僕達とは違う世界に活きている。
例えばヴィジョンに現れるスポーツは丘の上の王子様達しか楽しむ事は出来ない。
僕達はヴィジョンで見るだけ。
ジィもトウも、ガイロイドはもっていない。
全てを自分の手で行う。
丘の上の王子様は、沢山のロイドに囲まれている。
多分、僕もガイロイドには縁が無いだろう。
僕もトウの様に生きて、僕の様な跡継ぎを残し、ジィの様に老いて、先祖の様に死んで行くのだろうと思っていた。
その日、代わりばえのしない観測施設に変化があった。
トウがたまたま、使っていなかった……使えなかったパラボラを動かしたのだ。
考古学博物館に寄贈するために、たまたま動かしてみたのだ。
しかし、その古いパラボラにその波長が届いたのだ。
その微かな波長の乱れは、密かな音になった。
その密かな音は、連なりテンポとリズムとハーモニーを造り、意味のある声となった。
それは歌だった。
高く、低く、秘めやかに、伸びやかに、意味のある言葉をのせた歌だった。
<…………事が出来るとし…………て行きたい……………………の声は聴け…………けは響いてい………………る空に見……………つの日か見た…………>
歌詞をのせた声、音楽。
「リヒロ、座標の星は!」
父は興奮していた。
「んと、小惑星ヘカテ」
「ヘカテか、ヘカテ。ジィ呼んでこい!」
僕はその歌を聴いた。
ノイズが入っているけど、聴いた。
その声は僕達くらいの十二、十三歳の男の子どもの声にも聴こえた。
だけど、もっと近いのは、幼い頃ライブラリーで一度だけ聴いた、ジィの祖先の、その前の、その前の、その前の、ずっと昔の世界にいた、デーヴァ達の歌声。
僕は観測施設から飛び出し叫んだ。
「ジィ!星のお姫様の歌が聴こえた!」




