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ドラゴンの親玉聖女になりましたが今日も振り回されています  作者: たくみ


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6.特別な法

 アルバート王国の5代目の国王が制定した法


 『 聖女を虐げた者は処刑 』


 要するに聖女を虐めたら許さんぞという法。実にシンプルでわかりやすい内容。ドラゴンの親分など誰が虐める?要らぬ法だと言われる法。


 だがアルバート王国の法典ではでっかく太字で書かれている。


 そもそもなぜ5代目はこんな法を制定したのか。その理由は王の日記に書かれている。 


 ――――――――――


 私は地獄を見た。


 深夜、窓を叩く音で目を覚まし窓を見ると二つの光り輝く黄金色の瞳。急ぎ窓を開ければ真っ黒な巨大なドラゴンがいた。そしてその背には今にも息絶えそうな娘。

 

 その姿はガリガリに痩せ細り髪の毛も短く不揃いに切られ、身体は垢まみれ傷だらけ、いつ最悪の事態になってもおかしくないほど衰弱していた。


 ドラゴンが関わる娘――。


 何をすべきか察した私は自らのベッドに娘を寝かせ医者を呼び手当てさせた。あとは娘の体力、運次第という段階でドラゴンに近づけばパクリと咥えられ気づけば空を飛んでいた。


 混乱したものの、眼下に広がる自らが治める国の光景にちょっと興奮しちゃったりなんかして……。


 だがそんなものは暫くすると吹き飛んだ。


 

 目の前に広がるのは――無だ。


 人も木も草も建物も何もない。真っ黒な更地。


 国が滅ぼされていた。



 ドラゴンは暫く国があったであろう更地の上空をぐるぐると回るとアルバート国へと戻り自分を寝室へと下ろした。


 ドラゴンと目が合うと言葉はわからなかったが、何を言いたいかはわかった。


 娘を虐げたらああなるぞ、と。



 ――――――――――


 幸いなことに回復した娘から事情を聞けば、両親を失い引き取られた親戚の家で酷い目に遭ったそう。その親戚につられ近所の者達までも彼女を虐げるようになったらしい。


 奇跡的に18歳の誕生日まで生き残ることができたが、もの言えぬほど弱った娘が自分たちのボスだと気づいたドラゴン達は怒り狂い思わず国を滅ぼしちゃったらしい。


 

 この国に連れてきたのは一番勢いのある国だからだとか。


 最近戦争戦争で疲弊していた心が躍った。


 ドラゴンに認められるなんて少し、いやかなり嬉しい。


 もっと頑張ろう。


 

 ――――――――――



 私はある法を制定することに決めた。


 当たり前すぎる法。


 こんなものなくてもよい者ばかりであれば良かったのだが、人とは残酷な生き物だ。


 聖女は18歳になるまでわからない。だからこそこの法が聖女を守るはず。


 自分の娘が――


 親戚の娘が――


 近所の娘が――


 誰もが聖女である可能性があるのだ。


 それは即ち身近なものを虐げれば処刑になる可能性があるということ。この法が人を虐げる者たちのストッパーになるといいなぁ。


 これに願うは聖女の安全だけではない。


 自分の力だけで生きられぬ子供というのは虐げられやすい。私が守るべき少女たちが辛い目に遭わないように。


 ………少年たちはすまない。今はまだ良策が浮かばない。過ぎたる処罰は反乱を招く故な……。暴力を振るう親はグーパンOKなんて法でも作るかな。



 ――――――――――



 やはり聖女は偉大だ。


 私の愛する国は彼女とドラゴンのおかげで更なる発展を遂げた。


 強大なる力。


 その力は繁栄をもたらすと同時に災厄ももたらす。


 我が子孫たちよ。決して聖女を蔑ろにするな。




 私が愛する民たちよ。


 聖女を……人を虐げる者に決してなるでない。


 それが自分を


 自分の大切な人を


 関係ない人を


 国を




 守ることに繋がるのだ。



~~~~~~

 



 この日記は国が運営する図書館に写本が置いてある。ちなみに学園の教科書にも一部載っている。それだけこの思いを王家は民に伝えたいのだ。


 だが現実は非情であり、そんなに優しい世界ではない。


 だからアルバート王国は5代目以降の国王たちもあの手この手で聖女が虐げられない政策を打ち出したのだが……


「なぜ聖女というのは虐げられるのだろうなぁ」


 ポツリと呟かれたリカルドの言葉にその場はしん、と静まり返る。レオナルドと宰相と大将軍はしらーっとリカルドを横目で見る。


「え、あ、いや、決して聖女が悪いとか言っているわけじゃないからな?」


 幸運なことにアルバート王国にもその後何度か聖女は誕生した。したのだがなぜかいつも虐げられている娘ばかり。


 国が更地にならなかったのは、奇跡としか言いようがない。まあ山がハゲになったり、王宮が全焼したり色々とあったものの……一応国は残った。そして心優しい聖女の力により国は繁栄し続けた。


「わかっております陛下。もしかしたらドラゴンに好かれるかわりに人間にとって不快な臭いでも巻き散らかしているのかもしれませんね。私臭いです?」


「オリビア嬢!?」


「いやいやオリビア嬢、君から漂うのは甘い香りだけだよ。いやぁ若い女性はいいねぇ。不快な臭いがしているのは中年のお三方だけだ。あれだよあれ、ほら加齢臭」


「レオナルド!?」


「「冗談です」」


 色々と笑えぬ冗談?に顔が引きつるリカルド。


 中年のオヤジ達の臭いはとりあえず横においておき……


 そう。なぜか聖女は皆虐げられてきたものばかり。法を整備しようと政策を打ち出そうと守らないやつはいるわけで。そしてなぜかそういう者の近くに生まれるのが聖女だったりする。


 ドラゴンが言うにはもともと聖女は聖女として生まれ18歳で能力に目覚めるだけだそう。虐げられたから聖女の力に目覚めるわけではないらしい。


 聖女が虐められるのは人間の性根が腐っているだけだと。美人で頭がいいから妬まれやすいんだろうとのこと。

 

 だからいつも聖女が能力に目覚める時厄災も起こる。


 聖女が身体であれ、心であれ瀕死状態であればその国が滅び、他国が栄える。


 まあまあ元気そうであれば、聖女が住んでいる街だけ火だるまにされたり、王宮の食料庫が燃えたり、聖女を蔑んだものの首が全員飛んだり……まあ色々と打撃を与えられる。


 のだがなぜか今回はまだ何も起きていない。


 いつ起きてもおかしくない状況ではあるが、起きたと起きそうでは大きな違い。


 うまくいけば何も起きない


 …………………かもしれない。


 だからここで対処を誤ってはならない。


 

 聖女の親だろうが国を滅ぼしかけさせた元凶、子供を蔑むようなクズ。


 だから


「うむ、処刑だ」


「「「「賛成いたします」」」」


 ドラゴンの怒りの原因には速やかに消えていただこう。




 こうしてオリビアの家族(リリスは除く)の処刑が決まった。

 



 

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