目的がわからない
生理の話が出て来ます。そのような話題が苦手な方はご注意ください。
どこかおかしいと思っていた。
だけど、何がおかしいのかは、わからなかった。
ルシアンと一夜の過ちを犯したと騒がれた。
正直、記憶がないし、翌朝のダルさが眠り薬を盛られたときに似ていた。
金持ちの平民だったから、何度か危ない目に遭っているんだ。
後から思い出したことだけど、二か月くらい、アデライードから生理用品を貸してと言われなかった。
返してくれないから、あげるつもりで渡していたけど。
田舎者と同級生たちにからかわれる中で、最初に親切にしてくれた人だったから。
でもね。落ち着いて周りを見れば、田舎貴族たちのグループがあったんだよ。教室の隅の方で、目立たないようにしてただけ。
放っておいてくれたら、そっちに参加したと思う。
「親友」。そんな言葉をアデライードは好んで使っていた。
私が田舎にいるときも親友がいた。幼なじみで、かけがえのない親友。
どこに行くのも、何をするのでも一緒だった。
だけど、私が貴族になって王都の学園に行くって言ったら、絶交された。
それから「親友」って、胡散臭いと思うようになった。
人間不信ならぬ、親友不信って感じ?
「親友だったら、王都に行かないはず」って、なんか脅迫みたいだったし。
つまり、私もかなり傷ついちゃった訳よ。いつか、傷が癒えるといいけど……。
でね、「親友」ってなんだか甘いシロップをかけて、雰囲気に酔っているだけな気がしているんだ。
失敗したパンケーキだって、蜂蜜とバターをたっぷりかければ食べられるじゃん。
で、貴族学園時代の不祥事に話を戻そう。
田舎って言っても、王都から半日の距離に住んでいる両親が呼び出された。
貴族の話術に翻弄され、流されて私は伯爵家に嫁いだ。
私はずっと胸がむかついていて、自分の事なのに話し合いには参加できず。
珍しく寮母が世話をしてくれた。普段はやる気なくさぼってばかりなのに。
そんな流れで私は退学させられ、ベルクール伯爵家へ引っ越した。
相手のルシアンはそのまま学生をやってるって、何?
ふざけんな。
ルシアンが自分の仕事を押しつけてきた。
「君も何もしないのは手持ち無沙汰だろう?」
そう言って、彼の書類の清書を任された。丁寧に書けばいいだけなのに、と不思議に思うよね。
やってみてわかった。
ルシアンの文字は読みにくい。
しかも、けっこうスペルが間違っている。前提となっている法令を調べないで、なんとなくの記憶で書いている。
暇だから、調べて訂正しながら書いた。
まだ、学生の令息に割り振るような内容だから、難しくも重要でもないしね。
「ルシアンも結婚して成長したな」
と義父は機嫌が良かった。
いや、結婚してもルシアンは何一つ変わっていないが?
どうやったら、そんな楽観的に考えられるんだろう。
しばらくして、下血した、流産したらしい。
「慣れない環境で、大変な仕事を押しつけてごめん」
ルシアンに手を握られながら、そう言われた。
ベッドに横たわり、目眩でクラクラしながら、何だか芝居がかっているなぁと苦笑いが浮かぶ。
なんか、よくわからない赤ん坊が来た。
私の子どもとして届けるらしいけど、そういうことしていいの?
つーか、この子、アデライードの子じゃない?
うわ、私、嵌められたんじゃん。
あいつらの行き過ぎた異性交流の尻拭いじゃん。
えげつない。汚い。
普通の令嬢だったら、泣いちゃうよ。
てか、婚約者同士なんだから、子どもができても問題なくない?
一夜の過ち事件から半年くらい経って、ようやく彼らが何をしたかったのかがわかった。
私、怒ってもいいよね?




